2022年6月3日13:20
Mastercard Economics Instituteは、旅行に関する最新の調査「Travel 2022: Trends and Transitions」を発表した。これによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響による波乱の二年を経て初めて、世界のレジャーおよびビジネス目的のフライト予約がCOVID-19パンデミック前の水準を超え、クルーズ、バス、鉄道への支出は今年に入り大幅に改善し、世界の旅需要の回復が重要な節目に到達したことが明らかになった。 アジア太平洋地域の9つの市場を含む世界37カ国を対象にした同調査は、ワクチン接種後に制限が緩和されたCOVID-19パンデミック時代における世界の旅行事情に関する重要な洞察を提供しているそうだ。
同調査は、世界の旅行の現状を、パンデミック前の2019年の水準と、入国制限が緩和され始め、ほとんどの地域で海外旅行が再開された時期の2つの変曲点と比較している。
また同調査では、公開されている旅行データ、およびMastercardネットワークにおける販売活動の集計と匿名化という独自の分析に基づいて、旅行者の旅の主要な要素を掘り下げている。これらの要素から、旅行の回復を後押しする追い風、旅行関連の購入を決定する際の消費者の考慮事項、旅行の回復に影響を与える可能性のあるインフレ、ハイブリッドワーク、医療リスク、地政学的混乱などのマクロ経済動向について解説している。
アジア太平洋地域の2022年4月までの主な調査結果として、フライト予約の傾向が現在のペースで推移した場合、アジア太平洋地域のフライト利用者は昨年に比べて4億3千万人増加すると推定される。北アジアや中国本土の市場がまだ入国制限を緩和していないにもかかわらず、この地域の旅行見通しは楽観的であり、この傾向は地域全体のみならず世界中でみられるものと思われるとしている。
また、アジア太平洋地域の渡航と入国制限の緩和により、インバウンドとアウトバウンドの両方で旅行への需要が急増し始めている。これは地域全体の傾向として、消費者が自粛中に貯めたとされる余剰貯蓄を旅行資金にあてていることによるものであると示されている。
例えば、2022年にオーストラリアで国境が開かれ、急に旅行ができるようになった結果、オーストラリアからインドネシアへのフライト予約は2022年に約200%急増し、米国へのフライトは2倍以上になった。
また、世界的に、1年の大半で海外旅行者は旅行先でモノよりも体験にお金を使うことが多くなっているが、この傾向はアジアでも見られ、特にシンガポールでは、外国人観光客は体験への支出が世界的にも高く、2022年3月までにパンデミック前の水準から60%増加した。一方で、その他のアジアの地域では、2022年4月に国境が開通したインドネシアや韓国においてもインバウンド観光客の数が少なく、異なった状況が混在していることが明らかになった。
さらに、モノから体験への移行に加え、旅行者の訪問先の選定に影響を与える可能性がある新たな要素としてインフレが影響していることが明らかになった。例えば日米間では、米国連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切る一方、日本銀行は利上げを見送り、円安ドル高が進行した。その結果、パンデミック前の100ドルの購買力は、2022年には日本で約17ドル上昇し、外国人観光客にとって大きなメリットとなる可能性がでてきた。
今後、アジア太平洋地域での渡航制限が徐々に解除され、観光客が旅先で消費をするようになることで、今後の動向が重要な注目点となっています。
さらに、パンデミック発生以降、煩雑な入国・検疫要件、渡航制限、検査手続きなどが生じ、 入国が簡便な渡航先が好まれる傾向が明らかになった。そのため、アジア太平洋地域の旅行者の間では、米国が依然として最も人気があり、オーストラリア、シンガポール、英国、カナダがそれに続いている。しかし、今後制限が緩和され、国内旅行が再び盛んになるにつれて、アジア太平洋地域内の旅行の人気が増すと推測されるとしている。
パンデミックに端を発した旅行需要の減少は、航空会社や運輸業界全般の運営コストを拡大させ、その結果、アジア太平洋地域の旅行者が支払う運賃は世界的に見ても高騰している。アジア太平洋地域の平均航空運賃は、オーストラリアでは約11%、シンガポールでは約27%上回るなど、依然として高い水準だが、これは航空輸送の人材不足など、地域全体における企業の雇用がパンデミック前の水準を下回っていることが原因だ。
パンデミック時に移動手段として国内交通機関、特に自動車に頼る人が増え、レンタカーや通行料への支出は過去2年間を通じて一貫して2019年の水準を上回った。ドライブ旅が人気の多くのアジア太平洋地域で、国内旅行に対して旺盛な需要が見られた。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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