2021年8月27日15:31
IBMは、年次イベントHot Chips カファレンスにおいて、企業のワークロードでディープ・ラーニングを活用した推論や不正行為へのリアルタイムでの対応ができるようになる新しい「IBM Telumプロセッサー」の詳細を発表した。Telumは、トランザクションの実行中にAI推論ができるようにオンチップ・アクセラレーションを搭載した、IBM初のプロセッサーだ。開発に3年を要し、飛躍的に進歩した新しいオンチップ・ハードウェア・アクセラレーションは、銀行、金融、商取引、保険といった用途や顧客接点などに活用する顧客に大規模なビジネス・インサイトを提供できるよう設計されている。
現在、 企業は通常、 不正が分かった後に検出技術を適用していますが、 このプロセスでは、 特に基幹業務に関わるトランザクションやデータから遠く離れた場所で不正の分析および検出において、 現在のテクノロジーの制約で、 時間や計算能力を大量に消費してしまう可能性がありました。 レイテンシーの要件によっては、 リアルタイムで複雑な不正検出を完了できないことも多く、 その結果、 盗んだクレジットカードを使って悪意のある人物が商品を購入した後で小売業者が不正行為に気づく、 といったことが起こっていました。
今回の新しいチップは集中した設計が特徴で、これにより顧客は、不正検出やローン手続き、取引の精算や決済、マネー・ロンダリング防止、リスク分析といった金融サービスのAIに特化したワークロードに、AIプロセッサーの全能力を活用できる。これらの新しいイノベーションにより顧客は、既存のルールを基準とした不正検出の強化、機械学習の使用、クレジットの承認プロセスの迅速化、顧客サービスや収益性の向上、不成立となる可能性のある取引やトランザクションの特定、決済をより効率化するためのソリューションの提案などができるようになるとしている。
なお、Telumは、ハードウェアとソフトウェアの共創に加え、シリコンからシステム、ファームウェア、オペレーティング・システム、および主要なソフトウェア・フレームワークにわたる統合など、 IBMの設計およびエンジニアリングの長い伝統を継承しているとしている。同チップは、8つのプロセサー・コアに高度なスーパー・スカラーとアウト・オブ・オーダー命令のパイプラインを実装し、5 GHz以上のクロック周波数で動作し、エンタープライズ・クラスの異種ワークロードの要求を満たすよう最適化されている。キャッシュは完全に再設計され、チップに相互接続できるインフラストラクチャーとして1コアあたりのキャッシュは32 MB、Telumチップを32枚まで拡張できる。デュアルチップ・モジュールの設計では、17のメタル層に220億個のトランジスターと19マイルのワイヤーが使われている。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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