2023年9月28日8:00
静岡銀行は、2023年4月から、アクワイアリング(加盟店開拓)事業に参入し、「しずぎん加盟店サービス」の提供を開始した。また、2023 年度下半期以降、Visa ライセンスに基づくブランドデビットおよび JCB ブランドのクレジットカードを発行する予定だ。アクワイアリングとイシュイング(カード発行業務)の両輪で地域のキャッシュレスに取り組むことで、店舗の活性化とカード会員の稼働を両立させる狙いだ。
グループで約80万枚のクレジットカードを発行
新たに「しずぎん加盟店サービス」を開始
静岡銀行は、地方銀行の中でも銀行本体でのクレジットカード発行に向けていち早く準備を開始した実績がある。また、銀行本体は約50万、子会社の静銀カードは約5万、クレディセゾンとの合弁会社である静銀セゾンカードは約25万のクレジットカード会員を有するなど、カード発行の実績を重ねてきた。地場の企業と提携カードの発行も行っており、例えば、遠州鉄道の「えんてつカード」は浜松で一番使用されているカードに成長している。
これまで加盟店は静銀カードを中心に開拓してきたが、「イシュイングへの偏重の傾向があり、それだけでは成長が見込めないという課題感を持っていました」とデジタルチャネル営業部 担当部長 滝 丈喜氏は打ち明ける。静岡は、2019年のキャッシュレス決済比率が24.6%と全国平均の26.8%を下回った。また、静岡に近い千葉、東京、神奈川、愛知は軒並み31%程の比率となっており、静岡だけが飛びぬけて低かった。滝氏は「出遅れ分は地場の銀行として責任をもって対応しなくてはいけませんし、インバウンド需要も含め、成長のポテンシャルは高いと考えていました。また、キャッシュレス化の推進で地域の消費を喚起し、法人や事業主など取引先とのネットワークの強化を図るとともに、静岡にもメガバンクやネット専業銀行などが進出されていたので、地上戦で対抗する手段としてもキャッシュレスの推進が重要でした」と加盟店サービス開始の経緯を述べる。
プロセッシングシステムを内製化
地銀での実績が豊富なIWIとアイティフォーと連携
「しずぎん加盟店サービス」の提供に向けて、Visa と Mastercard のライセンスを取得するとともに、ジェーシービー(JCB)とフランチャイズ契約を締結した。また、サービスの提供に向けては、プロセッシングシステムを内製化した。「国際ブランドのライセンス取得に向けて、当行仕様にカスタマイズしながら作り込む作業がありました。デビット向けの仕組みも現在構築していますが、仕組みを内製化するためにはコストをはじめ、負荷や労力も要します」(滝氏)。自ら業務要件を決定し、体制を整備する業務は静銀カードで行っていたとはいえ、苦労した部分だ。
加盟店システム構築にあたり、アクワイアリングの基幹システムはインテリジェント ウェイブの「IOASIS(アイオアシス)」、決済センターはアイティフォーの「iRITSpay(アイ・リッツペイ)センター」を採用した。両社は先行して加盟店サービスを提供する地域金融機関での実績もある。滝氏は「もっとも重視したのはコストよりも加盟店管理の安定運用とサポート体制で、実際に我々が単独で行った際にスムーズに価値を提供し続けられるかでした」と説明する。なお、現状は複数の地方銀行の加盟店で安定稼働しているLinuxの「VEGA3000」を採用しているが、新端末であるAndroid端末の「SATURN(サターン)1000F2」は次のステージで導入を検討したいという。
主要なキャッシュレスサービスに一台で対応
銀行本体が提供する安心感が申し込みにつながる
静岡銀行では、これまで主に本体のクレジットカードの利用が多い事業者を中心に静銀カードで加盟店の勧誘を行ってきたが、「銀行自ら推進することで件数は大幅に増加し、優良な案件もどんどんあがってきています」と滝氏は成果を述べる。加盟店サービスでは後発になるため、スタート時点から国際ブランド、電子マネー、QRコード決済といった主要なサービスを取り揃え、加盟店にあった決済手段を選択してもらっている。前述のように静岡はキャッシュレス比率が低いとはいえ、クレジットカード、PayPayのMPM(ユーザースキャン方式)など、「肌感覚では全くキャッシュレスを導入していない店舗は減っています。どの手段を使うかはお客様に決めていただく状況にないと、営業を強く推進するのは難しいだろうという大前提がありました」と滝氏は話す。
すでに2023年8月末で1,500件を超える申し込みがある。当初は6割が新規、4割がキャッシュレス導入店舗の切り替えを見込んでいたが、実際は半々の割合となっている。静岡県でも都市部から離れるほどキャッシュレス決済には保守的だったが、銀行本体が提供する安心感により申し込みが伸びている。滝氏は「6月から静岡の民放4局でテレビコマーシャルをスタートしたこともあり、店頭に足を運ばれて申し込む方もいるなど、認知度は高まっています」と語る。実際の取引に関しては伊豆などの旅館、自由診療の医院といった比較的高額な支払いではクレジットカード、居酒屋はQRコード決済が多いなど、業態ごとの特性が表れているそうだ。
サービス利用料は、モバイル決済端末 1 台あたり月額2,200円(税込み)、電子マネー決済の利用時には、別途1台あたり550円(税込)が必要となる。なお、2023年度中に利用を開始した人を対象に、サービス利用料を半年間無料とするキャンペーンを実施している。決済手数料は予想取扱高、IRF(インターチェンジ・フィー)レートを参考に適正な価格になるように個社ごとに設定している。振り込みスパンも「毎日締め」「月1回締め」「月2回締め」「月3回締め」の4つから決済方法を選択可能だ。なかでも、カード利用日から最短で 3 営業日以内に売上代金が毎日入金される「毎日締め」は、原則「追加手数料」なしで選択できる。
なお、大型のPOSレジ対応など専門性の高い接続を必要とする加盟店については、従来通り静銀カードで対応する。
JCB法人カード発行開始、個人カードも準備中
Visaブランドのデビットカードも本体発行
アクワイアリングに加え、イシュイングも強化する。すでにJCBの法人カードは、静銀カードを発行者として8月から受付開始した。また、JCBの個人カードは、銀行本体が発行者となり、2024年度上半期に発行開始予定だ。滝氏は「個人カードは、Google Pay、Apple Payなど決済機能を含めたスマートフォンアプリとの親和性を高めることを主眼に置いています。板カード到着前にカード番号を採番し、スマホを介したショッピングで即時利用できる機能やカード番号の裏面化、タッチ決済など、現下のクレジットカードに装備できる最新の機能を標準搭載する予定です」と説明する。
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