JR東海バスがiPhone活用で車内決済や座席管理を効率化、新紙幣発行を機に運賃箱廃止

2024年7月11日8:05

愛知県名古屋市に本社を置き、高速バス事業を行うJR東海バスは、2023年1月より車内での運賃支払いでQR コード決済を導入している。同社では、乗客の管理や人数チェック、車両チェックをiPhone端末で管理しており、同端末を決済でも活用している。2024年7月3日より新紙幣が発行されたが、一部車両を除き車内運賃箱の運用を取りやめ、iPhoneを活用した支払い管理に切り替えた。

池谷貴

PayPay決済の様子。乗務員のiPhoneで利用者のコードを読み取る

9割がオンラインからのチケット購入
運賃箱の利用中止後は現金は手渡しで対応

JR東海バスは高速バスの路線を運行しており、そのうち9割はあらかじめインターネットでチケットを購入する利用者となる。残りの1割は車内などでキャッシュレスおよび現金決済を行っている。

7月の新紙幣発行に伴い、80台ある車両の運賃箱の部品交換が必要となったが、同タイミングで東京~名古屋間の路線など一部を除き、運賃箱の利用を中止した。「お客様に対しては、現金決済は乗務員が手渡しで受けて対応します」(JR東海バス 企画営業部 営業管理課部 課長代理 北堀隆宏氏)。また、コード決済では、「PayPay」「d払い」「au PAY」「楽天ペイ」、およびインバウンド利用者向けの「Alipay」「WeChat Pay」に対応した。北堀氏によると、インターネットで予約できるコード決済手段に合わせたという。また、決済手段を絞ることで、バスに掲示するアクセプタンスを視認しやすくすることも意識した。

使用可能なコード決済手段

車内決済のうちコード決済は7%
iPhone活用で業務のDX化が進む

現在、バス車内での支払いのうち、93%が現金だ。コード決済の利用は7%にとどまるが、その多くをPayPay決済が占める。AlipayとWeChat Payはアウトレットなどがある御殿場からの乗車で利用が目立つ。

同社では2023年1月からリクルートのAirレジおよび「Airペイ QR」を導入した。同サービスは、飲食店などの流通小売業が採用するケースが圧倒的だが、導入の理由はiPhoneとの親和性の高さだという。JR東海バスの乗務員はiPhoneを携帯し、乗客の乗車時に2次元コードを読み取り、座席管理を行っている。「乗車、人数チェック、車両チェックもiPhone端末で管理しており、その流れで車内の決済も行っています。業務のDX化はかなり進んでいます」(北堀氏)。AirレジやAirペイ QRはiOS向けのサービスであり、iPhoneでそのまま支払いを受け付けることが可能だ。乗客の乗車区間のメニュー選択もAirレジで表示でき、クラウド上に売上データが蓄積されるため、売上管理もしやすくなった。

車内では乗務員がiPhone端末を活用。業務の効率化を実現した

7月3日からの運用変更では現金決済を要望する人は乗務員がAirレジで対応している。現金利用者の釣銭の受け渡しも乗務員が行う。乗務員の手間は多少増えるが、一日の現金利用約1.8件を考えた際、大きな負担にはならないとした。

運賃箱は車内に設置されたままとなっているが、乗客が使用できなくしている。仮に新紙幣に対応した場合、車両1台数十万円の投資が必要で、1,000万以上の料金が必要だ。北堀氏は「現金決済は0にはならないが減少していくため、5年後、10年後の運用を考えた際、使用がほとんどない機器にコストをかける必要があるのかと考えました」と話す。

運賃箱は使用できなくしている

運賃箱の精算時は、営業所でスタッフ2~3名による集計作業が毎日1時間ほど発生しており、売上金の回収も警備会社に依頼していた。運賃箱廃止後は、クラウド管理により持ち帰った金額を突き合わせるだけで済むため、作業の効率化につながった。

JR東海バスでは、コード決済の導入後は、同業他社からもキャッシュレス決済について相談を受ける機会があり、業界全体の活性化にも兆しを感じているそうだ。ただ、同社ではオンラインでの利用率拡大を意識しており、車内での決済を極力減らしていくことを考えているため、コード決済の利用拡大キャンペーンなどは検討していない。

クレジットカード決済を導入していない理由は?
iPhone1台で完結の「 Airペイ タッチ」導入を検討

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