福利厚生サービスが従業員の賃上げにつながる? 「チケットレストラン」導入加速

2024年2月8日8:00

福利厚生の食事補助サービス「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンと、借上げ社宅など福利厚生制度を効率的に行えるクラウドサービス「freee福利厚生」を展開するフリーは、“実質手取りを増やす”ことが可能な福利厚生サービスを「第3の賃上げ」と定義し、より多くの企業に「第3の賃上げ」が広がること、そして福利厚生の導入を通してより働きやすく、高いエンゲージメントで社員とつながる企業が社会に広がることを目指し、「# 第3の賃上げアクション」を2024年2月6日より始動した。

左からハートコーポレーション 常務取締役 岡嵜 将志氏、YOUTRUST 経営企画部 人事労務G リーダー 加藤 マキ氏、フリー HR事業部 社宅事業責任者 相澤 茂氏、エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野 総太郎氏、エデンレッドジャパン マーケティング&コミュニケーション 部長 今 新之助氏、アイシーティーリンク取締役副社長 吉野 真吾氏

企業が直面する厳しい経営課題
実質賃金は20か月連続でマイナス

2024年2025年、2040年問題があるように、人手不足が深刻となっている。メンバーズ型、ジョブ型と雇用形態が変わったことにより、人材流出が高い推移で進行している。このような要因から日本社会は未曾有の採用難だ。また、日本の社会はデフレ社会となっている。生産性の課題に加え、コロナ禍によって企業と社員のつながりが希薄になり、ロシアのウクライナ侵攻に発する物価の上昇、原材料費の高騰など、企業の直年する経営課題が多岐にわたっている。そのような中で課題となるのは、どのように賃上げを行うかだ。昨年の賃上げ率は3.58%と過去30年で最も高い水準だったが、実質賃金は結果的に20カ月連続でのマイナスとなった。デフレを脱却したい政府は昨年を上回る賃上げを経済界に要請しており、経済界も前向きに取り組んでいる。とは言いつつも、日本経済の今後の先行きの不透明感に不安を持っており、過度の賃上げは今後リスクを生じる可能性があるため、慎重に考えているそうだ。

東京商工リサーチが行った賃上げに関するアンケートによると、2024年の賃上げが「2023年を超えそう」と回答した企業は1割にとどまった。また、中小企業の「賃上げできそうにない」は、大企業の約2倍となった。

手取りが増える福利厚生の低い認知度
「第3の賃上げ」を広げる

福利厚生サービスは近年まで大企業で働く人々に対するサービスが中心だった。企業が福利厚生を社員に提供する形から、社員が福利厚生を選ぶ形となり、選択と集中が進んでいる。一方で中堅・中小企業では深刻な人手不足のため、積極的・戦略的に福利厚生を導入しているという。そのメリットは、従業員の満足度向上、企業のイメージアップ、人材確保・定着といったことが挙げられる。エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野 総太郎氏は、「福利厚生を賢く、上手く活用することにより、従業員の方々の手取り増加に貢献することもその背景となり、今特に中小企業の経営者が福利厚生を導入する要因です」と話す。

一方で、給与で還元するよりも「従業員の手取り額が実質的にアップする福利厚生」があることを知っているか?」という質問に対し、実質手取りが増えることを知らないビジネスパーソンが半数以上となった。このような状況から、賃上げがソーシャルイシュー化する中、あまり知られていない福利厚生の賃上げ効果を伝えることは社会的な意義があると考えたそうだ。

フリーと実施する同プロジェクトでは、「# 第3の賃上げアクション」の呼びかけを通じ、スタートアップ企業や中小企業を含めたあらゆる企業に「第3の賃上げ」を広げていくこと、そして福利厚生を通じた働きやすい社会の実現を目指すという。一般的な賃上げには基本給が引き上げられるベースアップがあるが、第3の賃上げは実質手取りを増やすことができる、福利厚生サービスを活用した賃上げのことを指す。

従業員の手取りアップに貢献
導入でエンゲージメントや採用力アップも

なぜ手取りがアップするのか? 福利厚生にかかる費用は、一定の要件を満たせば経費として扱われ、原則非課税となる。そのため、従業員は手取りが増え、企業は節税につながる。賛同企業は現在20社以上で、IT、医療、建設、介護業界などとなる。

