COTS普及へ第3幕、 MPoC認証取得が広がる兆し 子機使ったテーブル決済などビジネスシーンに活路

2024年4月25日8:20

COTS(Commercial off-the-shelf)と呼ばれる市販のスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを決済端末として活用するケースが広がりを見せ始めている。PCI SSCが2022年11月にリリースした3つ目のセキュリティ基準である「PCI MPoC」(Mobile Payments on COTS)について、マレーシアのフィンテック企業、Soft Spaceがグローバル認定を取得するなど、普及へ向けた動きが始まっていることが明らかになった。認定取得は他社にも広がるのか。普及を阻む課題は何か。決済技術に詳しいネットムーブ ペイメント事業部長 高田理己氏に最新事情を聞いた。

ネットムーブ ペイメント事業部長 高田理己氏

「CPoC」取得の多数のブランドが更新を保留
「MPoC」認証への移行を進めるとの観測も

PCI SSCは、リーダーでカード情報を読み取ってからCOTSでPINを入力する「PCI SPoC」(Software-Based PIN Entry on COTS)と、アプリケーションをダウンロードしたCOTSのみで非接触決済に対応する「PCI CPoC」(Contactless Payments on COTS)、そして、これらの2つの欠点を補う包括的な仕組みである「PCI MPoC」(Mobile Payments on COTS)というセキュリティ基準を運営している。

「SPoC」は、外付けの専用リーダーでカード情報を読み取った後、専用ソフトウェアをダウンロードしたCOTSデバイスでPIN入力を行う方法。一方「CPoC」は専用リーダー不要で、専用ソフトウェアをダウンロードしたCOTSデバイスのみで決済を完了することができるが、PIN入力はサポートされていない。したがって決済金額に上限があり、高額決済に対応しにくい。また、COTSデバイスのNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)機能を用いてカード情報を読み取るため、接触型ICカードや磁気カードには対応できないというデメリットもある。

「MPoC」は、これらの弱点を補い、「SPoC」と「CPoC」の両方に対応する包括的な基準だ。接触型・非接触型どちらのICカードにも対応でき、これまで個別に取得が必要であった国際ブランドの「PIN on Glass」認証がサポートされることでCOTSデバイス上でのPIN入力も認められる。決済端末やセキュリティビジネスを展開し、国内外の決済セキュリティ事情に詳しいネットムーブの高田氏によると、Soft Spaceが「MPoC」の認定を取得するなど、本格的に「MPoC」取得への動きが進み始めている可能性があるという。さらに、「CPoC」取得のブランドが更新を保留していることから、「MPoC」認証への移行を進めるのではないかとの観測も出ているという。

MPoC認証取得を使いやすい制度に
2台目、3台目の市場から広がる?

ネットムーブは2017年10月に「PCI P2PE ソリューション」および「PCI P2PE コンポーネント」のプロバイダ認定を国内で初めて取得した。キャッシュレス決済サービス「Spayd(スペイド)」や、認証ソリューション「saat(サート)」を提供する一方で、決済センターの運営も行っている。そして、さまざまな角度からペイメント業界をウォッチする中で、「MPoC」を活用したビジネス展開の機会を伺っている。

キャッシュレス決済が多様化し、タッチ決済が普及している中で、多くの加盟店の関心が「MPoC」に向かうことが予測され、ベンダーによる「MPoC」の認証取得は、今年1年で一気に進むと見られている。ただ、中小店舗でキャッシュレス決済を行うために多く活用されているのは、スマートフォンやタブレットを決済端末と連携させるmPOS(モバイルPOS)で、ネットムーブでもMIURA Systems製のmPOS端末を取り扱っており、店舗に買い切りのかたちで提供している。

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