2022年12月8日8:00
■決済・カードビジネス直球インタビュー
コロナ禍においても順調に業績を伸ばし続けているソニー銀行。代表取締役社長 南啓二氏に、成長の秘訣と、今後の事業展開の方向性について話を聞いた。
記事のポイント!
①強みはヒューマンタッチを大切にしているところ
②「Sony Bank WALLET」で他行との差別化を図る
③重視すべき指標は「数より質」
④各取引で高い顧客満足度を獲得することに注力
⑤今後、決済手数料収益はさらに厳しくなる?
⑥Apple Payとの連携にも意欲的
⑦次世代の基幹系システムの構築へ
⑧ソニーグループが注力するメタバースでも重要な役割を担いたい
ヒューマンタッチ重視の戦略を掲げる
3年連続 顧客満足度NO.1を達成
ソニー銀行の業績が好調だ。2022年3月期の連結決算の経常収益は、前年度比16.0%増の612億円。経常利益は前年度比48.8%増の168億円。主力商品の住宅ローンが依然堅調に推移し、貸出金残高が年度末で2兆6,232億円まで積み上がったことにともなう貸出金利息の増加と、有価証券売却益の増加が、収益、利益を押し上げている大きな要因だ。
また、同行は、J.D.パワーの個人資産運用顧客満足度調査のネット銀行部門で、3年連続で1位を受賞。2022年調査では「口座情報」「顧客対応」の2項目で最高評価を得た。顧客対応では、たとえば住宅ローンでは専任ローンアドバイザーが本審査から借り入れまでを、電話とメールでサポート。土日祝日も対応し、オンラインおよび来店での相談窓口も用意している。
南氏は、「ソニー銀行の強みは、インターネット銀行でありながらヒューマンタッチを大切にしているところ」と言い切る。「インターネットバンキングの最大の利点である“簡単・便利”と、ヒューマンタッチの掛け算、――つまり“テクノロジー”と“人”の掛け算で勝負に挑んでいるわけですが、最適解を導くための“さじ加減”が難しい。われわれがベンチマークにしているのは顧客満足度です。お客様が評価してくださっているということは、われわれの“さじ加減”が間違っていないことの証左なのだと解釈しています」(南氏)。
「Sony Bank WALLET」が好調に推移
外貨預金と組み合わせた商品性で差別化
貸出金残高の伸びに加えて、預かり資産残高の推移も好調だ。円預金は口座数の増加など新規資金の獲得により、前年度より3,591億円増の2兆7,134億円。外貨預金は米ドル中心に売却が進んだことによりやや減少して4,577億円となったものの、投資信託は堅調に伸びて1,745億円となり、全体では前年度から3,661億円アップの3兆3,457億円であった。
口座数は前年度末から8万件増え、166万件に。累計では「Sony Bank WALLET」の発行枚数は100万枚を超えた。「Sony Bank WALLET」はVisaデビット付きキャッシュカードで、デビットカードとして国内・海外のVisa加盟店でショッピングに利用できる。貯めた外貨を、外貨のまま海外のATMで引き出すことも可能。海外旅行先や出張先、留学先などでの利用を想定して開発された商品だ。Visaのタッチ決済が使え、Google Payに登録すればスマホをタッチして支払いを行うこともできる。
「Sony Bank WALLET」には各種提携カードがあり、髙島屋との提携カードは高額商品を購入する富裕層、ANAとの提携カードは出張の多いビジネスパーソンや旅行好きの顧客層などがターゲット。最近では、Sony Interactive Entertainmentと提携したPlayStationデザインカードの新規獲得が好調だ。
コロナ禍で海外渡航が激減したためここ数年プロモーションを控えていたが、外貨預金と組み合わせた「Sony Bank WALLET」は他行との差別化を図れる特徴ある商品であり、収益性も見込める。国内コンビニなどでじわじわと利用が増えていることに手応えを感じ、渡航制限が緩和された今、同行では海外での利用促進のプロモーションを強化したい考えである。
使われないカードを発行しても意味がない
発行枚数✕利用額の最大化を目指す
南氏は銀行が重視すべき指標は「数より質」だと強調する。「目標は、発行枚数✕利用額の最大化。使っていただけないカードを発行しても意味がない。それどころか収益を圧迫する要因になる。リアルの世界では発行すれば使われるという仮説で発行枚数を追い続けた経験もありますが、ネット時代にはその仮説は成り立ちません。使われる可能性が高いところで枚数を増やす施策をとるのは良いですが、ただ枚数を追うつもりはまったくありません」(南氏)。「Sony Bank WALLET」は国内のVisaブランドのデビットカードの評価において、トップの指標となっているそうだ。
ビジネスの方向性について南氏は、「お客様のニーズに自社ですべて応えることは所詮、無理なことだと考えています。闇雲にお客様を獲得して、優位性のない商品で場当たり的に収益を得ても、お客様の満足は得られません。それよりも、優位性のある商品をきちんと提供して、ほかは他社さんにお任せしたほうがいいのではないか。将来を見据えて守備範囲は広げていくけれども、基本的に、自社がやるべき領分でしっかり勝負する姿勢が大切だと考えています」と語る。
お客様目線に立つと、日常、非日常のポイントで、ニーズにきっちり合った商品・サービスが提供されることが最も重要だ。「一度取引が成立すれば、次もまた同じところと取引してくれるというのは金融機関の幻想にすぎない。お客様はそのとき、そのときで、自分にとっていちばん好都合なサービスを選択される。そんなことは当たり前。しかもお客様は、ネットで多くの知識を得て、選択眼が鋭くなっている。われわれができるのは、スポット、スポットで、そのお客様にとっていちばん良いものを提供することだけです」(南氏)。あくまで、ひとつひとつの取引で高い顧客満足度を獲得することに注力しているという。
AWSを活用した次世代システムを構築
ソニーグループとしての次なる展開は?
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