「# 第3の賃上げアクション」の活動目的は、2024年春闘において「第3の賃上げ」が賃上げの1つの選択肢となるよう呼びかけ、賛同企業の輪を広げることで、福利厚生により働きやすい社会の実現を目指すそうだ。

これにより、従業員は手取りが増加し、企業は税負担を抑えられ、双方にメリットがある。また、少額でトライできるため、企業規模問わず導入しやすい。さらに、福利厚生は、賃金よりもメッセージ性があり、定着率アップに貢献するそうだ。加えて、福利厚生の充実は、企業のブランディングや他企業との差別化にもつながり、採用力をアップさせることができるという。

例えば、チケットレストランでは、会社が食事補助として半額分を支給するため、上限額内(月7,000円)であれば食事や飲食物が実質半額(負担額月3,500 円)で購入可能だ。つまり、3,500円が非課税となり、給与所得にならない。年間4万2,000円の非課税となり、従業員の手取りアップに貢献できる。

エデンレッドジャパンでは、チケットレストランタッチを先着100社限定で「6か月無料で使える!賃上げ応援キャンペーン」を実施している。

可処分所得を増やす借り上げ社宅制度
従業員はメリットとデメリットがある

一方、フリーでは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げている。法定外福利厚生費には、大企業と中小企業との間で大きな差がある。大企業の法定外福利厚生費は中小企業の1.4 倍、住居に関する法定外福利費は中小企業の1.6 となっている。特に100名未満の企業と比較すると、法定外福利費 2.4 倍、住居に関する法定外福利費は7倍となっている。

厚生労働省によると、法定外福利費の中では、住居に関する費用が占める割合が47.3%と最も大きい。フリーの借り上げ社宅制度は、賃貸物件を法人契約で借りて社員に貸し出す仕組みとなる。物件を所有して社員に貸し出す「社有社宅」と異なり一部屋から契約でき、物件管理は不要だ。

例えば、40万円の給料の人が10万円の賃貸を借りた場合、家賃差引額は30万円となる。これを借り上げ社宅にした場合、家賃の半額の5万円を現物支給し、現金の支払いはそれを差し引いた35万円になる。賃貸では社会保険や課税の対象となる給与が40万円となるが、借り上げ住宅では35万円に下がる。これにより従業員が支払う社会保険料が下がり、その分可処分所得アップにつながる。

メリットの一方で、フリー HR事業部 社宅事業責任者 相澤 茂氏は、「借入の審査への影響」「将来受給する年金が下がる可能性がある」「国からもらえる手当金・給付金が減る場合がある」といったデメリットも指摘した。

フリーの「freee福利厚生」は、「借り上げ社宅制度」の導入から運営までトータルで支援している。企業側の負担を徹底的に抑えた制度導入支援に加え、プロダクトやアウトソースの一体提供モデルとなっている。フリーの100%子会社であるfreee bizが企業の代わりに賃貸借締結業務を代行する仕組みだ。従業員とのやり取りもfreee bizが実施することで、企業は手間のかかる法人契約手続き作業を削減できる特徴がある。

今期、freee福利厚生を導入した企業の検討前の制度認知状況として、導入企業の約8割は同制度をそもそも知らなかったという。そのため、賃上げにもさまざまな選択肢がある事をまずは知ってもらいたいとした。

今回、エデンレッドジャパンとフリーが手を組んだ理由として、実質手取りがアップするという方向が両者一致したからだという。

なお、当日は、アイシーティーリンク取締役副社長 吉野 真吾氏、ハートコーポレーション 常務取締役 岡嵜 将志氏、YOUTRUST 経営企画部 人事労務G リーダー 加藤 マキ氏によるトークセッションを行った。同セッションには、エデンレッドジャパン マーケティング&コミュニケーション 部長 今 新之助氏と相澤氏も参加した。

第3の賃上げの導入後に感じた効果として、回答した約6割が「従業員の満足度・エンゲージメント向上」、 「人材確保、採用時のアピール」を実感したという。また、「賃上げ」と「従業員の手取り額が実質的にアップする福利厚生」のどちらが効果的だと感じるかという質問では、その2つと、両方を実施している比率はほぼ同じ結果となった。

チケットレストランの新規契約などの成長は?
海外で実施するデジタル展開も検討

なお、エデンレッドジャパンは、旧バークレーヴァウチャーズも含め、チケットレストランを35年以上前から提供している。

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