2011年5月12日6:00
決済ライフラインとニューペイメント
☆☆☆ 東日本大地震から学ぶこと ☆☆☆
Disaster Relief Payment
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
●決済もまたライフライン
日本を襲った東日本大地震とそれにつぐ二次災害で、日本国民全員があらためてライフラインについて真剣に考えさせられることとなった。計画停電で電気のありがたみを思い知り、放射能汚染によって水や空気の大切さも痛感した。
このライフラインということばが生活に不可欠なインフラをさすようになったのは、米国でおきたある地震がきっかけだった。
もともとライフラインとは命綱のこと。救命のための浮き輪につながれたヒモや、潜水夫につながれた綱を意味することばである。
命綱が生活に不可欠なインフラをさすようになったのは、1971年ロサンジェルス近郊で発生したサンフェルナンド地震からである。
サンフェルナンド地震と生活インフラについて研究し、UCLAの教授が唱えたのが「ライフライン地震工学」であった。詳細は省くが、電力、ガス、上下水道、通信などの設備やシステムについて地震防災の考え方をまとめたものである。このライフラインがそのまま今日的な使われかたをするようになったのである。
空前絶後の被害をもたらした東日本大地震と原発問題は、電力やガス、上下水道、通信だけでなく、決済もまたライフラインとして考えなければならないことを教えてくれた。被災者が長期にわたり避難生活をしていくためには、商品やサービスを利用する支払手段が不可欠だからである。現金や通帳をもたず、とりあえず着の身着のままで避難した人たちは、決済手段がなければ生きていけない。
●日本復活は21世紀型の決済ライフラインにかかっている
東日本大地震の被災地復興、日本復活を考える際には、ライフラインの再構築をまっさきに考えなければならない。その際、闇雲にもとあった状態にもどすという施策では、おなじことの繰返しになってしまう。
必要なのは、21世紀におけるライフラインのビジョンである。20世紀型のものでは機能しないことが今回の大震災であきらかになった。
たとえに電力でいえば、日本の西と東で違う周波数は20世紀型のなごり。このままでは、災害時の日本の電力供給は追いつかず、経済に深刻な影響をおよぼす。周波数変換装置の開発が検討されているが、これはあくまでも応急処置。将来を考えれば、西の周波数に統一し、20世紀型の原子力発電にかわる新たな電力源を構築すべきことは明白だ。
通信でいえば、地上回線は20世紀型である。21世紀型の通信インフラは無線であろう。地震によって地上回線は寸断されても、無線であれば地震の影響は少ない。万一アンテナが倒壊しても、移動基地局で対応できる。衛星通信のアクセス網の活用や、スマートフォンの無線LANを使ってネットワークを構築することも可能だ。
決済ではどうか。現金に依存する生活は20世紀型(旧来型)である。タンス預金や通帳は、いざというときにはと思っていても、緊急時にもちだす余裕はない。地震や風水害などの災害はおこるもの、という前提にもとづいて、21世紀型の決済ライフラインを検討しなければならない。
日本経済の早期回復と今後の発展を期すためには、21世紀型の決済ライフライン構築が最適解である。戦後、もののない日本で、割賦販売が日本経済を活性化させたように、ニューペイメントが日本経済を上昇気流にのせてくれるはずだ。