2025年8月19日8:00
和田 文明
プロフィール キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材 |
ヨーロッパでは、電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)による非接触決済(コンタクトレスペイメント、タッチ決済)が非常に普及しており、イギリスなどヨーロッパの多くの国で物理的なカード決済を上回る勢いで利用が拡大している。特にスウェーデンやデンマークなどの北欧やイギリスでは、政府や銀行の積極的な推進もあり、キャッシュレス化が急速に進み、電子財布は、これらの非接触決済(コンタクトレスペイメント、タッチ決済)の主要なインターフェースとして機能している。アメリカではクレジットカードやオフラインデビットカードなどペイメントカードによる決済が依然としてメインであるものの、近年スマートフォンの普及とテクノロジーの進展に伴い、Apple Pay、Google Pay、Samsung Payなどの電子財布の利用が拡大している。欧州と比較すると、アメリカでは小規模店舗やローカルではまだ現金決済の割合が少なからずあり、これはPOSカード決済端末のコンタクトレスペイメント対応の遅れなどが背景にあるといわれている。
欧米における電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)は、スマートフォンの普及拡大に伴い、多様な進化を遂げている。こうした欧米における電子財布(デジタルウォレット/モバイルウォレット)の動向について、次のテーマで、5回に分けてレポートしてみたい。
<Index>
(1)デバイスベンダー系電子財布
(2)ペイメントサービスプロバイダー系電子財布
(3)銀行系電子財布
(4)電子財布とエンベディドファイナンス
(5)オープンバンキングと電子財布
モバイル財布を含む電子財布(E-Wallets)とは、支払い情報、デジタル通貨、ポイントカード、チケットなどをデジタル形式で安全に保存し、管理できるソフトウェアまたはハードウェアベースのシステムで、スマートフォンアプリやウェブサービスとして提供されることが多く、実店舗やオンラインでの支払いを手軽かつセキュア行うことを可能にする。 |
<参考文献・資料>
・実装に向け動き出したEUの「欧州デジタルIDウォレット」、日本総研
・「大人のためのスマホ決済入門」(英和ムック)、英和出版社
・エンベディドファイナンスの衝撃、東洋経済新報社
・BNPL 後払い決済の最前線、金融財政事情研究会
・キャッシュレス決済ビジネスハンドブック、中央経済社
・超お得! ぜんぶPayPay生活、TJMOOK
・できるAmazon Pay、インプレス
・Digital Wallet、Payment experiences that drive revenue and loyalty、CR2
・Digital wallets and instant payments、The Federal Reserve/ FedNOW
・Digital Wallets in Visa’s Ecosystem: Policies & Requirements、VISA
・Digital Wallets、Proposal for a Digital Wallets Taxonomy、HSLU
・Study on Digital Wallet Features、KANTAR PUBLIC
・Introduction Mobile Wallet、Pass Kit
・Mobile and Digital Wallets: US Payments Forum
・Mobile Wallet、Scribd
・Embedded Finance: When Payments Become An Experience、Wiley
・Embedded Finance and Banking-as-a-Service Report 2023、The Paypers
・U.S. Embedded Finance Market、Grand View Research、Inc.
・2024 The Embedded Lending Opportunity、VISA
・Embedded finance – a buyer’s Guide、Weavr
・Embedded finance: Bringing value into focus、Weavr
(1)デバイスベンダー系電子財布
電子財布(E-Wallets、デジタルウォレット/モバイルウォレット)の第1回目は、欧米の電子財布市場における「デバイスベンダー系電子財布」について紹介してみたい。スマートフォンなどの世界の代表的なモバイルデバイスベンダー系電子財布は、「Apple Pay」「Google Pay」(G Pay)「Samsung Pay」(Samsung Wallet)である。
(表)主なデバイスベンダー系電子財布
Apple Pay |
iPhone やApple Watch,などのAppleデバイスに組み込まれており、高いセキュリティと利便性で多くのユーザーを有し、Apple Payは、店舗での非接触決済(コンタクトレスペイメント、タッチ決済)だけでなく、オンラインショッピングやアプリ内決済にも広く利用されている。特に北米市場では圧倒的なシェアを有している |
Google Pay |
PixelスマートフォンやWear OSデバイスなどAndroidデバイスを中心に組み込まれており、非接触決済(コンタクトレスペイメント、タッチ決済)に加え、P2P送金(個人間送金)や公共交通機関のチケット管理など、多様な機能を提供している |
Samsung Pay |
Samsung(三星)製のスマートフォンなどのデバイスに特化しており、非接触決済(コンタクトレスペイメント)に加え、P2P送金(個人間送金)や公共交通機関のチケット管理など、多様な機能を提供している。Samsung PayはNFC(Near Field Communication)だけでなく、MST(Magnetic Secure Transmission) (磁気セキュア伝送)にも対応することで、より幅広い店舗で利用できる点が特徴である |
各種資料より作成
欧米のモバイルデバイスベンダー系電子財布
欧米におけるスマートフォンなどのモバイルデバイスベンダー系電子財布(E-wallets)は、スマートフォンやスマートウォッチなどのデバイスメーカーが提供するデジタルペイメントサービスを指し、これらのサービスは、ユーザーのクレジットカードやデビットカード、ロイヤルティカードなどの情報をデバイス内に安全に保存し、NFC(近距離無線通信)やMST(Magnetic Secure Transmission)(磁気セキュア伝送)などのテクノロジーを用いて店舗での非接触決済を(コンタクトレスペイメント)を可能にするほか、オンライン決済やアプリ内決済にも対応しており、利便性の高さから欧米を中心に急速に普及している。
欧米におけるデバイスベンダー系電子財布(E-wallets)の主要なテクノロジー
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