2011年6月14日8:00
資金決済法を活用した口座機能の追加により「ドコモ ケータイ送金」を提供
ネット決済への応用など多様なサービスを視野に入れる
NTTドコモ
NTTドコモは、2011年5月18日付けで資金移動業者として登録を受け、2011年5月27日から、「ドコモ ケータイ送金」のリニューアルを行い、送金資金を事前に預かったり、送金されたお金を受け取ることができる口座機能に対応した新たな送金サービスとして提供開始した。「資金決済に関する法律(資金決済法)」の施行は携帯電話事業者のサービスにどのような影響をもたらすのか? NTTドコモに話を聞いた。
送金サービスはNTTドコモのビジネスと親和性が高い
リニューアル後はドコモ口座に50万円まで入金が可能に
「これまでNTTドコモでは電気通信事業者として音声やパケットを送るといったサービスを行ってきましたが、それにプラスして「お金を送る」という送金サービスはNTTドコモのビジネスと親和性が高いと考え、資金移動事業者に登録しました」(NTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進担当部長 江藤俊弘氏)
NTTドコモでは2009年7月からみずほ銀行と提携し、銀行代理業者として「ドコモ ケータイ送金」を開始。従来のサービスでは、送金資金を毎月の携帯電話料金と合算して支払うため、上限金額は2万円だった(手数料105円)。個人間送金以外にもドコモチャリティ募金の送金手段として利用され、募金だけでも2011年5月17日までに5億7,000万円の送金実績があった。
リニューアル後は従来の機能に加え、資金移動業者としてドコモ口座に50万円まで事前に入金することが可能となった。これにより、小額な個人間の送金だけでなく、より高額な仕送りやネットオークションの支払いなどにも活用しやすくなる。受け取り側にとっても資金をドコモ口座にプールしておくことができるため、これまでのように都度受け取り方法を選択する必要がないという。
年内にはAndroid搭載スマートフォンにも対応予定
企業から個人へのキャッシュバック送金も用意
まずは、NTTドコモの従来の携帯電話のみでサービスを開始するが、年内にはAndroid搭載スマートフォンにも対応する予定だ。また、企業から個人への送金サービスも準備している。
「例えば、法人から個人のお客様にお金をキャッシュバックする場合、これまでは郵便為替等を利用して送付していましたが、今回は携帯電話番号で送ることができるため、コストや事務処理稼動を抑えることが可能です」(NTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進 金融サービス推進担当主査 倉島 猛氏)
同社では2010年4月の資金決済法施行後に準備を開始。システムの投資コストはそれなりにかかったというが、「もともと弊社は通信料金を算定して請求しており、電話番号に紐づいたお客様のアカウント管理は行っていました。今回の開発では、既存のアカウント管理のシステムを活かしてシステムを構築できたため、追加コストを抑えることができました」と江藤氏は通信事業者ならではの強みを口にする。
個人間の送金以外のサービスも積極的に投入予定
ネット決済などへの展開も視野に
NTTドコモでは、今回リニューアルを行った「ドコモ ケータイ送金」を活用し、個人間の送金以外のサービスも積極的に投入する予定だ。
「今後は、個人間送金に加え、多様なサービスが提供可能になると期待しています。国内の個人間送金に関しては3億件程度の市場があると言われており、まずはこの市場を取り込んでいきたいと考えておりますが、ドコモ口座には資金をプールする仕組みを設けていますので、例えば、前払い式のプリペイドマネーのようなネット決済サービスを行うなど、今後は拡張オプションがでてくると思います」(江藤氏)
同社では、ショッピングサイトを対象に後払い式の「ドコモ ケータイ払い」を提供しているが、今回のドコモ口座機能を活用し、前払い式の決済手段として併せて提供することも考えられるという。
「ネット決済の市場は今もなお順調に伸びており、特にスマートフォンを活用した決済の用途の広がりに期待しています。加盟店から決済手数料をいただくモデルは収益的に見ても魅力が大きいです」(江藤氏)
また、Google WalletのようにNFC機能を利用したサービス展開も視野に入れることができるであろう。NTTドコモでは国内でFeliCa機能を利用したおサイフケータイのサービスを世界に先駆けて開始した実績がある。そのため、携帯電話に搭載したICチップの機能を送金サービスなどに活用することも比較的容易に実現できるかもしれない。
送金サービスの潜在的なニーズは高い
5,800万人のドコモユーザーを抱える強みを生かす
ただし、NTTドコモでは、送金サービスについての認知度が現時点では決して高くはないことも認識している。そのため、まずは「ドコモケータイ 送金」をハードルの低いサービスとして認知度を高めることで利用者を増やしていきたいとしている。同社では、送金サービスの潜在的なニーズは高いと考えており、サービス利用後の状況を踏まえ売上金額の目標や今後の展開方法を精査する方針だ。また、今後は他の携帯キャリアも同様のサービスを行うことが想定されるが、国内の携帯電話契約数の約半数を占める5,800万人のユーザーを抱えている強みを生かしていきたいとしている。