2015年1月28日8:38「緊急災害支援金支給カード」や「給付金支給カード」としての活用に期待
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、国内外から多額な義援金が寄せられたが、震災後2カ月が経過した5月中旬にようやく支援金の受給申請の受付が一部で始まった。日本では、こうした各種支援金の支給は、災害発生後しばらくたってから行われるのが常で、被災直後の最も困難な時期に速やかに支援金の支給が行われてこなかったという。また、支援金の支給が被災からしばらく経過して支払われることと、日本における郵便局や農協を含めた金融機関の口座保有率が100%に近いことも関係しているが、支援金の支給方法は、原則として従来から授受が明確となる被災者の金融機関への口座振込で行われてきた。
プリペイドカードにより迅速な支援金の支給を実現
海外では、2005年にアメリカ南部のルイジアナ州やミシシッピ州、アラバマ州などを襲ったハリケーン・カトリーナの被災者支援としてVisaやMasterCardブランドのオープンループのオンラインプリペイドカードによる“緊急災害支援金支給カード”の導入が行われている。
例えば、2008年9月のテキサス州を襲ったハリケーンによる大災害の際、アメリカ赤十字が中心となって、プリペイドカードの支援金の支給を行っている。イタリアで2009年4月に発生したマグニチュード6.3のイタリア中部地震において、MasterCardプリペイドカードによる緊急災害支援金支給カードによって支援金の支給が行われている。
2010年9月と2011年1月に発生したオーストラリア大洪水の被災者への支援金の支給に “緊急リリーフカード”がウェストパック銀行を通じて配布された。パキスタンでは、2011年7月に発生した大洪水の際、ユナイティッド銀行を通じてVISAプリペイドカードの緊急災害支援金支給カード「Watan Card」が提供された。2013年7月にカナダ西部のアルバータ州を襲った大洪水に際し、MasterCardブランドのプリペイドカードによる緊急支援金支給が迅速に行われた。このように、オープンループのオンラインプリペイドカードによる“緊急災害支援金支給カード”は、緊急の災害援助における支援金の支給に大きく寄与している。
給付金支給カードの活用が欧米や発展途上国で注目を集める
また、税還付金支給カードや緊急災害支援金支給カードに加え、給付金支給カードなどの、公共部門(パブリックセクター)におけるオープンループのオンラインプリペイドカードの活用が最近欧米や経済発展途上国で注目を集めている。
例えば、行政府機関が貧困世帯に対して行っている生活支援金支給などで導入されている給付金支給カードとしては、USバンクの公共部門(パブリックセクター)カードの“Relia Card”、JPモルガン・チェースやコメリカ銀行などによる給付金支給カードである“EPPIカード”、アメリカ連邦政府の給付金支給カードである“Direct Expressマスターカード”、中南米を中心に導入されているCCT(Conditional Cash Transfer、条件付給付金)プログラムにおけるブラジルやメキシコ、アルゼンチンの給付金支給カード、フィリピンのCitiバンクによる低所得者や災害被災者向けの低利融資利用者を対象にした“PAG-IBIGシティプリペイドカード”などが挙げられる。
「世界のプリペイドカード市場要覧」では、「緊急災害支援金支給カード」や「給付金支給カード」の動向について紹介しているが、海外で展開されているこのようなモデルケースが将来的に国内におけるプリペイド活用の可能性を広げる参考となるかもしれない。