2011年12月14日8:00
非接触IC決済事業者に聞く~セブン・カードサービス「nanaco」(1)
開始から5年、決済件数の増加とともに着実に生活者に浸透
ポイントを武器に地道な販促でリピーターを増やす
「nanaco」は2007年4月に、セブン&アイ・ホールディングス独自の電子マネーとしてスタートした。加盟店は約9万700店舗となっており、セブン-イレブン、イトーヨーカドー、デニーズ、SOGO、西武百貨店などのグループ店舗をはじめ、ヤマト運輸、カラオケ館、ノジマ、ゆめタウンなどでも利用が可能だ。開始から間もなく5年を迎えるnanacoの今後の方向性について同事業を展開するセブン・カードサービス 執行役員 電子マネー開発部担当 磯邊俊宏氏に話を聞いた。
会員数は1,553万人、月間の利用件数は5,300万件
グループ内でも「nanacoポイントクラブ」をスタート
nanacoにはプラスチックカードの「nanacoカード」と携帯電話やAndroid搭載スマートフォンによる「nanacoモバイル」がある。カードは300円で購入するが、モバイルは無料で入会できる。2011年10月末時点での会員数は1,553万人。そのうちモバイル会員は200万人となっている。月間の利用件数は5,300万件で、「開始から5年弱が経ちましたが、店舗での地道な告知により、取扱件数は伸びてきています」とセブン・カードサービス 執行役員 電子マネー開発部担当 磯邊俊宏氏は説明する。
nanacoの利用促進については、現状、グループ内でのウェートが多いため、「店舗内での地道な販促施策と相まって利用件数が高まっている」(磯邊氏)という。nanacoは、100円の購入で1ポイント付与される「nanacoポイント」に期待して会員になる人も多いため、セブン-イレブンなどの店舗などでは、それを武器に利用を促進している。
セブン・カードサービスではクレジットカード「アイワイカード」を発行しているが、「クレジットカードの場合は、お支払いのサイクルの中で会員とのリテンションを高めることは自然にできますが、電子マネーは会員との接点づくりが難しいため、その分、関係が希薄になり、利用されないデメリットもあります」と磯邊氏は話す。その点、nanacoの場合は、セブン-イレブンなどのグループの店舗を有しており、販促を行うことで会員との関係づくりを強化できるメリットがある。
ただし、グループ内店舗での会員の利用に関してもまだまだ満足しているわけではなく、ポイントを武器にさらに高めていく必要があるとしている。同社では、ジェーシービーや三井住友カード、「Gポイント」を運営するジー・プランなどと業務提携を行い、ポイント交換先についても順次拡大している。また、グループ内でも「nanacoポイントクラブ」をスタート。同サービスにより、「イトーヨーカドーのポイント」、そごうの「ミレニアムカード」、西武の「クラブ・オンカード」に貯まった「ミレニアムポイント」「クラブ・オンポイント」を、それぞれの店頭において、nanacoポイントへの交換が可能となる。
ソーシャルメディアの活用についても検討
Androidスマートフォンで「nanacoモバイル」サービスを開始
今後は、会員との距離を縮めるため、TwitterやFacebookなど、ソーシャルメディアとの連携なども研究していく方針だ。また、2010年にはKDDIが実施した実証実験に参加。会員へのサービス向上に向けnanacoの新たな活用についても研究している。
昨今、利用者が拡大するスマートフォンに関しても12月1日から、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが展開するおサイフケータイ対応Androidスマートフォンにおいて、「nanacoモバイル」サービスを開始した。nanacoの全会員に占めるモバイル会員は、他の電子マネーよりも高い比率を示しているが、今回のAndroidスマートフォン対応により、さらにその比率が伸びると期待している。
「店舗でnanacoを紹介する場合、カードのほうがお客様にご説明しやすいというメリットがありますが、今後はモバイルの利用促進を真剣に考えていきたいです。スマートフォンには、いろいろなアプリの使い方がありますが、その中には決済を伴うものもあり、電子マネーのインターネット決済が普及する可能性も考えられます」(磯邊氏)