2015年10月22日8:00
市や病院と連携し、地域での活用もスタート
川崎市薬剤師会は、ソニーが展開する電子お薬手帳サービス「harmo(ハルモ)」をいち早く導入した。2011年に宮前区から試験運用を開始し、2013年12月より川崎市全域へ導入したが、お薬手帳を電子化して、調剤履歴をクラウド上に保管することにより、着実に成果を生んでいるそうだ。
2008年からいち早くお薬手帳の検討を開始
FeliCaを用いてクラウドサーバ上で電子的に管理
川崎市薬剤師会では、2008年に川崎市宮前区でソニーのハルモ事業の創案者から、お薬手帳を電子化することにより、患者によりよい環境を作ることができないかという相談を受けた。まずは、お薬手帳を電子化することにより、どのような発展性をもたらすかについて検証し、患者および薬剤師双方にメリットのあるシステムになる可能性があると考えたため、約1,000名、20数件の薬局の協力を得て、2011年に宮前区で試験運用をスタートした。約2年間の運用の中で、患者の評判も良く、実績も出てきたため、川崎市薬剤師会に相談して2013年秋にハルモの実証実験を開始している。
ハルモは、薬局等で調剤された薬の履歴等に関するデータを、FeliCaを用いてクラウドサーバ上で電子的に管理する、ソニーの電子お薬手帳に関するサービスとなる。ハルモの特長として、FeliCaチップが埋め込まれたカードを薬局の端末にかざすだけの簡単な操作で、調剤履歴の閲覧と調剤情報の記録を行うことができる。
「たとえば、ご自身が病気になった際、紙のお薬手帳を持たれずに薬局を訪れる方は多いですが、カード型になりお財布にしまっていただければ、持ってきていただける可能性が高まります」(社団法人川崎市薬剤師会理事 伊藤啓氏)
副作用やアレルギー、病気などにより、飲むことができない薬剤もあるが、患者からその情報を得ることができないと、リスク回避ができないケースもある。ハルモでは、薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報を記録しており、複数の医療機関で薬が処方された場合でも、薬剤師が薬の重複や飲み合わせのチェックを行う際に役立つそうだ。
現状、川崎市薬剤師会の会員の約50%で利用されており、200を超える調剤薬局で採用されている。伊藤氏は、「実稼働数はかなり高いと感じています」と語り、笑顔を見せる。ユーザー数については、川崎市で1万8,000を超えた。現在はパイロットサービスのため、希望者などに限定してハルモカードを配布しているそうだ。また、ハルモは、カードを主体として、スマートフォンでも応用的に利用できるシステムとなっているが約5割が活用している。
「現役世代」の利用が多い傾向に
川崎市の一部の病院でも調剤履歴の閲覧が可能
利用者の傾向をみると、紙のお薬手帳は、乳幼児と高齢者が突出して多くなっている。また、「現役世代」の普及率が低い傾向がみられるが、ハルモについては、現役世代の多くが利用しているという。
ハルモはクラウド上に調剤履歴が置かれており、仮に災害などでカードをなくしても再発行することが可能だ。また、個人情報はカードに格納されており、患者がカードをリーダにかざさなければ薬剤師は情報を閲覧することができない。サーバに個人情報を保存しないため、セキュリティを担保できる点も採用する上では大きかったそうだ。
2015年3月には、川崎市、薬剤師会、ソニーの三者が、川崎市民のためにITを活用したサービスの向上について、試験サービスに関する協定を締結した。これまでは、ハルモに参加する調剤薬局では情報の共有はできていたが、エリア内の病院や診療所では情報の連携ができていなかったそうだ。すでに川崎市立川崎病院を中心に、その周辺の病院に導入が進んでいるという。一部の病院でもタブレットにより、調剤履歴の閲覧が可能だ。
今後の展開として、2015年中には、他の薬剤師会と情報を共有する場が設けられる予定となっている。電子お薬手帳は新しいサービスであるため、他の薬剤師会の活用事例や悩みなどをお互いに共有することで、よりよいサービスを目指していきたいとしている。
なお、ハルモの試験サービスは2016年3月で終了するが、川崎市薬剤師会ではサービスとして継続していきたいとしている。