2018年1月25日8:20
流通大手のイオン(本社・千葉市)とスーパーマーケット事業を展開する同社のグループ会社、マックスバリュ西日本(本社・広島市)は、買い物客が売り場で持ち運びできる専用端末で商品のバーコードを読み取り、レジに並ばずに精算できるシステム「マイピ」を初めて導入した。客の利便性向上とレジ業務の簡略化を図る取り組みで、2018年1月17日からマックスバリュ宮西店(兵庫県姫路市)で試験運用を始めた。(ライター:南 文枝)
商品をかごから出し入れする際にバーコードをスキャン
買い物後は専用精算機でスムーズに支払い
2018年1月24日には、マックスバリュ宮西店で報道向けの説明会が開かれた。マイピは、両社とオムロンのグループ会社で社会システム事業などを手がけるオムロンソーシアルソリューションズ(本社・東京都港区)、POSシステムの開発などに取り組む寺岡精工(本社・東京都大田区)とで共同開発した。
マイピの利用はイオンのクレジットカード保有者であることが条件。具体的な利用方法はこうだ。店舗のサービスカウンターでイオンのクレジットカードを提示し、専用端末を借りる。買い物かご付きのカートで売り場を回り、購入する商品のバーコードを、かごに入れる際に専用端末でスキャン。端末の画面には、読み取った商品名や税込価格、かごに入れた商品の合計点数・金額が表示される。どの商品を購入したかも確認できる。
買い物を終え、端末を専用精算機に読みこませると、精算機の画面に購入した商品の合計金額が提示される。その金額を支払えば、精算終了だ。決済方法は、イオンのクレジットカードのほか、電子マネーの「WAON(ワオン)」、現金から選べる。その後、専用端末をサービスカウンターに返却する。
通常価格より割引されている商品の場合は、商品に張られた割引シールを端末でスキャンすると、割引が適用される。まとめ買いで値引きされる商品は、1品ずつバーコードを読みこめば、精算時に割引が行われる仕組みだ。
また、商品の返品は、精算前なら専用端末の操作で行える。購入していない商品の返品操作をした場合は教えてくれる機能もある。精算後なら、サービスカウンターで対応してもらえる。
今秋をめどに本格導入、100店舗での展開目指す
将来的にはレジの“無人化”も検討
マイピを使えば、商品をかごに入れる時点でその情報を読み取れるため、レジに並んで店員がスキャンを終えるのを待ったり、客が自分で商品のバーコードを読み取り、精算する「セルフレジ」で、一つ一つの商品をスキャンしたりする手間が省ける。買い物かごにマイバッグやマイバスケットを装着すれば、支払いの前に商品を詰めてしまうことも可能だ。
宮西店に導入したマイピの専用端末は8台。現在のところ、1日10~20人の客が利用しており、同店の山本昂樹店長によると、来店のたびに使う客もいるという。
客からは「買い物の時間が短縮された」「買い物の途中で合計金額をチェックできるのがよい」「(売り場を回りながら)マイバスケットに自分の好きなように商品を入れられる」などと評価する声が上がっている。その一方で、「画面が小さくて見にくい」「端末が重い」といった改善を求める意見も寄せられている。
宮西店では現在、店員がすべてのレジ業務を行うフルサービスのレジと「セルフレジ」、店員がレジで商品のバーコードをスキャンし、客は別の精算機で支払う「支払いセルフレジ」が設置されている。今後、これらのレジとマイピとの利便性や効率性を比較し、検証する。
マックスバリュ西日本は、2018年秋をめどに、1店舗あたり専用端末5台を基準に、他の店舗でも本格的にマイピを導入する予定だ。その際は、画面を大きくして見やすくするなど、専用端末を改良する。19年2月期までに、関西や中四国で展開する181店のうち、半数を超える100店での運用を目指すという。
マイピは客がスムーズに買い物できるだけでなく、店舗側にとっても、人材確保が難しいレジ業務を効率化できるというメリットがある。同社は将来、店舗面積500平方メートルの小型店などで、レジの無人化も検討している。同社コーポレートブランディング本部の森永和也本部長は「店舗で採用に苦労しているのがレジ。最終的にはフルサービスのレジをゼロにしたい」と話した。