2016年12月9日8:44
新カントリーマネージャーが事業説明会で展望語る
オンライン決済サービスを手がけるPayPal(ペイパル)は、2016年12月6日に事業説明会を開催し、直近の動向・取り組みや今後の戦略および展望を発表した。取扱高や決済件数が増加していることもあり、「簡易性・利便性」に加えてオンライン決済のリスクをカバーする「安全性・信頼性」をさらなる重要ミッションと位置付ける。事業拡大のドライバーとしては、中小企業への導入や訪日観光EC基盤の整備、モバイル活用の最適化といった3項目を挙げた。これらの実現に向けすでに日本旅館協会をはじめ多種多様な企業とのアライアンスに着手しており、12月中旬からはキャンペーンも開始。国内のニーズやトレンドに合致する新たなプロダクトの導入も進める(執筆:通販研究所 渡辺友絵)。
2016年第3四半期の取扱高は前年同期比25%増の870億ドル
アクティブユーザー数も同11%増の1億9200万人と拡大
PayPalは1999年の創業で、2010年に日本オフィスを設立した。ネットショップにおける物販やデジタルコンテンツ販売のオンライン決済に際し、ユーザーが店舗ごとにクレジットカード番号を入力しなくてもIDとパスワードだけでアカウント決済できるサービスを提供。現在、世界200以上の国と地域で100以上の通貨決済が可能で、25種類(国内では22種類)の通貨口座に対応する。セキュリティに関しても全取引を自社の「不正防止モデル」と照らし合わせてチェックするなど、24時間・365日体制で2,000人から成る専門チームが監視を行う。これにより、不正取引の排除や、販売側と購入側双方のリスクをカバーしている。
6日に都内で開かれた事業説明会では、10月にカントリーマネージャーとして就任した曽根崇氏が、日本市場におけるビジネスの進捗状況や今後の戦略・取り組みについて語った。昨今のグローバルな事業成長に関し、2015年と2016年の第3四半期における数字を比較して説明。取扱高は約697億ドルから約870億ドルへと25%増に、年1回以上利用したアクティブユーザー数は約1.73億人から約1.92億人へと11%増に、決済件数は約12.2億件から約15億件へと24%増に達し、全体的に急成長を果たしたという。
オンライン取引が増加する国内市場だが、「電子決済比率はまだ半分程度で他国と比較すればのびしろがある」(曽根氏)とし、「不正取引防止面からも、一層の拡大が見込まれるデジタルコンテンツとの親和性が高い」と自信をみせた。一方で成長に伴い、PayPalの簡易性・利便性に加えて決済の安全性や信頼性をより高めていくことが重要ミッションであると強調した。
3つの分野に注力しさらなる成長を目指す
多種多様な企業と組みさまざまな角度からソリューションを提供
今後さらなる成長を遂げていくドライバーでありビジネスチャンスとして曽根氏が掲げるのが、「中小企業スタートアップ」「訪日観光」「モバイル」の3点だ。「中小企業スタートアップ」については、“起業するなら、PayPal”を合い言葉に中小企業向けの決済ツールであることを広めて導入を促していく考え。そのためこの1年間はジャパンEコマースコンサルタント協会をはじめさまざまなEC関連企業の強力を仰ぎ、中小EC事業者へのアンケートや白書作成、勉強会、交流会、イベントへのスポンサー参加など幅広い取り組みを行ってきた。これらを通じてまずは中小EC市場への理解を深める部分からスタートし、パートナーシップを結びながら徐々にプレゼンスを固めていくことにつなげた。
「訪日観光」は、昨年2000万人を超えるなど急増する訪日外国人客の宿泊決済サービスを視野に入れて展開する。今年6月には2,800施設が加盟する日本旅館協会と業務提携し、ブッキング(予約)エンジンとの連携に着手。会員施設が自社サイトでPayPal決済を導入できるように全面的なサポートに乗り出した。すでに会員施設の8社が導入したが、老舗旅館やビジネスホテル、リゾート施設など100施設以上からの申込みがあり、自社サイトで予約を受け付ける施設の約8割程度まで認知が広がっているという。
「モバイル」活用も以前から有望視しており、この1年間で機能の最適化を進めてきた。決済のログイン画面や決済確認をモバイル対応とし、ユーザーデバイスに合わせて最適化する仕組みを整備。中でも今年導入した新サービス「OneTouch」は、PayPalアカウントで決済する際にチェックボックスをオンにしておけば、180日間は別サイトや別ショップで商品を購入してもIDやパスワードを入れずに済む。このようにユーザビリティや利便性を向上させることで、利用者数や利用頻度を増やしていく。
年末キャンペーン展開でコンバージョンアップを狙う
企業と積極的に連携し新たなプロダクトを投入
12月15日からは、デジタルコンテンツ系を中心にさまざまな企業と連携した年末キャンペーンを実施する。
PayPal決済を使ってくれるユーザーの数と利用頻度の伸張を見据え、提携を通じてユーザーに付加価値を感じてもらえるような新しいプロダクト導入を目指す。2015年にeBayグループから離れて制約が外れたため、それまで競合と見なされていた企業ともパートナーシップを進めることが可能となった。グローバルレベルではすでにVisaやMastercard、Alibabaグループ、Facebookなどと連携しており、国内でも同様の取り組みを展開するという。