日本のクレジット決済の課題は手数料だけでなく承認率の改善?Adyenが解説

2024年6月14日9:05

Adyen Japanは、2024年5月22日、日本のクレジットカード決済モデルの現状や課題、今後の方向性を解説するメディア向けの勉強会を開催した。同社では、日本のクレジットカード業界の課題は、不正利用等とともに、「決済をコストセンターとしてしか見ていない」と指摘。決済取引の承認率(コンバージョン率)を高めることでプロフィットセンター化させる認識を持つことが重要であると考えており、それに対応したサービスを提供しているそうだ。当日は、Adyen Japan Acquiring シニア・パートナーシップ・マネージャー 三田和弘氏、アカウントマネージメント、チームリード 東隆三氏、シニアセールスマネージャー 浪久敦氏が国内のクレジットカード決済の概要や課題、Adyenの取り組みなどについて紹介した。

右からAdyen Japan Acquiring シニア・パートナーシップ・マネージャー 三田和弘氏、アカウントマネージメント、チームリード 東隆三氏、シニアセールスマネージャー 浪久敦氏、デモを実施したPOSサポートエンジニアリング ユージン アン氏

日本のカード決済の特殊性
不正の増加、世界との比較は?

キャッシュレス決済は現金を使用せずにお金を払うことだ。クレジットカードやデビットカード、電子マネー、コード決済などを定義しており、政府は2019年6月に閣議決定された成長戦略フォローアップにより、2025年までにキャッシュレス決済を4割程度まで引き上げることを目指していた。当時のキャッシュレス比率は2割程度だったが、政府は倍増することを掲げた。マイナポイントやキャッシュレス・ポイント還元事業など、政府が力を入れてキャッシュレスを推進してきた。海外でもさまざまな決済手段があるが、日本は決済手段の量が多く、国際ブランド決済に加え、FeliCa系の電子マネー、コード決済など、さまざまなサービスがしのぎを削っている。

2020年当時は30%程のキャッシュレス比率であり、主要国のなかではドイツに次いで低かった。それが2023年には39.3%となり、1年前倒しで政府が掲げた目標に近づいた。例えば、クレジットの割合をみると2017年の90.2%から2023年は83.5%に落ちているが、決済額は58兆円から105.7兆円と倍近く伸びている。

クレジットカードの取引は、グローバルでは4パーティモデルが基本的な仕組みだ。加盟店、加盟店を管理する会社(アクワイアラ)、国際ブランド、カード発行会社(イシュア)がいる。インターネットの取引では、アクワイアラに取り次ぐ役割として、日本では決済代行会社が存在感を発揮している。なお、日本のクレジットカード会社では、イシュイングに加えてアクワイアリングも同一の会社で行うケースが多く、3パーティモデルが採用されている。

オンラインに加え、オフラインの統合管理がAdyenの強み

日本のクレジットカード決済では、日本独自のボーナス払いに加え、ブラジルなど一部の国に限られる分割払い、米国のクレジットカードで主流なリボ払いがある。また、特徴として、欧州の1%台、米国の2%台に比べて加盟店の手数料率が平均3.25%と高い指摘もある。加盟店とアクワイアラ間の精算は、古いアクワイアラは月2回が標準だというが、海外は4~5日後に払い続けるケースもあるそうだ。

オーソリは、加盟店から決済の情報を加盟店に飛ばし、国際ブランドがスイッチさせて、イシュアに飛ばして戻す流れとなる。その後、加盟店が売り上げデータを作り、国際ブランドからイシュアにわたり、数日後に利用明細に反映される。それと同時にフィーを加盟店はアクワイアラに払い、アクワイアラはブランド、イシュアから国際ブランドに払う流れだ。加盟店、アクワイアラ、イシュアはインターチェンジフィーの差分で収益を上げる。仮に不正があった際、イシュアからチャージバックをすることで、不正の金額が保証される。日本のeコマースの取引については本人認証サービス「EMV 3-Dセキュア」が義務化されるが、導入するとチャージバックができなくなる国際ルールがある。今後の国内の取引では、EMV 3-Dセキュアからオーソリが始まることが基本になる。

日本のカード決済の課題として、2023年の不正利用被害が541億円となったように不正利用が増えている。カードの利用額は伸びているがそれに伴い不正被害が拡大している。特に多いのが「番号盗用」の被害だ。以前は磁気カードのスキミングなどの被害が多かったが、クレジット取引セキュリティ対策協議会の「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」によって接触ICカード化が進み被害が大幅に減少した。海外をみると、イギリス、オーストラリアは、不正額は横ばいも金額自体は大きいが、不正率は減少傾向だ。その理由は3-Dセキュアの効果が大きいという。日本はEC市場規模の拡大よりも不正の伸びが大きいのが課題だ。

今後の対策強化先として、加盟店のEC取引時にはEMV 3-Dセキュアによる本人認証が必須化される。イシュアは本人認証サービスへの登録を推進している。また、ワンタイムパスワード(OPT)の登録を順次実装している。さらに、フィッシングからカード情報やID情報が詐取されており、フィッシングさせないような対応強化を経済産業省、総務省、警察庁などからカード業界に要請された。

Adyenが承認率改善が重要だとする理由は?
偽陽性率改善、ネットワークトークン最適策

日本のクレジットカードの課題は「決済をコストセンターとして、アクワイアラフィーを安くしてくださいなどの認識しか見ていないこと」だと三田氏は指摘する。Adyenでは決済の承認率を上げることで、決済の仕組みをプロフィットする認識を持つことが重要だとした。

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