三井住友カード、流通店舗の競合比較や購買状況を可視化する「Custella Maps」の強みとは?

2022年10月26日9:10

三井住友カードは、2022年11月1日から、キャッシュレスデータにより商圏における顧客理解や出店戦略をサポートする「Custella Maps(カステラ マップス)」の提供を開始する。10月24日にはオンラインで説明会を開催し、同サービスについて紹介した。

ナンバーレス発行で若年層など顧客が広がる
日常利用でトランザクション数も伸びる

三井住友カードは、会員事業、加盟店事業、法人事業を展開している。世の中でキャッシュレスをリードする存在を目指しており、2021年2月に完全年会費無料のナンバーレス(NL)を発行するなどイシュイングを強化したことで、会員数が増加し、会員層も変化してきた。従来は比較的高い年代の利用者が多かったそうだが、若年層の入会が増加し、全国満遍なく申し込みが寄せられているそうだ。また、コンビニエンスストア3社やマクドナルドなどで最大10%の高還元キャンペーンを実施しており、ポイントに感度の高い人の入会も増えている。

これにより、会員の日常利用が増加し、トランザクション数も大幅に伸びた。三井住友カード マーケティング本部 データ戦略部 戦略企画グループ グループ長 細谷友樹氏は「月間2億件が弊社の取扱高でしたが、2022年は倍になっており、非常に取扱データ量が増えています」と話す。

「Custella」でデータ分析を支援
提供サービスも広がる

同社では、データ分析支援サービス「Custella(カステラ)」を2019年10月にリリースした。カステラには、「Customer Intelligence カスタマー(顧客)を照らす」という意味が込められており、キャッシュレスデータを通じて、企業や自治体などと一緒に、エリアの人々の消費実態を把握したいという想いでスタートしている。

カステラでは、三井住友カードがデータホルダーとしてサービスを提供している。国内トップクラスの膨大なキャッシュレスデータに加え、データサイエンス、AI(人工知能)を活用して顧客企業の支援につなげている。また、マーケティングに活用できる顧客支援サービスを提供可能だ。

同社が保有するデータの強みとして、「自社内だけではなく、同業種、異業種を含めて自社以外のデータが見えてくる点」だと細谷氏は説明する。また、同社のイシュイング(カード発行)のデータは本人確認をしているため、正確性が高いとした。

データとして、顧客の属性に加え、加盟店の売り上げデータを活用している。これらは、匿名化した上で統計処理をしているのが特徴だ。

カステラは、2019年4月にマーケティング統括部のデータ戦略室から始めて10月にローンチした。当時はプロパーの限られた人数で展開していたが、現在は66名にメンバーが増えており、中途でデータサイエンティストやデータアナリストも積極的に採用している。SMCCグループの中でも高度人材を集めていく狙いがあるという。

カステラがスタートした当初は「Custella Insight (カステラ インサイト)」と「Custella Analytics (カステラ アナリティクス)」の2つでサービスを開始。その後、「Custella Promotion (カステラ プロモーション)」と「Custella Trend (カステラ トレンド)」なども追加している。

カステラ インサイトは、取引先企業に関するキャッシュレスデータ(売上等)に、統計化された顧客属性データ、購買実績データ、業界消費動向データ等を掛け合わせた分析データを WEB ツールで提供しており、企業は無料で閲覧可能だ。カステラ アナリティクスは、キャッシュレスデータと取引先企業保有データや天候データ等を掛け合わせた分析、独自の切り口での詳細分析、考察レポートを提供するサービスだ。カステラ プロモーションは、カステラ インサイトとカステラ アナリティクスにおける分析結果を元に、取引先企業などにおけるプロモーションのサポートを行うサービスとなる。カステラ トレンドは、世の中の消費トレンドを業種別、性・年代別、エリア別などで分析可視化したレポートとなり、無料でサービスを提供している。

さらに、「Custella Research(カステラ リサーチ)」は、三井住友カードのカード会員に対して幅広くアンケートを実施することで、企業が求める定性データも取得することが可能なサービスだ。カステラ アナリティクスやカステラ プロモーションと連携した「Custella AI(カステラ エーアイ)」では、企業へ好意的な会員を教師データとしてAIで機械学習し、親和性の高い会員に訴求だ。

「Custella Maps」で出店分析や戦略を支援
属性情報と商圏の購買力・購買頻度を可視化

これらサービスに加えて、「Custella Maps(カステラ マップス)」をリリース。企業は、自社の商圏や新規出店したいエリアの動向調査・分析として活用できる。カステラ アナリティクスでも商圏分析は行ってきたが、都度カスタマイズの手間が発生しており、ニーズが高まっていたため、ツール型のカステラ マップスを提供することとなった。

カステラ マップスは、キャッシュレスデータの特徴である正確な属性や購買データをもとに、商圏における顧客理解や出店戦略など、企業の出店にまつわるマーケティング課題の解決をサポートする地図情報サービスだ。

新サービスの狙いとして、まず外部環境の変化が挙げられる。コロナ禍を経て、在宅勤務をはじめとする生活様式の変化や急速なオンラインシフトなどにより、人々の購買行動パターンは急速に変化している。このような状況の中、データに基づく効率的な店舗運営や新規出店を追求する企業が増えている。

また、従来の地図情報サービスでは、“アンケート調査であるため属性情報が正確でないこと” や“アンケートを取得する頻度が少ないためデータ更新が遅いこと”、“商圏の人流はわかるが、購買力や購買頻度を捉えることができないこと”などの課題があるとした。商圏分析分野において、新たなデータを活用した分析手法のニーズが高まっているなかで、同社が持つキャッシュレスデータを使って企業の出店戦略を支援できないかと考え、サービスの開始に至った。

カステラ マップスでは、同社のキャッシュレスデータを活用し、地図上に属性情報と商圏の購買力・購買頻度を可視化する。ヒートマップで提供するため、企業は商圏の動向を直感的に捉えることが可能だという。

また、WEBサービスとして提供するため、データの更新頻度も毎月最新の情報を提供できる。これにより、必要なときにいつでも最新の情報へアクセスすることが可能だ。同戦略グループ 登坂崇平氏は「企業はより精度の高い出店計画や商圏における顧客理解を実現することができます」と説明する。

具体的なサービスの特徴として、企業者自社の出店エリアの自社と同業他社の購買傾向をヒートマップで確認することで、実際に強いエリアと弱いエリアを境界線に可視化できる。例えば、自社が弱いエリアでは、自社以外の購買傾向を把握することで、現在の課題や新たな消費者ニーズを発見し、販売促進などの施策へと活かすことができる。

出店候補のエリアでは、顧客の購買力や購買頻度を把握することで、実消費データに基づいてエリアのポテンシャルを測定できる。例えば、例えば、“自社シェアが低く、同業種の決済回数が多い”などの条件を設定し、ポテンシャルの高いエリアをランキング表示することで、出店判断に活かすことができるという。

ダッシュボードでは、複数の店舗を一覧で比較でき、店舗別・業態別などのグループを作成して顧客層などのデータを比較分析することが可能だ。

分析結果はPDF形式でレポート出力できるため、社内の分析資料や報告資料に活用することができる。また、データをCSV出力することで、自社で導入済みの分析ツール等にインポートして活用可能だ。

イシュイングデータをベースにサービス提供する理由とは?
POS連携や行動データ分析など提供価値を広げる

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