2020年12月22日20:51
ジェーシービー(JCB)とLayerXは、複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラに関する共同研究の開始について合意したと発表した。同共同研究を通じて、プライバシーに配慮した利用者主体の商流情報の流通を実現し、それらを活用した高度なサービスを可能にするデジタルサプライチェーン構築に向けた取り組みを推進していくそうだ。
昨今、 急速にデジタル化が進展する中で、 中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)をはじめとしたデジタル通貨による決済プラットフォーム構築に向けた動きが活発化している。デジタル通貨の利点の1つは、お金にさまざまな機能やロジックを付加することができるため、決済の自動化・即時化が容易になることだという。こうした形態のお金は「プログラマブルマネー」と呼ばれ、契約、請求、支払いといった一連のオペレーションをデジタル化、効率化さらには自動執行することが期待されている。
同共同研究ではオペレーションの効率化に留まらず、 JCBならではの強みを生かし、地域金融機関、BtoB決済に関わるソリューションプロバイダー等との協業も視野に入れ、新たなモデルを検討していく。サプライチェーンをまたがるプラットフォームならではの、商流情報を活用した高度なサービスの実現を目指すとしている。
プラットフォームの前提となる業種や業界を超えた取引情報の共有に際しては、 取引情報をブロックチェーン上に記録することで改ざんが困難な確かなデータ流通が可能になる。しかし社会実装に向けてはこれだけでは十分ではなく、データ保護、プライバシーの観点から、取引情報の閲覧権限を主体毎に柔軟に設定可能な仕組みが情報の提供者に求められるとしている。例えば金融機関や会計士等、業務上必要のある事業者には開示する一方で、不必要な事業者には開示しないというようなデータコントロールが考えられる。さらに与信情報の照会・確認等に必要となるデータ演算を、データを秘匿したまま行う高度なプライバシー技術が要求される。
そこで同共同研究では、PCやスマートフォンなどの端末に備えられたプロセッサのセキュリティ機能である「TEE」を応用し、LayerXが開発したソリューション「Anonify」をブロックチェーンと組み合わせた。それにより、取引情報の秘匿性・信頼性を担保し、利用者による開示情報の取捨選択を実現することによって、取引情報プライバシーの確保を図るとしている。
今後デジタルな取引が増えていく中で、「デジタル取引・送金の履歴を蓄積し、必要に応じて取り出して参照できるインフラ」の社会的必要性が高まると想定される。JCBおよびLayerXでは、同取組において注目したビジネス領域における「BtoB決済におけるトランザクションの記録・活用」に加え、「デジタル通貨を用いた国内外送金などの金融取引に関するAML/CFT強化に向けたトランザクション識別と追跡性担保」を可能にする、将来に必要不可欠なインフラへの応用も視野にいれて、研究開発に取り組むという。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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