2012年11月26日8:00
今、あえてDMを送る。
デジタル時代における紙DMの存在意義を考える
総 論: “リアル”ならではの特性を生かすことが効果の最大化につながる
紙DMは弱点もあるが、デジタル・メディアにはない良さも数多く有している。これらの優位点を生かした紙DMの有効活用は、デジタル時代のコミュニケーションに大きなインパクトを与える可能性を持っていると言えるだろう。
インターネットの普及により紙DMは駆逐される?
インターネットの普及により、One to Oneプロモーションの多くがインターネット上で展開されるようになった今、紙DMは「古めかしい」メディアとして位置付けられ、その存在意義には疑問符が投げ掛けられている。
例えば、(株)電通が毎年発表している「日本の広告費」によれば、2011年に「DM」に投じられた広告費は前年比96.0%の3,910億円。ここ数年は漸減傾向が続いており、ついに4,000億円を下回ってしまった。昨今のスマートフォンの普及状況などを考えると、今後、企業と生活者のOne to Oneコミュニケーションの舞台は、これまで以上にインターネット上へと移行していくと推定されることから、紙DMの活用が大きく増加することは考えにくい。
確かにプロモーション・ツールとしての紙DMには、eDMと比較して弱点が多い。
最大の弱点は、絶対的なコストの高さである。紙DMでは制作費に加えて印刷費がかかる上、メッセージの送達コストに目を向けても、eDMの1通当たりの配信費用が限りなくゼロに近いのに対し、紙DMでは広告郵便の割引制度などを活用しても1通当たり数十円は免れない。
また、印刷、配送という工程をたどる紙DMでは、eDMと比較して長い準備期間が必要となり、制作途上でのフレキシブルな変更も行いにくい。
さらに、往復ハガキなどを除けば、単体での双方向性にも欠け、インタラクティブなコミュニケーションを実現するためにはほかのメディアとの連携が必須となる。
それでは紙DMは絶滅してしまうのか。その答えは“否”である。紙DMにはeDMにはないさまざまな優位点があり、それらはデジタル時代だからこそ、一層の特異性を発揮できる。従って、紙DMはOne to Oneプロモーションにおいて主役の座を取り戻すことはできないまでも、脇を固める“渋い”ベテランの地位を確立することが十分に可能なはずだ。今回の特集では、紙DMの効果的な活用に取り組む企業のケーススタディを中心に、紙DM活用の現状を検証するとともに、その将来的な方向性を探った。