2021年3月24日8:00
「おかぽんカード」の地盤を引き継ぎキャッシュレス化にも対応
長野県の岡谷商工会議所では2020年4月に「Okaya Pay」の発行・運用を開始した。岡谷スタンプ協同組合が過去50年間運用し、2021年3月で発行を終了するポイントシステム「おかぽんカード」の機能を引き継ぎ、新たに電子マネー機能を搭載。通常の買い物で貯まるポイントのほかに、岡谷市が健康診断の利用などで、岡谷商工会議所が飲食店支援策としてテイクアウトの利用などで付与するポイントもある。マイナポイントが追い風となり電子マネーによるキャッシュレス決済の利用も好調に推移している。
地域スタンプの機能を継承
プリペイドサービス活用
長野県岡谷市の岡谷商工会議所では、2020年4月1日より、電子マネー機能とポイント機能を搭載した「Okaya Pay」の発行・運用を開始した。
岡谷市では50年前から岡谷スタンプ協同組合が地域ポイント「おかぽんポイント」を発行してきた。スタンプシールの形態から始まり、カード形式に移行。直近ではポイント残高などが表面に印字されるリライトカードの「おかぽんカード」として運用されており、約2万人のアクティブユーザーが存在しているが、2021年3月末日をもって発行を終了する。
岡谷商工会議所は2018年1月、岡谷スタンプ協同組合から要望書を受け取った。その内容は、地域スタンプの機能を残しながら、時代の流れであるキャッシュレス化にも対応できる仕組みの構築を、地域一丸となって検討してほしいというものだった。岡谷商工会議所ではこれをきっかけに、新サービス開発の検討を開始し、2019年3月にプリペイドサービスを活用したシステムの導入を決定。同年10月のキャッシュレス・消費者還元事業開始に間に合うようにと準備を進めていたが、決済端末納入の目途が立たないなどさまざまな困難に見舞われ、予定より半年遅れてのスタートとなった。
2020年4月1日の「Okaya Pay」サービス開始から2021年3月末日までの1年間は、「おかぽんカード」との並走期間とした。この間の2020年12月時点で、「おかぽんカード」加盟店約70店舗のうち40店舗強が「Okaya Pay」に移行。新規開拓と合わせて「Okaya Pay」の取扱店数は約75店舗となっている。ほとんどが個店で、業種内訳では食料品店25%、レストラン25%、ドラッグストア・化粧品店15%、衣料品・服飾雑貨店10%、その他専門店が25%といったところだ。
カード発行枚数は、2021年1月時点で2,501枚。月300~400枚ペースで増加している。
地域と生活に密着したサービスを意識
マイナポイントも追い風に
「Okaya Pay」は取扱店の店頭で現金をチャージして電子マネーとして利用できるほか、ポイントカードとしても利用が可能。100円(税別)につき1ポイントが付与され、1ポイント=1円として取扱店での買い物に使える。カードの発行手数料は無料。チャージ残高の有効期限は最終利用日から3年。ポイントの有効期限は最終利用日から1年。チャージ金額やポイントの残高は券面には印字されないが、支払い時のレシートや取扱店店頭で確認できる。
また「Okaya Pay」では、買い物金額に応じて取扱店が発行するポイントのほかに、地域ポイントとして、岡谷市や岡谷商工会議所が発行するポイントを取得できるのが大きな特徴だ。例えば、子どもが生まれたときに5,000ポイント、市主催の講座を受講すると200ポイント、健康診断を受けると100ポイントなどが岡谷市から付与される。岡谷商工会議所では、飲食店支援策として、飲食店2店舗でテイクアウトを利用した人に500ポイントをプレゼントするキャンペーンなどを実施している。このような生活に密着したサービスを通じて地域住民に「Okaya Pay」の利用価値を実感してもらうことで、利用拡大を図っていく。
キャッシュレス化に関しては、「2020年9月のマイナポイント開始がきっかけとなって、電子マネーの利用が進んでいます。チャージ額が跳ね上がり、同時に利用額も増えました」(岡谷商工会議所 中小企業相談所 指導振興課 指導主事 清水千大氏)。マイナンバーカードは所持しているがキャッシュレス決済は経験したことがなかったという高齢層が、思い切って電子マネー決済にトライするケースも増えているようだ。
清水氏は「早々に『Okaya Pay』の取扱店数を100まで拡大したい」と抱負を語る。あくまで地元の住民・企業にメリットをもたらすツールというスタンスを守りながら、機能や使い勝手の改善を1つ1つ前に進めていきたい考えだ。
※カード決済&リテールサービスの強化書2021より