福岡市で日本初、Visaのタッチ決済とデジタル企画切符を紐づけた実証実験スタート

2021年4月21日8:30

 タッチポイントでの行動データをマーケティングに活かす

福岡市交通局では、2021年4月16日から8月15日まで、Visaのタッチ決済を活用した「天神・博多間1日フリーきっぷ」の販売および地下鉄乗車の実証実験を行っている。利用者は、対象の駅などに設置されているNFCステッカーやQRコードにスマホをかざして購入サイトにアクセスし、切符を購入。地下鉄改札窓口の専用リーダに、タッチ決済対応のVisaカードもしくは切符販売サイトに表示されるQRコードをかざして、地下鉄に乗車。同様の手順で、周辺施設で割引などの特典を受けることもできる。福岡市の地下鉄は、IC定期券を含めてすでに約85%の乗車客がキャッシュレスで利用しているが、アフターコロナのインバウンド復活など先を見据えて、最先端技術の本格導入に備える構えだ。

Visaのタッチ決済対応カードを改札窓口の専用リーダーにかざすと乗車可能(博多駅)※画像はすべて福岡市交通局提供

「天神・博多間1日フリーきっぷ」を8月15日まで販売
ポスターのNFCタグから利用を促す

福岡市交通局が運営する福岡市地下鉄では、4月16日から「天神・博多間1日フリーきっぷ」の販売を開始した。この取り組みは、福岡市と福岡地域戦略推進協議会が推進している「福岡市実証実験フルサポート事業」の一環。「天神・博多間1日フリーきっぷ」は、Visaタッチ決済を活用した切符販売、地下鉄乗車の実証実験として、8月15日まで販売される。Visaのタッチ決済と、デジタル企画切符を紐づける展開は、日本初の試みである。

改札窓口に設置されたVisaのタッチ決済の専用リーダー(上)とQRコードリーダー(下)。改札入口と出口に設置

今回の実証実験において「天神・博多間1日フリーきっぷ」を利用するには、まず、対象の駅などに貼られているポスターに添付されたNFCタグやQRコードに、スマホをかざし、購入サイトに遷移して、必要事項を入力した上で、Visaカードで決済して切符を購入する。そして地下鉄改札口に設置されている専用リーダに、切符購入に使用したVisaのタッチ決済対応カード、もしくは、専用販売サイトに表示されるQRコードをかざして入場・出場。同様の手順で、周辺の施設で割引などの特典を受けることもできる。「天神・博多間1日フリーきっぷ」は大人500円、小児250円。有効期限は、アクティベートした当日の終電となっている。

ポスターのNFCシールにスマホをかざす(上)と購入ページに遷移(下)

今回の実証実験は、福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)が実施する、AIやIoT等の先端技術を活用した社会課題の解決等に繋がる実証実験プロジェクト「福岡市実証実験フルサポート事業」の一環で、三井住友カード㈱を代表企業とする事業者による本プロジェクトは、「地下鉄の特定エリア1日乗り放題企画きっぷのモバイル乗車券や非接触決済を活用した、新たな乗車券販売方法の検討に資するプロジェクト」に採択された3件のうちの1件である。参画する各社の役割として、三井住友カードがキャッシュレス導入支援、およびsteraプラットフォーム提供、アクアビットスパイラルズがNFCタグソリューション提供、およびきっぷ販売サイト提供、QUADRACが交通事業者向け決済および認証に関するSaaS型プラットフォーム「Q-move」の提供、凸版印刷が認知プロモーション告知物制作、ビザ・ワールドワイド・ジャパンがVisaのタッチ決済に関するソリューション提供認知プロモーション、福岡銀行が認知プロモーション、GMOペイメントゲートウェイがセキュア決済システム提供、GMOフィナンシャルゲートが加盟店システムネットワーク提供となる。

1日乗車券の購入内容画面

福岡市地下鉄のキャッシュレス比率は約85%
アフターコロナのインバウンド需要を視野に

令和元年度のデータによると、福岡市地下鉄の乗車客の約5割は、ICカード定期券の利用客。残り5割のうちの7割も、ICカード「はやかけん」をはじめとするICカード利用客であり、キャッシュレス比率は約85%になる。現在はコロナ禍でほぼゼロに近いインバウンド観光客に関しても、利用の多い1日乗車券は、お客様サービスセンターでクレジットカードやQRコード決済などで購入することもできるなど、現状でもキャッシュレス決済のニーズには応えられているように見えるが、それでもなお、タッチ決済の導入を検討する意義はあると福岡市は見ている。

「日本人なら、Suicaなど全国相互利用ができる交通系ICカードを1枚持っていれば、国内の多くの都市内公共交通による移動に支障はありません。しかし観光などで短期間日本を訪れる外国人にとって、わざわざSuicaやはやかけんを作るのは面倒。日本円がなくても、自国で使い慣れているクレジットカードで日本国内を移動できるようになれば、外国人観光客の利便性を大きく向上できると考えています」(福岡市交通局 マーケティング推進室長 稲田剛氏)。券売機のボタンに触れなくても切符が買えることで、安全性も高まる。見据えているのはアフターコロナのインバウンド需要だ。市内在住の外国人の意見なども積極的に収集して、将来のインバウンド対応に活かしたいとしている。

天神・博多間のフリーパスのニーズを把握へ
決済手段のメリット、周辺施設の特典付与を検証

福岡市交通局では今、地下鉄七隈線の終点を天神から博多まで引き延ばす延伸事業を進めている。今回の実証実験の目的の1つは、天神・博多間のフリーパスにどれだけのニーズがあるかを把握することだ。

目的の2つ目は、クレジットカードやスマホを用いた非接触決済という新しい決済手段のメリット、デメリットを検証すること。3つ目は、同じ手段を用いて周辺施設での特典付与をスムーズに行えるかどうかを検証することである。割引などの特典を提供する施設の一部にも、NFCタグを貼ったプレート等を設置している。

対象の駅などに貼られているポスター。NFCタグのシールも添付

アンケートなどにより、利用客のニーズも収集
データを市のサービスに生かし、地域活性化に貢献へ

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