ネット銀行やIT企業と組み新規客開拓狙う百貨店。アプリ活用やポイント施策でLTV向上にも注力(EC NOW)

2022年11月2日8:45

百貨店がネット銀行やIT企業と組んだりアプリを利用したりという施策を通じ、金融・ポイントサービスによる顧客の取り込みを強化している。これまでは会員組織や自社クレジットカードといった百貨店特有のサービスを中心に展開してきたが、昨今は異業種とのコラボやアプリを用いての新規客開拓をはじめ、顧客のLTV向上に注力。若い世代の獲得も目指し、従来の枠を超えた取り組みに乗り出している。

通販研究所 渡辺友絵

記事のポイント!
①高島屋は「髙島屋ネオバンク」をスタート
②12カ月積み立てると1カ月月分のボーナスの「スゴ積み」
③タカシマヤクレジットカードで貯まったポイントで投資信託が購入可能に
④これまで縁が薄かった次世代顧客獲得へ
⑤東急百貨店は「楽天ポイント(オンライン)」導入

⑥ECサイトの売り上げ増に効果を発揮
⑦三越伊勢丹は「三越伊勢丹・カスタマープログラム」を変更
⑧アプリを介した現金や一般クレカ決済もポイント対象に
⑨顧客層拡大やLTV向上につなげる狙い
⑩「エムアイカード・アプリ会員の拡大」「生涯“個”客化」を強化へ
⑪次世代顧客層の開拓は待ったなし
⑫発想の転換こそが今後の事業成長には必要

■高島屋は銀行機能やポイント投資などの金融サービスに着手

高島屋は百貨店という老舗の殻を破り、金融事業やポイント投資に力を入れ始めた。2022年6月から、住信 SBI ネット銀行が提供する「NEOBANK」を活用した新しい金融サービス「髙島屋ネオバンク」をスタート。髙島屋グループが提供する商品やサービスに銀行機能も加えることで、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)最大化を図る。

「髙島屋ネオバンク」はスマホ上で口座開設から銀行取引まで完結するもので、髙島屋顧客に向けた住信 SBI ネット銀行専用支店という位置づけとなる。専用アプリをダウンロードし口座を開設することにより、住信 SBI ネット銀行が提供する預金や決済、融資といった銀行機能を利用できる。生体認証による高度なセキュリティで保護され、セブン銀行やローソン銀行のATMで月5回まで無料引き出しが可能だ。

目玉サービスは、アプリで毎月一定額を12カ月積み立てると1カ月月分のボーナスをプラスした金額の買物ができる「スゴ積み」。満期後は、国内の髙島屋店舗や髙島屋オンラインストアでの買物に使える。例えば最高額の「10万円コース」を積み立てると、総額130万円分が高島屋で使える「買物残高」としてチャージされる。

さらに9月には、SBI証券と組んで子会社の髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ(TFP)を通じ、タカシマヤクレジットカードで貯まったポイントで投資信託が購入できるサービスを開始。TFPはすでに2020年からSBI 証券と提携して「タカシマヤの投資信託」などを提供していたが、新サービスではタカシマヤカードによる買い物と投資で貯まったポイントを投資信託の購入に使えるようになった。

例えばタカシマヤカードを使って髙島屋で 10 万円の買い物をすると、8%の基本ポイント率で8,000ポイントが貯まり、還元により4,000 円分の投資信託を購入できる。ポイント投資で使うポイント数には上限がないため、資産づくりに役立つ可能性もありそうだ。

アプリを通じた金融サービスやポイント投資は、20~30代の若年層に人気がある。満期時の年利換算が破格となるお得な「スゴ積み」もフックに、これまで縁が薄かった次世代顧客の呼び込みにつなげる。

アプリで銀行機能やお得な積立サービスを提供(出典:高島屋)

■楽天ポイントをECサイトにも導入した東急百貨店

東急百貨店は2022年10月から、楽天以外のECサイトでもポイント連携ができる「楽天ポイント(オンライン)」の導入を開始した。同サービスは百貨店のECサイトでは初めてとなる。ユーザーは「東急百貨店ネットショッピング」サイトに会員登録し楽天 ID と連携することにより、200円(税抜)につき1ポイントの楽天ポイントを貯めることができる。また、1ポイント1円で同サイトでの買い物も可能になる。

同社はすでに2019年から各店舗に「楽天ポイントカード」を導入していて、自社ECサイトでも楽天ポイントを利用できるようにすることで顧客サービス向上につなげる。10月半ばからはおせちや歳暮、クリスマスなど百貨店では重要な年末商戦が控えており、楽天ポイントの導入はECサイトの売り上げ増に効果を発揮しそうだ。

楽天ポイントが利用できることをアピールする東急百貨店のECサイト(出典:東急百貨店)

■三越伊勢丹は自社アプリを通じたインセンティブ提供を強化

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