2012年1月16日8:00
強みは楽天グループの総合力とパートナーとの連携で培ったノウハウ
国際事業推進部を立ち上げ海外展開の準備を進める
電子マネー「Edy」を発行する楽天グループのビットワレットでは、2010年7月に国際事業推進部を立ち上げ、国内で培ったノウハウを海外で展開する準備を進めている。同社では今後、海外でモバイルペイメントやNFCがブレイクすると考えており、電子マネーの黎明期から培ったノウハウと、楽天グループの総合力をベースに、電子マネーやマーケティングなどのビジネス支援を行う予定だ。
ビットワレット
7,000万人を超える楽天会員のIDと
楽天スーパーポイントを活用した施策やノウハウを活用
ビットワレットは2001年11月から、10年以上にわたり電子マネー「Edy」のビジネスを展開してきたが、試行錯誤を繰り返しながら成功への道を探ってきた。
同社が海外展開を行う上での強みは2つ。まず1つは、楽天グループとしての総合力である。楽天の国内での取扱高は、1兆円を突破。その成長の要因は、楽天IDを保持する7,000万人以上の会員と「楽天スーパーポイント」によるユーザーの囲い込みである。この強みを海外で活用することにより、世界中に楽天の経済圏を広げることができるとビットワレットでは期待する。すでに、楽天グループでは、グローバル展開を進めており、北米や欧州、アジアなどで事業を開始している。そして、それを広げる手段として、「モバイルペイメントやNFCは重要になる」とビットワレット 執行役員 最高戦略責任者 渉外・企画室 室長兼事業部門 国際事業推進部 部長 宮沢和正氏は説明する。
NFCは世界各国で実証実験や商用サービスが行われている。宮沢氏は、2011年9月末にジャカルタを訪問。同国のペイメントやモバイルに関するフォーラムでは、パネルディスカッションが行われていたが、NFCというキーワードが活発に飛び交ったという。
国内のパートナーとの連携で得られたノウハウを活用
モバイルでの利用促進、スマートフォンからのオートチャージで先行
強みの2点目は、国内のパートナーとの連携から得られたさまざまなノウハウの活用だ。Edyは国内で6,700万枚超のカードを発行し、約700社と提携している。特に携帯電話やスマートフォンにおけるEdy利用者は、1,400万人以上となっており、国内の電子マネー事業者でトップの数字を誇る。また、5キャリアでモバイルEdyのサービスを展開。なかでもKDDIとは「Edy | au」というブランドを立ち上げ、プロモーションやキャンペーンなどのマーケティング活動を共同で推進している。最近ではスマートフォン端末でAndroidアプリのショートカットを利用して簡単にEdyサービスにアクセスできる機能を搭載。また、KDDIのキャリア決済である「auかんたん決済」からのEdyにチャージも開始している。同取り組みの成果もあり、auのおサイフケータイ利用者のEdy利用率は右肩で上がっているそうだ。
また、国内最大の約28万7,000ヵ所の加盟店でEdyのサービスが利用できるが、「これは長年にわたり加盟店とのリレーションシップを築いてきたからこそである」と宮沢氏は話す。さらに、全日空の「ANAマイレージクラブ」や、カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」、ロイヤリティマーケティングの「Ponta」など、大手ポイント事業者との接点も数多く持っている。
最近では、リアル店舗に加え、インターネットで利用できる環境の整備も積極的に推進。すでに楽天やAmazonといった大手ショッピングモール、グリーなどのオンラインゲームの決済手段として採用されており、利用率も高まっているそうだ。また、Android搭載スマートフォンを利用したオートチャージサービスも電子マネー事業者でいち早くスタート。オートチャージの利用者は、他のおサイフケータイユーザーよりも約4割、チャージ金額が高くなっている。
「これらノウハウは海外での加盟店開拓やNFCサービスの展開にも生かせる」と宮沢氏は自信を見せる。
決済に加えマーケティングノウハウも提供へ
各国の決済事情に合わせた支援を実施
具体的な海外での展開については、Edyを決済手段として提供するだけでなく、ジョイントベンチャーの設立、マーケティング支援やコンサルティングの提供など、さまざまな方法が考えられるという。あくまでも提供する国々の事情に合わせながら、最善の方法を提供していきたいとしている。
「電子マネーは、ただカードを発行し、端末を設置しただけではお客様に利用してもらえません。われわれは、どうすれば利用していただけるのかを考えて施策を打ってきましたので、ベストプラクティスや過去の失敗事例などを紹介しながら、お客様の成功への最短距離となるノウハウを伝えていきたいです。楽天グループは、Webマーケティングやポイントサービスなどを得意としていますので、その強みをベースに支援していく方針です」(宮沢氏)
最近では、キーワードとしてO2O(Online to Offline)が出てきているが、ビットワレットでは1円から手軽にEdyに交換できるポイントモール「Edyもらえるモール」(旧Edyパラダイス)をオープンしている。同モールからリアル店舗への送客を行う仕組みだが、「加盟店への送客に貢献できており、広告収入が手数料収入に続く事業の柱になりつつある」と宮沢氏は成果を語る。
まずは、楽天が海外進出した国を中心に海外展開を考えるが、「大切なのはTypeA/B、FeliCaといった技術方式ではなく、現地のお客様のニーズに応じたサービスを提供することである」と宮沢氏は考える。同社ではすでに、TypeA/Bの技術検証を実施。宮沢氏は、「展開する国がTypeA/Bをベースとしていれば、その方式を採用することになる」と説明する。
また、国内では世界に先行しておサイフケータイによりさまざまなサービスを展開してきた強みがあり、アプリケーションの開発面で海外よりも先行している。そのノウハウを活用したサービスの展開も当然考えられるそうだ。