決済やポイント交換でも新たなビジネスモデルを創出へ、DG・カカクコム・クレディセゾンが「DG Lab」を設立

2016年7月5日11:30

「ブロックチェーン」「VR/AR」「AI」「セキュリティ」「バイオテクノロジー」を重点分野に

デジタルガレージ(DG)、カカクコム、クレディセゾンの3社は、2016年7月4日に記者会見を開催し、オープンイノベーション型の研究開発組織「DG Lab」を設立したと発表した。「DG LAB」は、ビジネスの多様な変化に柔軟に対応し、最先端の技術を取り込みながら事業を成長させるための研究開発組織として発足。オリンピックの開催を見据え2020年までを第1フェーズとして活動を開始した。

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左からカカクコム 代表取締役社長 畑彰之介氏、デジタルガレージ 代表取締役社長 兼 グループCEO 林郁氏、デジタルガレージ 取締役 共同創業者 伊藤穰一氏、クレディセゾン 代表取締役社長 林野 宏氏

「デザイン x データ x テクノロジー」がキーコンセプト

「DG Lab」では、「デザイン x データ x テクノロジー」をキーコンセプトとしている。デザインでは、クリエイターのレイ・イナモト氏がクリエイティブ・アドバイザーに就任し監修に当たるとともに、世界のクリエイターをつなぐネットワークと「DG Lab」の連携を推進していくという。

データでは、電通とデジタルガレージの合弁企業であるBI.Garageが手がけるデータサイエンス事業への応用を推進していく予定だ。グループのカカクコムの持つWEB行動データ、デジタルガレージ(ベリトランス、イーコンテクスト)の決済データ、クレディセゾンが保有する購買・決済データ等を組み合わせ、人工知能で分析した結果に基づくサービスやビジネスを開発することなどを検討している。

さらに、テクノロジーでは、グローバルな視野に立って研究開発に取り組むために「DG Lab」は、東京、サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンに拠点を設置。各分野に精通した研究者やエンジニアを抱え、グローバルな視野に立って研究開発を行う。

ブロックチェーンはBlockstream社との連携を推進

「DG LAB」では、「ブロックチェーン」「VR/AR」「AI(人工知能)」「セキュリティ」「バイオテクノロジー」の5つを重点分野として、各分野で高レベルを持つ国内外の投資先企業と連携し、新たな事業の柱となるプロダクトやサービスを生み出すことを目的としている。5つの重点分野の中でも当初は特に、「ブロックチェーン」と「人工知能」に力を入れて研究開発を進める予定だ。ブロックチェーンについては、2016年2月にDGが子会社を通じて出資したBlockstream社との連携を推進する。

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また、同コンセプトに賛同する協賛パートナーをさまざまな分野から募る。具体的には、カード/金融/証券、広告、自動車、家電大手、通信キャリア、放送/コンテンツ、不動産などの分野からの参加を予定している。例えば、金融分野の技術開発では、TISと連携して同社の有する決済やカードソリューションと次世代技術とのハイブリッド化を目指すという。そのほか、横浜銀行、りそな銀行、大和証券グループ、パルコ、弁護士ドットコム、アイリッジ、電通サイエンスジャム、ソニーコンピュータサイエンス研究所、講談社、などとの連携を予定している。

デジタルガレージ 代表取締役社長 兼 グループCEO 林郁氏によると、スタートは日本を代表する大手企業に参加してもらい、各セグメントごとの連携を強化することで、2020年の東京五輪を機に普及し、市場に残る技術を作っていきたいとしている。現在は10~15社ほどが参加を検討しており、最終的には60社の参加を見込む。

実務に近いところでさまざまな分野が融合する研究開発が必要

デジタルガレージ 取締役 共同創業者 伊藤穰一氏によると、仮想通貨などの技術は短期的に盛り上がり、数回のブームを繰り返しているという。また、人工知能などの技術も以前から使われているものであり、新たなブームが来ているが、近年は「科学の発見からプロダクトになるまでの期間が短くなっている」という。また、他分野のサービスが基礎研究からプロダクトまでつながってきているため、実務に近いところでさまざまな分野が融合する研究開発が必要であり、インターネットの開発によりコラボレーションコストが下がり、巨大な予算なく研究が可能になっている。

