ポストペイ方式を利用したスルッとKANSAIの『PiTaPa』は着実に浸透

2013年5月20日8:00

ポストペイ方式を利用したスルッとKANSAIの「PiTaPa」は着実に浸透
稼働率は9割を超え、将来的にはエリア外でもポストペイサービスを提供へ

スルッとKANSAIの「PiTaPa」は、交通系ICカードとしては世界的にも珍しい「ポストペイ方式」(後払い)のサービスである。また、単に交通支払いができるだけではなく、日常生活のさまざまなシーンで決済が可能だ。サービスから約9年が経過したが、PiTaPa利用者の稼働率は年間で90%を超えており、効率の良い事業運営ができているという。

ICカードの事業者は42で、磁気の導入社局は40
磁気カードの課題を解決し、レベルの高いサービスを提供

「スルッとKANSAI」は、磁気カードによる共通乗車システムとして1996年3月にスタートし、同年12月にスルッとKANSAI協議会が発足した。同協議会では、共通PR、企画乗車券、部材の共同購入、ICカード、その他会員の利益に寄与する施策に関する企画・検討を行っている。

PiTaPa機能のみを搭載したベーシックなPiTaPaカード

加盟社局は、関西圏を中心に岡山、静岡地区をはじめ58社局。そのうち、ICカードの事業者は42で、磁気の導入社局は40となっている(重複含む)。

PiTaPa開始に向けては、1999年にスルッとKANSAI内にICカードシステム研究会を設立。1999年は、JR東日本がIC乗車券システム「Suica」の導入を発表した年であるが、当時、スルッとKANSAIでは磁気の共通システムを導入していたのは十数社で、これから同システムを広げていく過程の真っただ中であった。

磁気カードシステムを導入する場合、券売機、改札機、精算機の全機種の切り替えが必要であり、多額の投資が必要となる。関西圏では改札システムにおいては、最先端のシステムを導入してきた自負もあり、JR東日本のSuica導入を受け、あまり遅れないタイミングでよりレベルの高いサービスを提供していきたいという思いがあった。そのため、顧客の利便性を向上できるICカードを早期にかつ安価に導入できれば検討に値すると考えた。

まず前提としたのは、経営状況が厳しい各社の状況を踏まえ、「単に磁気からICカードに置き変えるだけではなく、磁気カードシステムにおける課題を解決できるようなサービスの実現」であった。例えば、スルッとKANSAIの利用者からは、「カードの残額が少なくなると使えなくなり、乗り越し精算機を利用することが面倒」、「前払いにもかかわらず、割引やおまけがない」、「駅構内の売店や公営施設などでの支払いに使えない」、「JR西日本など他の交通機関の利用ができない」、「回数券と定期券ではどちらが得かわからない。利用後、損をすることがある」といった声があった。

それらの課題がある中、現行の磁気カードを残しつつ、経営環境の厳しい鉄道やバス会社がよりレベルの高いサービスを提供する仕組みとして「ポストペイ方式」のサービスに行きついた。

全国ICカード相互利用時のショッピングサービスは見送る
会員数は238万人、2万4,000店舗で決済が可能

「残額、割引、回数券や定期券のお得感に関する課題についてはポストペイ方式を採用することで解決できます。また、ポストペイ方式であれば、売店などでの利便性の高い決済サービスも可能です。さらに、前払い機能も併せ持たせ、他交通機関での利用も可能とすることで、磁気カードシステムにおけるお客様の課題をすべて解決することができます」(スルッとKANSAI 常務執行役員 CTO兼CSO 松田圭史氏)

PiTaPaの自動販売機での利用イメージ

ただ、利用者にとってレベルの高いサービスを導入できる一方で、ICカード導入に向けたインフラコストがネックとなった。そこで、プリペイド方式であれば改修コストは大手事業者で100億前後必要となるが、PiTaPaではインフラコストを抑えることが可能なシステムの開発を目指した。

