2019年9月25日8:05
カンムは、2019年10月の消費増税とともに開始する「キャッシュレス・消費者還元事業」をテーマに、記者向けの勉強会を2019年8月27日に開催した。カンム 代表取締役社長 八巻渉氏と、ゲストスピーカーのコイニー 取締役 井尾慎之介氏がキャッシュレス比率についての解説、キャッシュレス事業者の今後の勢力図の変化について展望した。
加盟店側の受け入れ準備が課題
キャッシュレス・消費者還元事業に期待
カンムは、 2011年1月に創業したテクノロジー企業で、クレジットカード加盟店への送客(CLO)サービスを経て2016年に最短1分で発行可能なプリペイドカード「バンドルカード」をリリースしており、すでに専用アプリは通算150万ダウンロードを突破している。一方、コイニーは、店舗のキャッシュレスサービスとして、スマートフォンやタブレットと接続する「Coiney(コイニー)」を提供している。クレジットカード、電子マネーに加え、QRコード決済にも対応可能だ。
政府が実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」での「キャッシュレス決済事業者」のうち、発行事業者(イシュア)のA型にカンム、加盟店支援事業者(アクワイアラ)のB型にコイニーが登録している。バンドルカードの場合、カード利用者が事業参加店舗で決済を行うと、決済額 30万円(月)のうち最大1.5万円が還元される。また、同事業でコイニーの決済端末を導入する一般の中小・小規模事業者では、決済端末が無料となり、また、決済手数料は実質2.16%(通常Visa、Mastercard、電子マネーは3.24%)で利用可能だ。
勉強会では、国内のキャッシュレス比率について説明した。キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2019」では、国内のキャッシュレス化比率は20%程となっているが、法人間決済か個人による支払い化を判別できないため、銀行同士のやりとりは除外されている。また、母数には持ち家帰属家賃が含まれているが、これを分母から除外するとキャッシュレス化比率は26.2%まで上がるため、「ここからのスタートとなると(政府が目標としている2025年に40%は)案外いけそうな気もします」と井尾氏は話す。
また、日本のクレジットカード発行枚数は約2億7,500万枚で、成人一人当たり3枚程度保有している計算だ。そのため、消費者側の支払い準備はできているが、加盟店側の受け入れ準備が課題であるとした。加盟店での導入を阻む理由として、井尾氏は決済手数料と入金までのキャッシュサイクルを挙げるが、今回のキャッシュレス・消費者還元事業で解消に向かう可能性があるという。八巻氏も、「加盟店は今回おおいに広がりそう」と話す。
今後もクレジットカード中心の勢力?
QRは割引以外のユースケース開発が鍵
また、これまでクレジットカードが中心だった事業者の勢力図がQRコード決済事業者の登場により変化するか、という議論も行われた。現状、キャッシュレス決済の母数のうち90%以上がクレジットカード決済であり、電子マネーが6兆円ほどの市場規模となっている。
今後もクレジットカードが中心となる傾向は「あまり変わらない」と八巻氏は予測。その理由として、ポイントなどのインセンティブを与えてユーザーを集める以外に、QRコード決済活用の方法論を見つけることができていないことを挙げた。インセンティブに興味を示す人は一定数いるが、マスに広がるサービスとなるには、それ以外の付加価値を見出すことが重要だとしたうえで、「ユースケースが開発されない限り、毎年1%ずつ伸びる程度」と八巻氏は語った。