2014年6月18日7:30
au WALLETまるわかり解説!
-Suicaなど 電子マネーとの違いとは?「後編」-
日本カードビジネス研究会
では、au WALLETカードの概要に関する簡単なご紹介、また、Suica等の電子マネーとの違いとして、
「その1:支払いは店員さんにカードを渡す」「その2:使える場所が違う」以上2点について触れました。
完結編となる後編では、はじめに、
「MasterCard加盟店なのにau WALLETカードが使えない」例外についての続きからお話しさせていただきます。
■C:独自にau WALLETカードの取引を拒否している店舗
実際にau WALLETカードは大学の生協で取引を断られているようです。
なぜ利用できないのでしょうか?
それは、au WALLETカード利用時のトラブルを防ぐためです。
MasterCard加盟店のなかには、取引の都度、リアルタイムに「オーソリ」をあげる仕組みになっていない加盟店があります。au WALLETカードはじめ、国際ブランドつきプリペイドカードは基本的に「オーソリ」の段階でプリペイド残高から使った額を確保する仕組みであるため、この「買い物の都度、リアルタイムにオーソリをあげない加盟店」での利用が、トラブルのきっかけになる場合があります。
こうした加盟店でau WALLETカードを使うとどうなるのでしょうか?
簡単にいうと、買い物をした金額がau WALLETカードからすぐには引き落とされません。
店舗によりますが、数分後から(遅ければ)数日後に、ショッピング金額がau WALLETカードから引き落とされます。
なぜこのような事が起きるかというと、店舗によっては、「オーソリ」を即時ではなく「一定の条件を満たした時にあげる」という取り決めをしている場合があるからです。
実店舗での買い物は「買い物の都度、リアルタイムにオーソリをあげる」店舗がかなり多くなってきていますが、オンラインショッピング等は現在でも、オーソリをあげるタイミングは多種多様であり、一概には定義できません。
au WALLETカードを使う場合は、「使った金額がすぐに引き落とされない場合もある」という事を念頭に置き、なるべく実質の残高内での買い物を心がける必要があります。
尚、決済業界では、こうしたトラブルを未然に防ぐため、カード決済を受け付ける加盟店に対してはリアルタイムオーソリゼーションを義務付ける働きかけを行っています。
(以下は某ECサイトAmaz●nでのau WALLETカード決済の検証結果です。詳細になる為、読み進めたい方は、
■D:カード差込型の決済端末しか置いていない店舗 の項へどうぞ)
ケース①
au WALLETカードで1,030円の粉末スープを注文
(注文方法:6/16午前に6/21配送指定で注文)
■検証結果
注文は完了する。
しかし、注文後すぐにショッピング金額の1,030円はau WALLETカード残高から引かれない。(6/21配送指定をしているため、発送準備が完了した時点で残高を引き落とすものと想定。⇒注文キャンセルの場合を想定しての対応だと思われます。)
ケース②
au WALLETカードで900円のイヤホンを注文
(注文方法:配送日指定なし。準備でき次第配送)
■検証結果。
注文は完了する。
そして、注文後すぐ(1分以内)にショッピング金額の900円がau WALLETカード残高から引き落される。
「まとめ」
同じECサイトでも商品や注文方法によって残高を引き落とすタイミングが分かれる場合があります。(注文された商品の在庫が確保できる事を確認した段階で引き落とし、または発送準備が整った段階で引き落とし など)
■D:カード差込型の決済端末しか置いていない店舗 (ヨーロッパ等)
カードを使っていると、ある時は署名(サイン)を求められ、ある時は暗証番号入力を求められたりするかと思います。あれは、カード表面に「ICチップ」と呼ばれる金色の約1cm四方のチップがあるかないかで決まります。
多くは店員さんがカード券面をチェックし、
ICチップ有り→カード差込型端末へ挿入し、暗証番号を入れてもらう
ICチップ無し→カード読取型端末で磁気テープを読取り、サインしてもらう
このようなルールでカード決済が行われています。
ICチップには暗証番号情報が埋め込まれており、お客さんが手動で暗証番号を入力することで、ICチップの番号と手入力した番号がマッチングすれば使える(=本人利用と判断)という仕組みになっています。
ただし、コンビニやスーパーなど一部店舗では署名(サイン)や暗証番号を入力することなく、店員さんへカードを渡すだけでショッピングが済んでしまう場合があります。
これはカード会社と加盟店の間で交わす特別な取り決めによって成立しているルールで、
コンビニやスーパーなど、「換金性の低いものを主な商材として扱う店舗で、かつ、レジに行列ができやすくスピーディーな決済が必要とされる」シーンでは、特例として「サインレスでもカード決済OK!」となっている場合が多くあります。ただし、こうした店舗でも、一定金額以上になるとサインや暗証番号入力を求められることがあります。
話を戻しましょう。
au WALLETカードには、ICチップがついていません。
ただし、ICチップがついていないからといってカード決済ができない店舗が日本にあるかといえば、それはほぼ皆無と言えます。(日本のカード加盟店では磁気テープを読取る決済端末が整備されているためです。)
海外、特にヨーロッパでは「カード差込型端末」しか設置していない店舗もあるため、そうした店舗ではau WALLETカードを使う事ができません。
●電子マネーとの違い その3
→残高の管理方法が異なる(チャージ方法が異なる)
Suica等の電子マネーは駅の券売機やコンビニ等において現金でチャージするのが一般的です。(カード仕様、サービスによっては、オートチャージに対応したものもあります。)
一方、au WALLETカードは現金での入金はauショップのみとなります。
インターネット経由であればクレジットカードやauかんたん決済、au WALLETポイントなどでチャージができます。(※オートチャージはauかんたん決済のみ)
なぜ、こうした違いが出るのでしょうか?
