欧米のA2Aペイメント(口座間決済) (1)A2Aペイメント(口座間決済)スキームとは

2024年9月13日7:00

A2Aペイメント(Account to Account Payment、口座間決済)とは、ペイメントサービス利用者の支払い金が、クレジットカードなどのようにペイメント事業者を経ずに、直接銀行などの口座からEC事業者などのマーチャント(加盟店)の口座に支払われるペイメントの仕組みのことを指すものである。つまり、口座(Account)から口座(Account)へ直接のペイメント(決済、送金)で、所謂“仲介者”が存在しないというダイレクトペイメントというニュアンスも含まれている。

こうしたA2Aペイメントは、銀行の口座やその他の金融機関の口座を活用し、即時に決済できるペイメントサービスであり、コスト削減や決済スピードの向上などの利点がある。よって、欧米のE-コマースのマーチャント(加盟店)が近年こぞってA2Aペイメント(口座間決済)のプラットフォームを利用する主な理由は、クレジットカードよりも安いコストと、即座に資金決済が可能なためである。

近年、A2Aペイメント(口座間決済)が北欧やドイツ、オランダなどのヨーロッパやタイやマレーシアなどのアジア、ブラジルなどの南米の国などで急速に普及拡大しているのは、銀行がオープンバンキング化しているからこそ実現できるペイメントスキームでもある。“オープンバンキング”(Open Banking)とは、銀行とサードパーティプロバイダ間でAPI(Application Programming Interface)を介して、金融データの共有を可能にする仕組みのことである。このように、A2Aペイメント(口座間決済)は、金融のデジタル化とオープン化が進む中で、ますます重要性を増している。

今回は、欧米のこうしたA2Aペイメント(口座間決済)について、次の5つのテーマに分けて、その動向について詳しく紹介してみたい。

 

和田文明

■連載
(1)A2Aペイメント(口座間決済)スキームとは
(2)A2Aペイメント(口座間決済)サービスのスキームとテクノロジープロバイダー
(3)ヨーロッパのA2Aペイメント(口座間決済) 前編後編
(4)プッシュペイメント(Push Payments)とプルペイメント(Pull Payments)Pull Payments

<参考文献・資料>
・Unlocking the Potential of A2A Payments Report、The Paypers
・The Processing Landscape for Card Issuing and A2A Payments in 2021、Flagship Advisory Partners
・European A2A Schemes Thriving, Not Yet Open Banking Payments、Flagship Advisory Partners
・Worldpay Global Payments Report 2024、Statista
・iDEAL、TWINT、Blink、Payconicの各HP

A2Aペイメント(口座間決済)スキームとは

A2Aペイメント(Account to Account Payment、口座間決済)の第1回目は、まず、A2Aペイメントスキームと何か、また、リアルタイムペイメントのA2Aペイメント(口座間決済)スキームのタイムラインについても触れておきたい。

A2A (口座間決済)スキームとは、サービス利用者の支払い金が、クレジットカード事業者などのペイメント事業者を介さずに、支払者の銀行口座からEC事業者などのマーチャント(加盟店)の銀行口座に対して直接支払われる仕組みのことを指す。“A2Aペイメント” (口座間決済)スキームは、銀行のAPI(Application Programming Interface)のオープン化により、インターネットを経由してパソコンやスマートフォンからインターネットバンキングやモバイルバンキングにより、銀行口座がより便利に使えるようになったことと、より進化したペイメントシステムとしての期待が込められている言葉といえよう。

こうしたA2Aペイメントスキームは、E-コマースやM-コマースの事業者にとって、ペイメントを仲介する事業者を介さないため、資金回収が早いといったメリットがあり、仲介者への手数料が不要で、買い手にとっても、銀行などの口座の資金の増減がリアルタイムでわかりやすいといったメリットがある。

このような特性から、近年A2AペイメントスキームはEC事業者やこれを利用するユーザーにとって魅力的なペイメント手段の一つとなっており、スウェーデンなどの北欧やオランダなどのベネルクス3カ国などのデビットカードは普及しているものの、クレジットカードなどのペイメントカードの普及が遅れた国や地域を中心に、A2Aペイメントスキームのシェアは急速に拡大している。ただし、こうしたA2Aペイメントペイメントスキームの普及と成功は、それぞれの国の金融システムや規制、テクノロジーの進捗など、多くの要因によって影響を受けている。

A2Aペイメントスキームと他のペイメントスキームとの主な違いは、ペイメント事業者の存在とその影響にあるといえよう。従来のクレジットカードなどのペイメントスキームでは、銀行やクレジットカード会社などのペイメント事業者が、支払人と受取人(マーチャント、加盟店)の間に入って決済が完結するが、A2Aペイメントスキームでは、ペイメント事業者の介在は不要で、ユーザーがE-コマースのサイトや店舗(POS)などで支払い操作を行うと、銀行の更新系API(Application Programming Interface)を利用して銀行口座から受取人(マーチャント、加盟店)に支払いが速やかに行われる。

こうしたA2Aペイメントスキームは支払人と受取人の互いの銀行の口座と直結したペイメントの仕組みを提供することにより、ペイメントコストを安く抑えることが可能であり、ペイメント事業者を介さないため、加盟店手数料などのトランザクションコストがかからない。また、一般に銀行の更新系API(Application Programming Interface)はセキュリティが優れており、銀行側の対応が進めば、資金移動の新たなスキームとして今後普及する可能性も秘めている。これらの特性から、A2Aペイメントスキームは、キャッシュレス化が進展し、デビットカードが広く普及しているもののクレジットカードの普及があまりなされていない北欧やベネルクス諸国など、決済手数料が割高な国で、まず最初に普及し始めている。

アメリカやイギリスなどクレジットカードが広く普及している国でも、A2Aペイメントはクレジットカードを持ちたくない層や未成年などクレジットカードを持てない層等に対する新たな決済手段として位置付けられている。A2Aペイメントは、金融のデジタル化とオープン化であるオープンバンキング化が進む中、ますます重要性を増している。オープンバンキングとは、銀行とサードパーティプロバイダ間でAPI(Application Programming Interface)を介して、金融データの共有を可能にする仕組みのことで、A2Aペイメントは、銀行がオープンバンキング化しているからこそ実現できるスキームであるといえよう。

A2Aペイメントの背景と状況

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