2013年1月30日8:00
NFC非接触決済は本当に離陸するのか
☆☆☆ 世界各国で高まるNFC懐疑論 ☆☆☆
NFC won’t take off
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
「2013年、NFC決済に関する議論は徐々になくなるだろう」このショッキングな予測をブログで流したのは、ペイパルのデビット・マーカス社長。2012年の年の瀬もおしせまるホリデーシーズンだった。
「英国ではNFCに対する懐疑論と失望感に満たされている」という記事を発表したのは、英国のモバイルニュース。ロンドンオリンピック終了後の9月だった。
2011年秋にグーグルがスタートしたモバイルウォレット。NFC非接触決済の牽引車として期待されていたが、あまりの利用の少なさに、コンセプトの見直しを迫られている。
グーグルウォレットに対抗する全米規模のNFC非接触決済プラットフォームとして注目を集めていた、米携帯キャリア大手3社の合弁事業アイシス。設立から2年を経てようやく実証実験にこぎ着けたものの、思うような成果をあげることができず、苦しんでいる。
世界中のモバイルNFC非接触決済に対する思いいれが強かっただけに、その反動は大きい。一気にネガティブに振れている。
モバイル決済でNFC非接触決済は本当に離陸できるのか。それともNFC以外の決済が主流になるのか。モバイル決済のゆくえを検証することにしよう。
●ペイパルがNFCの終末を予測
ニューペイメントを牽引するペイパルのデビット・マーカス(David Marcus)社長は、「2013年の予測」と題するブログで4つの予測をした。その筆頭にあげたのが、NFCの終焉である。NFCはマス市場を捉えられない、というのがその理由。「NFC決済議論は2013年に徐々に結末を迎える(Slowly Die)だろう」というショッキングな予測は、世界中のメディアを駈けめぐった。NFC非接触決済のトライアルが世界中でおこなわれているなか、数年のうちではなく2013年という具体的な時期までいれた予測のインパクトは大きかった。
決済端末に携帯電話をタップするのは、クレジットカードでスワイプするより簡単なのだろうか。マーカス社長はそう問いかける。「私はそうは思わない。消費者の問題を解決しないし、決済行動をかえさせる付加価値も提供してくれない」と厳しい。ペイパルの技術革新の視点は、消費者の視点であり、ショップの視点である。技術主導ではなく、利用者主導である。NFC技術が新たな決済を推進する、と競合は考えている。しかし、それは利用者の決済に関する問題を解決してはくれない。決済のスピードや安全性という基本的なニーズに加え、利用者は決済に付加価値を求めている。モバイルという新しい技術で、それを実現できるとペイパルは確信している。
2013年の2つ目の予測は、モバイルウォレットに「決済とロイヤルティ、そしてクーポンビジネスは統合される」である。いままでこの3つはバラバラだった。2013年には、消費者とショップはモバイルウォレットで、決済に連動してロイヤルティとクーポンを簡単に提供できるようになる、と予測している。
予測の3つ目は、「キャッシュレジスターがモバイルに置きかわる」こと。従来のレジスターは電話回線で縛られていた。モバイルに移行することにより、場所を選ばずにどこでも決済できるようになる。在庫がショップになければ、その場で注文を受付け、自宅に届けてくれるようになる。
4つ目の予測は、「チェックインを超えた新たな体験」である。位置情報を活用した付加価値決済が実用化をむかえる。
「2013年はショッピングと決済領域で破壊的革新を本当にみることができる年である。」デビット・マーカス社長はブログの最後をこう締めくくった。残念ながら、そのスコープにNFC決済ははいっていない。