2025年9月2日8:00
内閣府の消費者委員会が設置した「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」は2025年8月、キャッシュレス決済の多様化・複雑化が消費者に及ぼす影響について中間報告を発表した。割賦販売法の規制対象外となる「後払い」や「キャリア決済」などについて、消費者トラブルの増加が懸念されると指摘。規制法が存在しない現状を看過し続けるのか、早急に検討する必要があるとした。

記事のポイント!
①増加する消費者被害を防止へ
②割賦販売法の規制外の手段を問題視
③懸念される後払いの相談件数の多さ
④市場決済額に比し相談件数が多い
⑤延滞で支払いがより困難に
⑥キャリア決済は通信料金と商品代金の一括請求が課題
⑦通信料金とその他代金の分離請求を推奨
⑧クレジットカードの「マンスリークリア」にも疑問の声?
⑨規制が不十分で一律のルールが必要
割賦販売法などの規制を受けない決済手法を問題視
2025年3月に立ち上がった専門調査会は8月までの5カ月間で計9回開催。7月に開かれた第8回と第9回の会合における中間整理案に関する意見交換を経て、このたびの中間報告発表となった。
専門調査会は、①支払手段の多様化が消費者にどのような影響や問題をもたらしているか明らかにする②その影響や問題が生じている要因(構造)を明らかにする③その要因を取り除くためにどのような方策があり得るかを検討し取りまとめる、などを目的としている。中間報告に向け委員の議論や意見をできるだけ生かした「要点整理」を行い、最終的にとりまとめを行った。
事務局は今回の報告は現時点における中間的な整理であるとし、引き続き具体的な検討を進める予定だ。近い将来に新たな専門調査会を設置するとみられる。
専門調査会ではクレジットカードをはじめQRコード決済や電子マネーなど、多様なキャッシュレス決済の現状や消費者に及ぼす影響について議論を重ねた。背景には増加する消費者被害の防止という狙いがあり、将来的には法改正や民事ルールにつなげる意図もあった。中でも今回問題視したのが、2カ月以内払いのため割賦販売法の規制外となる後払いとキャリア決済、クレジットカードの「マンスリークリア」だった。
市場決済額に比べ相談件数が多い「後払い決済」
専門調査会委員の間で問題があるキャッシュレス決済として真っ先に指摘されたのが、「BNPL(Buy Now Pay Later)」の名称で知られる後払い決済だ。規制する法律や行政機関がなく、収入の確認、信用情報機関の利用、支払可能見込額の調査義務がない。メールアドレスと携帯電話番号を入力しショートメッセージで届いたコードを入れれば高校生でも利用が可能で、一括払いならば年齢制限がない事業者もある。
こういった決済方法の安易性や本人確認の脆弱性だけでなく、国民生活センターに寄せられる相談件数の多さも後払いが不安視される大きな要因と言える。
2024年度の相談件数を見ると、市場決済額が約13.5兆円となるコード決済では約5,500件、市場決済額が約6.2 兆円となる電子マネー決済では約1万件。一方で、市場決済額が約1.8兆円の後払い決済では約5万件と、市場決済額に比し相談件数が多いことが指摘されている。さらに2028 年度には 2.8兆円に拡大するとの予測もあり、比例して相談件数も伸びる可能性が高く、放置はできないとした。
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