2016年11月2日8:30
金融とITの融合の中で進行している金融イノベーション
今、金融とITの融合の中で進行している金融イノベーションのキーワードは、「スマートデバイス」「オムニチャネル」「ビッグデータ」の3つである。スマートフォンやタブレット端末などの「スマートデバイス」の普及は、モバイルペイメントやモバイルバンキングの拡大をもたらしている。「オムニチャネル」によって、既存の支店やATMとPCベースのオンラインバンキング、スマートフォンやタブレット端末ベースのモバイルバンキングとの連携を図ることができる。大量で多様なデータ解析によるCLO(Card Linked Offer)などの顧客ニーズの予測やカード不正検知といった「ビッグデータ」の活用である。
“FinTech”(金融とITの融合領域)とは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、アメリカやイギリスのみならず中国や日本などアジアでも積極的な投資が行われ始めている。“FinTech”は、新たな金融サービスを生み、利便性の向上をもたらすと期待されている。
アメリカにおけるFintechのプレーヤー
アメリカにおける“FinTech”のプレーヤーは、「決済(Payments)」(スマートフォン決済、EC決済、P2P決済など)分野を中心に、「貸付(Lending)」(P2P、ビッグデータ)、「PFM(Personal Finance Management)」(家計・資産管理の自動化・分析)、「資産運用」(インデックス、自動リバランス)、「バンキングサービス」(アプリなど)の5つのカテゴリーに大きく分類することができる。
また、“FinTech”のジャンルを、「決済(Payments)」、「送金(Remittance)」、「融資(Lending)」、「個人資産管理(Personal Finance)」、「個人投資( Retail Investments)」、「会計」、Bit Coinなどの「仮想通貨(Cyber Money、Crypt Currency)」、「機関投資家による投資(Institutional Investments)」、「個人向け銀行(Consumer Banking)」、「金融調査(Financial Research)」、「銀行インフラ(Banking Infrastructure)」の12のカテゴリーに細分類することができる。
1990年代にも、現在と同様に金融イノベーションが騒がれる
インターネットの商業化が始まった1990年代にも、現在と同様に金融イノベーションが騒がれていた。インターネットで決済が可能な暗号通貨のデジタルキャッシュや資金の転々流通性を有したIC電子マネーのMONDEXマネー、PayPalに代表されるデジタルワレット(電子財布)を用いた代替オンライン決済サービス、家計簿ソフト「Quicken」(クイッケン)をめぐるマイクロソフトと金融界争いなどである。こうした1990年代の金融イノベーションの多くは、現在注目されているFinTechベンチャー”の金融イノベーションに相通じている。
1990年代の金融イノベーションが一部の人々が利用していたパソコンベースのインターネットによるものであったのに対して、現在の“FinTech”の金融イノベーションはスマートフォンやタブレット端末によって大多数の人がインターネットにアクセスしている状況に根差している。