ただ、ブロックチェーンの技術は金融、法律など、さまざまな業界にインパクトがあると考えているが、規格が定まっていないため、まずは基礎研究を行い、規格、インフラを構築することが重要とした。

カカクコム 代表取締役社長 畑彰之介氏は、IoTの時代を迎え、技術が生まれてからサービスにつながるまでが速くなっていることを挙げ、「さまざまなの協賛企業と共に新しい生活者に密着したインフラを作っていけることを嬉しく思っています」と語った。

クレディセゾンは海外事業も含めたビジネス創出に期待

また、会員数3,500 万人を誇るクレディセゾンでは、ベンチャーキャピタルへの投資、セゾン・ ベンチャーズの創設など、新分野の開拓などに力を入れてきた。クレディセゾン 代表取締役社長 林野 宏氏は、「『DGラボは玉手箱』。その中からいろいろな宝物が出てくる。これが新しいビジネス、あるいは既存のビジネスを変えてしまう新しいサービスを生み出す。それらが融合して、弊社の東南アジアまで広げたマーケットの中で、ビジネスを拡散したり、集合したりしながら、全体としては新しいビジネスが生まれると思います」と期待を述べた。

Blockstream社は、ブロックチェーン関連サービスの開発を促進させるためのオープンプラットフォーム技術「サイドチェーン」を研究開発。「DG Lab」は、Blockstream社の技術支援を受けながら、ブロックチェーンを利用した、クレジットカードなど、さまざまなポイントやバリュー、仮想通貨等のエクスチェンジシステムや、今後さらに需要が増加する地域マネー、電子マネー等のプラットフォーム、契約執行や価値移転、権利許諾等の自動化を行うスマートコントラクトの基盤技術を開発する予定だ。

Blockstream社の技術
Blockstream社の技術
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Blockstream Co-founder&President Adam Back氏

ポイント交換やエリアマネーでもブロックチェーン技術を活用

左からデジタルガレージ 取締役 踊契三氏、クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部長 磯部泰之氏
左からデジタルガレージ 取締役 踊契三氏、クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部長 磯部泰之氏

クレディセゾンはサインレスや永久不滅ポイントなど、カード会社としていろいろなことにチャレンジしてきたが、ブロックチェーンの分野でもリーダーシップを取りながらチャレンジしていきたいとした。

現在、ポイントは大手企業だけでも年間1兆円程発行されているが、長期で見るとポイントがお金のように、いつでもどこでも循環して、便利に利用されると考えている。また、仮想通貨や他国の通貨への交換なども見込んでいる。

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ポイント交換での活用

「グローバルの目線でも捉えられるような新しいポイントエクスチェンジのプラットフォームにチャレンジしていきたいです」(クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部長 磯部泰之氏)

また、地方自治体のエリアマネー、店舗の独自マネーをブロックチェーンシステムによる共通プラットフォームと互換性のあるシステムを構築させていきたいとしている。磯部氏は、「既存の事業であるプリペイドカードを使ったビジネス展開も見据えていきたいです」と意気込みを見せる。

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エリアマネーへの応用

デジタルガレージが蓄積したデータとAI技術から価値を創出

さらに、デジタルガレージグループが有する膨大なデータと、最先端のAI技術を組み合わせて新たな価値の創出を目指す。例えば、「価格.com」や「食べログ」では多くのユーザーの行動履歴を保有しており、ベリトランスとイーコンテクストの決済代行事業者では年間2億件近いデータを処理している。ベリトランスの代表取締役も務めるデジタルガレージ 執行役員 篠寛氏は、「AIテクノロジーを保有している会社は少ないですので、マッチングしていく環境を『DG LAB』で作っていきたい」と語った。

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左からデジタルガレージ執行役員 篠寛氏、カカクコム 執行役員 宮島壮洋氏
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蓄積データとAI技術から価値を創造

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