2011年11月7日8:00

ケニアで携帯電話を利用した世界初のバーチャルカードを発行
台湾の永豐銀行でディスプレイカードの提供もスタート

海外ではワンタイム・パスワード(OTP)などの動的認証等を活用してセキュリティを強化する動きが注目されている。そんな中、国際ペイメントブランドのMasterCardでは、バーチャルカードとディスプレイカードの普及に力を入れている。

世界初のカード決済サービス「PayOnline」を開始

取引ごとに「ワンタイム・カード番号」を発行

携帯電話会社のエアーテル・アフリカとスタンダード・チャータード銀行、およびMasterCardの3社は2011年9月14日、携帯電話機の画面操作だけで利用できる世界初のカード決済サービス「PayOnline」をアフリカ随一のモバイル決済普及国ケニアで開始した。

PayOnelineは、エアーテル社が同社の携帯電話ユーザ向けに展開しているモバイル決済サービス「Airtel Money」の利用者向けに提供される。プリペイド方式の電子財布サービスのアカウントを通じ、MasterCardに加盟している世界中のオンラインショップでの決済を可能にする。

PayOnlineでユニークなのは、取引ごとに毎回ワンタイム方式で発行される16桁のカード番号を利用すること。オンラインショップで商品の購入を決めたユーザは、SMSでリクエストすると携帯電話機に現れる画面を操作し購入代金とPINコードを送信するだけでカード番号が記載されたSMSを受信できる。このカード番号をオンラインショップの購入画面で入力することで支払を完了するという手順だ。*1

金額を限定し、24時間以内に1回だけ利用できる「ワンタイム・カード番号」を用いることにより不正利用の防止に備える一方で、携帯電話機からすぐに利用できる簡便性も兼ね備えている。2011年2月にバルセロナで開催されたモバイル業界最大級の見本市であるモバイルワールドコングレス(MWC)2011では、モバイルマネープロダクト/ソリューションとして最優秀賞を受賞している。

表1 PayOnlineの手数料

購入者は、米ドルにして約80セント~2ドル未満と比較的少額ではあるが、少額の手数料をカード番号の発行ごと負担する(表1参照)。9月のサービス開始時において定められた決済額の上限は、1取引あたり3万5000Ksh、日額7万Kshまでとされている。*2

すでに知られているように、ケニアでは2007年にスタートしたM-Pesaが火付け役となってプリペイド方式のモバイル決済が急速に普及している。都市部の若年層はもちろん銀行の支店やATM網の届かない地方でも日常的な取引に活用され、実体経済にも大きな影響を与えるまでになっている。*3

とはいえ、エアーテル社から見ればM-Pesaはライバルの人気サービス。ケニアの携帯電話市場をリードし最大のライバルであるSafaricom社が、同社の携帯電話ユーザのみに提供する付加サービスである。エアーテル社も同様のサービスである”Airtel Money”を投入してキャッチアップを果たすとともに、サービスメニューの拡充を目指していた。*4

国際ブランドは途上国市場での

ビジネスチャンスを模索

“M-Pesa”や”Airtel Money”といったケニアのモバイル決済サービスは、電子財布のアカウントと銀行口座とを紐付けることなく利用でき、銀行口座を持たない途上国の人々を多く含む市場でのマネーサービスの第一の成功例だと受け止められている。各国際ブランドや銀行から見ても、よりいっそうの浸透を図ることが困難だった市場だけに、ケニアやアフリカのモバイルプリペイドマネーへの参画が重要な戦略的課題となっている。

トランザクションを支えるスタンダード・チャータード銀行は、英国に本社を置きながらアジア・アフリカ・中東市場に支店網を広げており、売上・収益の大半を途上国各国でのビジネスから得ている。“Airtel Money”では電子財布のサービスアカウントに銀行口座を紐付けられる3銀行のひとつになっていた。ケニア市場でも100年以上の歴史を持つ主要銀行のひとつである。

マスターカード・ワールドワイド社東西アフリカ・インド洋諸島部地域代表のダニエル・モネヒン氏も「ケニア市民にもたらされたこのような経済的エンパワーメントは、消費者のみならず、参画した多くの事業者や店舗にとっても大変貴重な体験となっている。MasterCardは、エアーテルとスタンダード・チャータード銀行とともに、ケニアにおいて現金や小切手にとって代わるべき電子決済の優位性をプロモートし続けたい」と、サービス開始にあたってケニアに対する意気込みを示した。

業界初の動的なディスプレイカードを発行

カードフェースに6ケタのパスワードを表示

台湾の永豐銀行で提供開始したディスプレイカード

一方、MasterCard と台湾の永豐銀行は、電子商取引とペイメントについてのセキュリティ需要の増加に応えるために、MasterCard のディスプレイカードを、台湾で提供開始している。ディスプレイ・カードは、業界初となるインタラクティブなペイメントカード。セキュリティを守るための技術として、二要素認証によるワンタイム・パスワード・セキュリティ・テクノロジーが採用されている。

カードホルダーが、クレジットカード上のボタンを軽く押すと、1回限り利用できる6 ケタの画面にワンタイム・パスワードが表示される。カードホルダーはこのワンタイム・パスワードを使うことで、「3-Dセキュア」や非指定口座振替を利用したオンライン取引など、携帯電話を用いた幅広い金融サービスを利用することができる。

(本文脚注)
【*1】具体的な操作方法はエアーテルケニアのウェブサイト内下記のページより紹介されている。
http://www.africa.airtel.com/kenya/AirtelMoney/how_it_works.html

【*2】Ksh=ケニアシーリング、1USD=約100Ksh

【*3】ケニア社会におけるM-Pesaの浸透を伝えるレポートとしては、BBCの次のレポートを参照されたい。
M-Pesa: Kenya’s mobile wallet revolution(2010/11/22 BBC Mobile)
http://www.bbc.co.uk/news/business-11793290

【*4】2011年3月には、M-Pesaのプリペイドマネーアカウントに紐付けたVISA提携カードの発行がスタートしている。
Safaricom partners with I&M Bank to broaden M-PESA payment services.

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