それは「残高の管理方法が異なる」からです。
Suica等の電子マネーは、「カードそのもの」が残高を持っています。
お金が中にはいっています。
(難しい言い方をすると、媒体価値保有型のカードといいます)
そのため、紛失した際は「お金を落とした」のとほぼ同じ事になります。
一方、au WALLETカードは「カードそのもの」は残高を持っていません。
お金は中にはいっていないのです。では、いずこへ?というと、
インターネット上のプリペイド口座に入っています。
(こちらは、サーバー型といいます)
そのため、チャージ方法もインターネット経由の手段が豊富に揃えられているのです。
また、カードを落としたとしても、持ち主がインターネットから即時に利用停止処理をすればカードは使えなくなり、残高が守られることになります。
この点も、au WALLETはじめサーバー型プリペイドカードの強みであるといえます。
ちなみにau WALLETカードは基本的に、使った店舗やレシートでは残高を確認することができません。その代わり、インターネット経由でいつでも簡単に残高を確認できるメリットがあります。
●電子マネーとの違い その4
→残高不足の時の取引が異なる
Suica等の電子マネーで500円の週刊プロレス(表紙はDDTの飯伏選手)を買おうとしたとき、残高が450円しかなければ、残額の50円を現金で支払って買い物をすることができます。
一方、au WALLETカードは残高が450円あったとしても、原則このような使い方はできません。買い物は基本的に、カード残高の範囲内である必要があります。
「ショッピング金額>カード残高」の状態でカードを使おうとしても、「残高不足」であることは店頭ではわかりません。理由はその3で説明した「プリペイド残高を表示する為の仕組みがない」ためですが、少し深く掘り下げてみましょう。
これも「オーソリ」で説明ができます。
コンビニは上記のような場面の時、500円のオーソリをあげます。au WALLETカードには450円しか残高がないので、オーソリは失敗で回答されます。
この時、「なぜオーソリが失敗したのか?」という原因に関する情報は店頭の端末に表示されません。店員向けのディスプレイに表示されるのは、「カードが取り扱えない旨と、(お客さんへ)カード会社に問い合わせるように伝える旨」だけです。
そのため、店員はお客さんへ「このカードは利用できないようです」としか伝えられないのです。
店頭の決済端末では厳密にクレジットカードかプリペイドカードかの判別ができないため、プリペイドカード特有の「残高不足」という原因を伝えることができないんですね。
ただしau WALLETカードの場合は、専用アプリからリアルタイムで入金して使えばこういった心配はありません。
以上がau WALLETと電子マネーに関する違いのまとめでした。
前編、後編にわたって解説させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
au WALLETカードは、業界用語では通称「ブランドプリペイドカード」と呼ばれており、VisaやMasterCardなど「国際ブランド」の決済ネットワークに乗る形で決済されます。
日本における「ブランドプリペイドカード」は、au WALLETの他にも、国内外の店舗で使えるプラスチックカードの「ココカラクラブカード(Visa)」、海外の実店舗で旅行時などに使える「MoneyT Global(Visa)」、インターネット専用で使えるバーチャル型の「Vプリカ(Visa)」など、用途に応じて実に多様なカードが発行されています。
プリペイドカードはクレジットカード等よりも、商品性をカスタマイズしやすい点が特徴として挙げられそうです。
ブランドプリペイドカード以外にも、銀行が発行する「ブランドデビットカード」と呼ばれる商品もあります。(手持ちのキャッシュカードでお買い物ができる「J-debit」とは異なります。)
ブランドデビットカードの場合、ショッピングで使った金額が即時に普通預金口座から引落されます。例えば銀行口座を給与口座に指定していれば、チャージの必要なくカード決済できる利便性が強みです。
au WALLETを皮切りに、今後、利用者のニーズに併せて後払いのクレジットカード以外の決済方法が充実していきそうな気配です。
本記事は日本カードビジネス研究会の解説記事をご紹介しています。
http://www.ncbi.jp/ncbblog/2014/06/au-wallet–suic-6046.html