2023年3月16日8:00
来店不要で金券ショップのサービスを利用可能に
金券ショップを展開する甲南チケットは、2022年11月15日から、金券やモノをオリジナルのVisaプリペイドカードへチャージして利用できる「SELL&PAY(セルペイ)」の提供を開始した。今後は、セルペイで顧客との関係を強化するとともに、金券以外の商品も買取する機能を提供する方針だ。
FinTechカンパニーとしての変革へ
アプリから買取依頼が可能に
甲南チケットは、関西圏を中心に27店舗の金券ショップを展開している。同社では、2021年に金券ショップ業界において、日本一の売上となった。そんな業界をリードする存在の同社だが、近年は金券ショップを取り巻く環境が厳しさを増しているという。例えば、チケットレスが進行し、高速列車の回数券や株主優待券などがデジタル化しており、販売が難しくなっている。そういった業界構造の変化に対応すべく、同社ではFinTechカンパニーとしての変革に着手。代表取締役の藤巻好仁氏自らが自社サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進し、セルペイをローンチすることとなった。
セルペイは、アプリ上でVisaプリペイド機能を提供し、国際ブランドのVisa加盟店で利用できるサービスだ。これにより、金券商品の種別に関わらずチャージした買取金額を、店舗や通販などでの支払いに利用できる。
甲南チケット 事業開発部 課長 松本卓氏は「Visaのプリペイドは1つの手段として提供します。この業界は店舗での金券販売の一方通行でしたが、アプリを通して買取依頼の体験も提供していきたいです」と説明する。金券ショップに訪れる顧客に加え、金券ショップのない地域に住む人々の取り込みも強化していきたいとした。また、同社との関係を深め、サービスを継続的に利用してもらう顧客の育成にもつなげていきたいとした。
セルペイはスマートフォンアプリからVisaプリペイドカードを発行できるが、プラスチックカードの発行には800円が必要だ。また、買取希望の金券類の多い人、利用頻度の多い人は、月額300円のサブスクリプション登録で「プレミアム会員」になることが可能だ。プレミアム会員はプラスチックカード発行の費用が無料になるとともに、買取レートのアップや、Visa加盟店での決済額の1.0%のキャッシュバックを受けられる特典がある。
買取を行う際の金券の送付については、専用の封筒を用意しており、アプリからの請求により、利用者に届ける。専用の封筒に買取希望の金券を入れて送付してもらうだけで、同社が買取を行い、買取金額をセルペイにチャージする流れだ。
金券以外の買取に活用へ
顧客との継続的な関係構築を目指す
セルペイによる決済で金券類を購入することはカード会社の加盟店規約上できないが、今後は新サービスに活用することを想定している。例えば、専門業者との連携により、身の回りの品や洋服などを買い取り、その金額をセルペイにチャージするサービスも準備する予定だ。買取の専門業者として、各分野に強い企業との連携を視野に入れる。
松本氏は「Visaであれば、チャージした代金をネット通販やリアル店舗などさまざまなシーンで使うことができるため、利便性はより高まります。Visaプリペイドで収益を上げるというよりは、それを1つのキーとして、将来的にはモノチャージ、あるいはお客様の固定化につなげていきたいです」と構想を述べる。なお、Visaプリペイドであれば、クレジットカードを持てない層・持ちたくない層にも訴求することが可能だ。
また、従来の金券サービスの場合、顧客への直接のアプローチはできなかったが、セルペイでは顧客の同意のもと、さまざまなサービスを訴求することができる。
お金のやり取りをさらに便利に
会員10万人の利用が目標
アプリの使い勝手に関しては、どれだけ簡単に使ってもらえるかを意識して作り込んだ。現状のチャージは銀行振込に対応しているが、今後はクレジットカードチャージ、後払いなど、チャージ手段の拡充も検討していく。また、現状のセルペイでは口座への払い出しはできないが、お金のやり取りをさらに便利にする選択肢も用意できればと考えている。
当面の課題は、セルペイのサービスを全国の人々に理解してもらうことだ。同社ではSNSでの配信に加え、今後はアフィリエイトなどでの告知を予定している。
松本氏は「全体の構想から考えると現状はまだまだ未完成です。セルペイにより、お客様との相互通行の会員証ができたので、サービスを増やしていければ」と意気込みを見せた。まずは顧客データベースとしての活用の目安となる会員10万人の利用が目標である。