2011年6月1日8:45
スマートフォン決済で緊急災害対策
☆☆☆ 東日本大地震から学ぶこと<2> ☆☆☆
Mobile Emergency Payment Initiative
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
●緊急時にすばやく対応するモバイル決済
東日本大地震の被災地では通信というライフラインもまた基地局の倒壊などで機能不全に陥った。しかし、インターネットや携帯電話という通信手段は、被災地の状況や安否の確認、人命救助の手段として活躍した。
インターネットのトラフィックを監視するRenesys社は、マグニチュード9.0という規模にもかかわらず、日本のインターネットインフラはしっかりと稼動しつづけたとレポートしている。日本に6,000あるグローバルルーティングのうち、サービスを一時停止したものはわずか100件だった。しかもその回復はスピーディに進んだ。
TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、被災地の情報、避難情報、安否情報などをリアルタイムで発信できるため、個人も、自治体や政府、そしてメディアもさかんに利用し、その威力を発揮した。特に、インターネットに接続できる多機能電話やスマートフォンは、通信ライフラインとして非常時にも有効に機能することがわかった。
非常時には、なにはなくても携帯電話。ひとり1台、携帯電話を常にもち歩くという習慣が身についている日本国民は、通帳や印鑑などをもたなくても携帯電話だけはつかんで避難する。
固定電話は世帯間の通信だが、携帯電話は個人を特定し、個人にアクセスできる。通話しにくい状態でも、メールで通信できる。位置情報機能がついていれば、個人の所在を知らせることも可能だ。Web機能があれば、TwitterやFacebookで自分の状況を配信でき、お互いに安否を確認することもできる。
これらの機能をすべて備えているのがスマートフォンである。現在における最強の通信ライフラインはスマートフォンだといえよう。このスマートフォンに決済機能をつけることができればどうだろうか。通信ライフラインに加え、日常生活に欠かせない決済ライフラインになる可能性も秘めている。将来の緊急災害対策としてスマートフォンをベースにした決済について考えてみよう。
●携帯電話での給付申請で本人確認も可能
大船渡市は4月27日から災害義援金や被災者生活再建支援制度に基づく支援金、災害弔慰金の申請受付けをはじめている。給付額は25万円から500万円。申請には罹災証明書と振込先の預金通帳かキャッシュカードが必要だ。
被災地の自治体は被災住民の生活をまもろうと不眠不休の活動をしているが、行く手は山また山。着の身着のままでサイフや預金通帳をもたずに避難した被災者は、日常生活に支障をきたしている。
この人たちに当面の生活資金をいかにスピーディに給付するか。今回の大震災で義援金や生活支援金の給付という課題が鮮明になった。
東日本大地震がおきたのは3月11日。自治体での義援金や支援金などの申請受付けや給付は数十日もかかっている。いや、被災者全員に給付されるにはまだ相当時間がかかるようだ。
救援資金申請には本人確認が必要だが、運転免許証や身分証明書を紛失した被災者も多い。避難所では避難所名簿を本人確認の代替としているところもある。救援資金申請には、紙の申請用紙に記入し、本人確認書類などを呈示する。その内容を事務方がチェックするというプロセスには、実に多くの時間と労力がかかる。