JR東日本、「Suicaアプリ」によるID統合の理由とは? データ活用で顧客とのコミュニケーションを最適化し、Suica経済圏拡大へ

2024年7月30日8:10

JR東日本は、交通系電子マネー「Suica」 を「移動のデバイス」から、利用者のさまざまな生活シーンにつながる「生活のデバイス」に進化させる「Suica アプリ(仮称)」を創出し、Suica 経済圏を拡大していくと発表した。今回はJR東日本にSuicaの現状やID統合の目的、次の10年で目指す姿について説明してもらった。

池谷貴

JR東日本 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 戦略・CXユニット マネージャ 橋本久義氏

「移動の目的(地)づくり」と
「DXによる個客との接点強化」を目指す

JR東日本のSuicaは、2023年10月に1億枚の発行を突破し、約2,800万枚(2024年6月末)がモバイルSuicaとなっている。電子マネーの取扱いについては、月間利用件数は約2億8,572万件(2024年6月末、相互利用先加盟店を含む)、利用店舗数は約195万店舗(2024年6月末、うちSuica加盟店は約67万店舗)となり、ここに含まれない鉄道も含めたトラフィックは膨大だ。

JR東日本 マーケティング本部 戦略・プラットフォーム部門 戦略・CXユニット マネージャ 橋本久義氏は「Suicaをさらに多くの方にご利用いただけるよう、進化させていく必要があります」と述べる。そのためには、よりSuicaの顧客体験価値を高めていく必要があるとした。

JR東日本では、これまでの生活サービス事業成長ビジョン「NEXT10」に代わる新たな中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定したが、その経緯として、コロナ禍により「変革2027」で掲げていた10年後の環境が一足飛びに訪れたことがある。また、今後10年間の環境の変化として、人口減少に加え、利用者の消費志向が急激に変化している。さらに、JR東日本がビジネスのフィールドとしている都心や地方などの鉄道の移動にもマーケットが構造的に変化するなか、ビジネスとしての成長をどう描くのかという観点で「Beyond the Border」を策定している。

Beyond the Border のコンセプト(出典:JR東日本)

JR東日本では、Suicaの進化によって「移動の目的(地)づくり」と「DXによる個客との接点強化」を通じて新たな強みにリデザインする。Suicaによって利用者一人一人の移動の目的を創出する狙いだ。橋本氏は「例えば、エキナカやショッピングセンターをご利用いただくための目的をつくります。DXによる顧客接点強化のため、我々とお客様をつなぐものとしてSuicaを位置付けています」と説明する。

Suicaは1億枚が発行されており、鉄道は年間約66億人(注記:統合報告書ベース)が利用する生活インフラとなった。「お客様がそれだけSuicaを利用する状況をJR東日本の成長につなげられているのか? 我々と接点を持っていただいているお客様にベストだと思っていただける体験をお届けする媒介かといえば十分ではありません。鉄道、モビリティエキナカ、ショッピングセンター等の事業といったように縦軸ではなく、横串で見ていく必要があります」(橋本氏)。各サービスを利用する時の決済の基盤としてのSuicaに加え、お得さやリワードとしてグループの共通ポイント「JRE POINT」がある。橋本氏は「Suicaが多くのお客様にご利用いただいている状況を踏まえて、各事業を成長させる観点で捉えていきたいです」と話す。

2027年度までのID統合でシームレスな利用を可能に
ビジネスのあらゆる可能性は排除しない

今後のステップとして、2027 年度までに「えきねっと」や「モバイル Suica」 などの各種ID統合でシームレスな利用を可能にするとともに、クラウド化による新しい鉄道チケットシステムを開始する。JR東日本では、すでにSuicaと各地域の交通系ICカード機能をまとめた「2in1カード」を複数地域で発行している。また、群馬県では鉄道、バスやタクシーなどの機能を利用できる「GunMaaS」のサービスに関わった。さらに、「JRE POINT」もSuicaにチャージして利用でき、別のバリューとして似たような環境も構築可能だ。JR東日本のビジョンでは、例えば、駅ビルで一定額の買い物をした人に帰りの運賃割引の提供を可能にするとしているが、「ビジネスのあらゆる可能性は排除しない」と橋本氏は話す。

MaaSは移動のDXからスタートしたが、暮らしの領域まで提供することを目指す。モビリティの移動データをさまざまなリアル・デジタルサービスと結び付け、例えば、利用者の趣味・嗜好や健康状態に沿ったサービスや情報を適切なタイミングで届ける One to One のデジタルコミュニケーションを行うことで、マーケットインのビジネスを進めていく。

現在、東京への一極収集が叫ばれているが、地方の人々の生活に寄り添うにはデジタルの力が重要だとした。橋本氏は、その可能性の1つとしてオンライン診療サービスを挙げた。JR東日本では、駅を起点にオンラインも活用した「スマート健康ステーション」を提供しているが、デジタルの強みが生かされるという。また、ライドシェアやデマンド交通などにも取り組んでおり、移動の目的となることを手段と合わせて提供する予定だ。

「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度にリリース
ID統合で人を捉え、リアルとコマースをつなぐ

JR東日本では、「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度にリリースすることで人々の利用シーンにあわせたサービスを一括で提供すると発表している。橋本氏は「お客様とのさまざまな接点がありますが、多くの方が最初にお持ちいただくのはSuicaです。各サービスを1つのIDでどう使いやすくするのか、どういうデバイスで提供するのかを踏まえて考えていきたいです。お客様のお手元にあり、分かりやすい意味で『Suicaアプリ』とさせていただきました」と説明する。

Suica アプリ(仮称)を 2028 年度にリリース(出典:JR東日本)

DXによる顧客との接点拡大は、チケッティングやOMO/ECといったコマースに加え、決済・金融サービス、デジタルコミュニケーションまで広げていく。「我々のビジネスは移動やエキナカの買い物ですので、その延長線上が強みを発揮しやすいです」(橋本氏)。JR東日本では、移動と一体のチケットサービス、金融・決済、生体認証、マイナンバーカード連携、タイミングマーケティング、健康、学び、物流、行政・地域サービスとの連携などの新機能を今後 10 年の間に順次追加すると発表している。「例えば、生体認証は技術的には十分可能になると思っており、方向性の1つとして記載させていただきました」(橋本氏)。これら取り組みは、同社単体だけではなく、他の企業などとのアライアンスを通じて新しいマーケットをつくる意欲を込めている。

「デジタルプラットフォーム」で変わる利用者のさまざまなリアル・デジタルなサービス体験(出典:JR東日本)

SFの変更の可能性も、生活と移動を融合へ
10 年後の目標は?Suicaを入り口に市場拡大

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