「新しい決済の可能性を探る」事例3 リコーリース

2010年6月21日  08:24

トラベルバンクと提携し「リコーグローバルマネーカード」を展開
取引先の海外渡航費を立て替え、精算業務まで実施 

日本初で、法人向けに国際ブランドを付帯したプリペイドカードを展開するのがリコーリースだ。同社では2009年12月からトラベルバンクと提携し、法人向けにVisaプリペイド機能が搭載された「リコーグローバルマネーカード」による経費支払い業務の代行サービスを行っている。国内でいち早く法人向けビジネスを開始した同社の取り組みを追った。 

リコーグループ7万人と 

顧客企業40万人がターゲット 

「国際ブランドの付いたプリペイドカードはこれまで日本にはなかったもの。トラベルバンクからリリースが出た時は直感的に面白いと思いました。実際、弊社で試験的に利用しましたが、これは法人の海外渡航者向けに使えると確信したのが導入のきっかけです」(リコーリース 金融サービス事業部 事業統括室 室長 湯浅雄介氏) 

取引先向けの「 リコーグローバルマネーカード 」

「リコーグローバルマネーカード」はJTBグループのトラベルバンクがVisaと提携して海外旅行者向けに発行する「Global Money」を同社の取引先とリコーグループ向けなどに提供するものだ。 

「リコーグループには約7万人の社員がいます。一方、弊社は中小企業を中心に40万社の顧客企業を保有しています。リコーグローバルマネーカード発行により、海外出張の資金を弊社が肩代わりして立て替え、精算業務まで実施することで、経費支払い管理の効率化を図ることができます。特に弊社が得意とする中堅・中小企業のお客様は仮払い処理に苦労されているケースが多く、本カードを利用するメリットは大きいと感じています」(湯浅氏) 

具体的スキームはリコーリース、リコーグローバルマネーカードの契約企業、トラベルバンクの3社が介在する。まず契約企業はリコーリースにカード発行枚数、資金の入金額などを依頼。リコーリースが契約企業に代わってトラベルバンクに必要な資金を入金し、リコーグローバルマネーカードを発行する。渡航後に追加入金が必要な際もリコーリースが契約企業の指示を受けて立て替える形になる。渡航者が帰宅後に金額を精算し、契約企業からリコーリースに立て替え費用のうちの数パーセントが支払われる仕組みだ。 

「すでにVisaプリペイドのシステムを構築しているトラベルバンクと提携することで投資費用はほとんどなく、サービスを開始できました。コーポレート向けはコンシューマーを対象とするよりも狭く深い付き合いになりますが、会社によっては海外出張へ頻繁に行かれるところも多いため、継続してビジネスを展開できるメリットがあります。今後は企業の経理業務を効率化させるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)的なサービスも提供していく方針です」(湯浅氏) 

導入企業の評判は非常に高い 

1社単位の収益性の高さに期待 

同カードを導入するメリットとしては、現金の取り扱いにかかるハンドリングコストの削減、事務作業の効率化、および経費の可視化などが挙げられる。海外出張者は世界200以上の国と地域にある約150万台のVisa/Plusで必要な現地通貨を現金で引き出すことが可能なうえ、世界2,900万あるといわれるVisa加盟店での買い物やサービスへの支払いにもカードを利用することができる。 

カードは円勘定のためトラベラーズチェック、外貨キャッシュのような為替リスクもない。また最近は法改正の影響などによりキャッシング枠が縮小しているため、出張時にATMでコーポレートカードによる現地通貨の引き出しが難しくなってきている状況も後押ししているという。 

本格的なサービススタートは4月からのため契約者数はそれほど多くはないが、導入企業の評価は一様に高い。同カードの営業は金融サービス事業部、リース関連の営業部隊を中心に行っているが、実際に稼働がスタートすれば継続してサービスを利用してもらえるため、1社単位の収益性は非常に見込まれるという。 

将来的な目標は1,000社 

億単位の収益を見込む 

国内でいち早くスタートした同社だが、最大の課題はなんといってもブランドプリペイドの認知度の低さだ。 

「海外渡航者向けのブランドプリペイドはターゲットが明確になっており、一度利用していただければ利便性をご理解いただけます。そのため、コンペチターが出てくればサービスレベルの質は間違いなく向上します。ある程度、普及に向けての時間が必要なのは仕方がないと思いますが、一社独占では市場が広がりません。弊社としては早く他社が同様のサービスを展開してきてほしい」(湯浅氏) 

具体的な期日は設けていないとしながらも、同社では1,000社への導入目標を掲げている。1,000社達成できれば億単位の収益を確保できると考えており、同社では同カードの営業に力を注ぐ。また、Visaマネートランスファーなど、国際ブランドのインフラを活用した送金サービス提供も視野に入れている。 

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