まず、ポストペイ方式のPiTaPaであれば、申し込み後にカードを発行するため、券売機は必要ない。また、改札機は必要だが、ポストペイ方式のため、利用者が少ない導入当初は改札口のうち2台だけ併用機に置き換えればスモールスタートできる。精算機や定期券発行機についても不要なため、プリペイド方式に比べてコストを約4 分の1と大幅に抑えてサービスを開始することが可能となった。

2001年にPiTaPa開始を意思決定し、2004年8月から阪急電鉄、京阪電鉄、能勢電鉄の3社でサービスを開始。前述のように、PiTaPaが利用できる事業者は42に広がっている。利便性向上を図るため、2006年1月からプリペイドサービスを提供するJR西日本の「ICOCA」と相互利用を開始。2013年3月からは全国10の事業者と連携し、相互利用サービスをスタートしている。

全国相互利用については、交通、ショッピング双方を展開したい気持ちもあったが、「ショッピングについては、プリペイド方式による他社のシステムとは違い、多額の投資が発生するため、今回は見送ることとなりました。世の中ではマルチ端末の普及が進んでおり、あえて相互利用という形態を採らなくても共通利用できる方策があると考えています」と松田氏は話す。

現在、PiTaPaを利用する会員数は238万人、ショッピングサービスは2万4,000店舗で利用可能となっている。松田氏は、「ベーシックサービスとしての磁気カードではご満足いただけないお客様に対し、より利便性の高いロイヤルティサービスとしてPiTaPaを提供しています」と説明する。

PiTaPaは、ポストペイ方式のため、入会審査は必要だが、公共性の高いサービスを提供するために、主体的にサービスを運営したいという思いが強かったそうだ。

「PiTaPaは、できるだけ多くの方にご利用いただけるように弊社が考える審査基準に基づき、95%の方にお持ちいただけるサービスとして展開しています。ただ、どうしても、一部の方にはご利用いただけないため、事前に保証金をお預かりする『保証金預託制PiTaPaカード』を発行し、基本的にすべての申込者がご利用いただけるサービスとしています」(松田氏)

また、一昨年の冬からオンラインサービスを開始。最短2週間でカードが手元に届くことにより、利用者のニーズを捉え、1日あたり1,000人弱の申し込みがあるそうだ。

なお、PiTaPaセンターシステムについては、業界における随一の信頼と実績を誇る三井住友カードに業務を委託し、個人情報の管理も含めた万全の態勢を整えている。

ICカードの利用率は平均約30%
プリペイドカードの発行は当面はスコープ外

PiTaPa利用者の稼働率は年間で90%を超えており、「効率の良い事業運営ができている」と松田氏は自信を見せる。磁気カードは20%程度の利用だったが、ICカードの利用率は平均で約30%、高い会社では50%に近い利用があるという。

また、ポストペイならではの現象として、現金やプリペイドの電子マネーと比較すると、2割程度、コンビニでの決済単価が高い。その理由として、「電子マネーの場合は、常に残額を意識して買い物をしていますが、PiTaPaの場合は残額を意識せず、何の躊躇もなく欲しい物を購入する」(松田氏)からだという。

注目されるプリペイドICカードの発行については、現段階では考えていないという。松田氏は、「プリペイドICカードは、一度入手してから継続して利用できます。全国相互利用も果たした中で、プリペイドのICカードを自ら発行する必然性は高くないと考えています」と説明する。ただ、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道については、ICOCA定期を発行する取り組みを行っているため、各社ごとに判断して取り組んでいるという。また、JR西日本とは、双方が保有するノウハウを互いに活用して、よりレベルの高いサービスを双方で提供できるよう、検討を進めている。

なお、モバイルPiTaPaについては、ポストペイのためチャージなどが必要なく、利用者から導入を期待する声も少ないため、スコープには入っていないそうだ。

松田氏は最後に、「今回の全国相互利用の導入にあたり、利用者から、相互利用の際、PiTaPaのエリア外ではプリペイドチャージが必要となるが、ポストペイでそのまま利用できないのか、という声が多かったため、将来的にはエリア外でもポストペイ方式で利用できるようにしていければと考えています」と構想を語った。

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