各業界での実験の成果をもとに顧客利便性の優れたNFCサービスを目指す(KDDI)

2011年12月22日8:00

NFCケータイはいよいよ国内でも商用化の段階に
各業界での実験の成果をもとに、顧客利便性の優れたサービスを目指す

KDDIは、PayPass決済をはじめ、運転免許証、スマートポスターなど、NFC(Near Field Communication)携帯電話を利用したサービスの実証実験を積極的に行ってきた。また、日本と韓国での相互読み取りの検証も展開するなど、商用化に向け、着実な道筋を描いてきた。いよいよ商用化のレビューに入ったというKDDIのNFCサービスに対する期待について、同社 コンバージェンス推進本部 モバイルビジネス営業部 NFCサービス開発グループリーダー 担当部長 阪東謙一氏に話を聞いた。

KDDI

TypeA/Bを利用した実験を4度実施

さまざまな業界で実験を行い、海外との相互接続も成功

――まずは、これまでの御社のTypeA/Bを活用した取り組みについてご説明ください。

KDDI コンバージェンス推進本部 モバイルビジネス営業部 NFCサービス開発グループリーダー 担当部長 阪東謙一氏

阪東:KDDIではこれまで、TypeA/Bを利用した実験を4回実施しています。まず、2004年に経済産業省の受託案件としてTypeBが利用可能な携帯電話の開発を行いました。2008年~2009年にかけては、MasterCardが提供するPayPassの決済実験を実施しました。2010年には、14~15社の協力を得て、NFC携帯電話にカード機能、リーダライタ機能、Bluetooth連携機能を搭載し、実利用に近い形の実証実験を行いました。具体的には、PayPass決済や電子マネー、IC運転免許証を使った本人確認、スマートポスターなどを、各企業の協力を得て検証しています。この実験に関しては、概ね商用化に向けて問題ない結果が得られ、成功裏に終わりました。

また、海外における実証実験では、2011年2月から、韓国のSK Telecomなどと協力し、電子マネーやスマートポスターサービスの両国での相互利用について関係者内で行いました。韓国ではNFCケータイが商用化されており、相互実験では、ソウル市内のCOEX、明洞などで読み取りを確認することができました。これらの実験の成果をもとに、KDDIとしてもNFCケータイの商用化のレビューに入っています。

――決済部分の実用化に向けては、国内ではFeliCaベースの決済が普及していますが、TypeA/Bベースの決済時の課題がありましたらお聞かせください。

阪東:2008年~2009年の実験では単純にカード側の機能として決済を行うことについては問題ないことを確認しましたが、2010年は、一歩進んで携帯電話を読み取り端末として利用する実験を行いました。携帯電話の場合は、かざした時の決済完了音の問題など、ユーザーインターフェースの面でいくつかの課題が残りました。

TypeA/BとFeliCaに対応した機種を志向

NFCサービスは2段階で進む?

――先ほど、NFCケータイの商用化のレビューに入ったというお話をいただきましたが、FeliCaとTypeA/Bの関係については、どのようにお考えでしょうか?

阪東:国内ではおサイフケータイは3キャリア合わせて約1,000万人が利用しています。本来であれば、FeliCaやTypeA/Bをわけて考えることはあまりよくはありません。KDDIとしても、日本市場を見た場合、FeliCaとTypeA/Bをサポートしたい気持ちがあり、NTTドコモ様同様に両規格に対応した機種を志向することが望ましいと考えております。

一方で、今後のスマートフォン市場は、国内移動機メーカー様の仕様端末とグローバルメーカー様仕様の端末とが混在してくることが予想され、「薄い」「安い」「速い」機種が3キャリア問わず発売されると思います。今後は市場の動向を見つつ、FeliCaとTypeA/Bをどのようにサポートしていくか判断していくことになるかと考えております。

――具体的にNFCサービスはどのような流れで展開されるのでしょうか?

阪東:NFCサービスは大きく分けて2段階で考えています。国内ですでに展開されている決済だけでなく、海外で普及しているPayPassが利用できたり、日本の方が海外に旅行や仕事で訪れる際に携帯電話をかざすと支払いが行えるようなサービスが第一フェーズとしてあります。また、クーポンやポイントなどが簡単に利用できるアプリなどは必要だと思います。認証系のアプリとしては、TypeBベースの運転免許証のコピーをNFCケータイに格納することで、CD/DVDのレンタルカードを発行できるサービスなどが期待できます。

第二段階としては、韓国や欧州などではTypeA/Bの決済サービスが行われていますが、例えば国内でもそのような決済手段が導入されると、マイグレーションが起こり、インフラが大きく変わる可能性があります。

事業者の参入障壁の低いサービスを目指し

「点から面」にロングテールで広がるサービスを

――NFCサービスを展開する上での収益性についてはいかがでしょうか?

阪東:NFCサービスについては、GSMAが推奨しているビジネスモデルと同様で、KDDIが提供するUIM(SIMカード)の領域管理を行います。その対価として若干の管理料をサービス事業者様から頂戴することを想定しております。現在のおサイフケータイで成功している事業者様といえども、「点から線」にサービスを広げるのが限界でしたが、今後は「点から面」に、ロングテールに広がるサービスにしていかなければなりません。

そういう意味では、領域管理やチップに関するコストはなるべく低く抑えたいのが現状です。つまり、利益を追求しない形で損失を出さないレベルのプラットフォームに徹することが、広くご利用いただくために必要な点だと思います。

また、ASPサービスを充実させることも必要で、例えば大手コンビニの周辺にある個店などでもロイヤリティプログラムを展開できるように、参入障壁の低いものを利用できる必要があると考えています。

価格については、少なくても現状よりも低いレベルで提供していきたいと考えています。決済など、セキュアな領域を確保する点については、グローバルプラットフォームの技術などをベースに行う予定です。

――例えば、NTTドコモが「iD」や「DCMX」を行ったように、御社自身がNFCチップを利用して決済事業を展開することは考えられますか?

阪東:決済サービスについては、国内で展開している方々と戦う発想はありません。あくまでも弊社としては、コラボレーションしていきたいと考えています。

ただ、今後は、リアルの決済とEC決済の垣根がなくなると思います。例えば、家具ショップでサイドボードを購入する際、サイズがわからない場合はもう一度店舗への来店が必要となります。店舗ではNFCケータイで商品タグにタッチすることにより携帯電話に商品情報を残し、家でサイズを計った後に、インターネットで購入できれば利便性がアップします。

――最後に、今後のNFCビジネスにかける意気込みをお聞かせください。

阪東:弊社では、いち早くNFCケータイの商用サービスを開始すると思いますが、他のキャリアと足並みを揃えて、アジアを中心とした実のあるNFCサービスをリードしていきたいと考えています。

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