2022年12月23日7:42
Mastercard Economics Institute(Mastercard 経済研究所)は、新たなマルチスピードの世界経済が成長や消費行動にどのような影響を及ぼすかを示す、来年の世界経済の見通しに関するレポート、Economic Outlook 2023を発表した。
同レポートは、幅広い公的統計および独自のデータと、経済活動を予測する経済モデルを用いて、世界経済に影響を及ぼす4つのテーマ、すなわち、高金利と住宅市場、消費者の節約行動であるトレードダウン(格下げ商品の選択)とショップアラウンド(商品の価格比較・検討購入)、価格と嗜好、経済ショックとオムニチャネル(店舗、ECサイト、メルマガ、テレアポ、SNS等すべての販売経路)について明らかにしている。
主な調査として、主要先進国では、住宅関連支出の割合が2023年にかけて推定4.5%減少し、コロナ禍前の水準を下回ると予想される。日本では、住宅ローン負担が可処分所得に占める割合は70.8%となっている。100未満という数字は、日本の家計が住宅ローンの負債に対して大きなリスクを抱えていないことを意味し、86.2%のシンガポールと比較して低リスクとなっている。最も割合が高いのはデンマーク(可処分所得の205.5%)で、住宅ローンの負債によって家計が過剰債務に陥るリスクが高くなっているそうだ。
また、2019年と比較して世界の消費者は今年、食料品を買うために、31%多く店に足を運び(食品廃棄物を減らす目的も含まれる)、1回あたりの平均支出はおよそ9%低くなっている。
2019年から2022年にかけて、高所得層の裁量的支出は低所得世帯の2倍近い速度で伸びていることが分かったという。しかし、この格差は、インフレの正常化によって減少すると見られる。Mastercard Economics Instituteは、来年はインフレ圧力が緩和され、先進国経済の平均インフレ率は2022年第4四半期の前年同期比7.1%から、2023年第4四半期には前年同期比3.1%に低下すると予想している。旅行、ホスピタリティサービス、体験が消費者支出全体に占める割合が引き続き上昇し、高額耐久財の割合は減少すると予想される。2022年後半の北東アジアの国境規制緩和はこの動きの大きな推進力になると考えられる。
Mastercard Economics Institute の分析によると、マルチチャネルの販売経路は、2022年5の小売業界の売上を6%ポイント押し上げた。大型及び小型レストランは、オムニチャネルの導入によって、ロックダウンの最盛期にさらに売り上げの31%を失わずに済んだ。同様に、オムニチャネルを利用する小規模の衣料品店は、オンラインのみの企業や実店舗のみの企業と比較し、それぞれ10%と26%の成長を遂げたという。