2012年1月11日8:00
生活者に受け入れられるNFCサービスの展開を目指す
3キャリア共同で協議会を設立し、歩調を合わせる
ソフトバンクモバイルは、日本で初めて、2008年にNFC技術に対応した携帯電話を用いたスマートポスターやMasterCardの非接触決済サービス「PayPass」の実証実験を千葉県幕張の複合商業施設で行った。同社では2011年1月にも、TSM(Trusted Service Manager)を用い、無線ネットワーク経由による本格的なPayPassの実証実験を実施。同年11月からは、American Express の非接触決済サービスである「expresspay」の実験をクレディセゾンなどと協力して行っている(関連記事)。同社のNFCサービスにかける期待について海外事業戦略室 海外事業推進統括部 モバイルペイメント企画部 部長代行 小峰正裕氏に話を聞いた。
実験の成果を踏まえ、商用化に向けた取り組みを実施
協議会ではFeliCaに加え、TypeA/B規格の対応、利用環境の整備を進める
――ソフトバンクモバイルは、携帯キャリアとして国内で初めてNFCサービスの実験を行いましたが、2011年から行っているexpresspay実験の開始の経緯についてお聞かせください。
小峰: 弊社は、American Express International Inc.のシンガポールオフィスで非接触決済サービス等を担当する部門(Emerging Payments, Merchants Strategy, Global Network Services)の方々と以前より情報・意見交換を通じて非常に親しい関係にありました。American Expressは、米国において2005年にexpresspayのサービスを展開しています。世界的にNFC対応スマートフォンの普及が見込まれる中、今後モバイル非接触決済サービスにも注力したい、ついては日本でのテストマーケティングを希望され、今回の実験に至りました。弊社では、2011年1月からオリエントコーポレーション、クレディセゾンとMasterCardのPayPass実験を行っていましたので、その枠組みを踏襲して運用を行う形でexpresspayの実験を行っています。
――これまでの実験を踏まえての感想をお聞かせください。
小峰:実験では技術検証のみならず、ユーザー、加盟店のオペレーションの検証も行いました。現在は商用化の検討を行っています。とはいえ、サービス事業者様にいきなり商用サービスを展開していただくのは難しいと思いますので、まずはプレ商用のような形で進めていくのがサービス事業者様にとって良いのではないかと考えています。
――2011年12月21日には、NTTドコモ、KDDIと共同で「モバイル非接触ICサービス普及協議会」を設立されました。
小峰:NTTドコモ、KDDIと協力し、3社で協議会を立ち上げました。協議会では、1)お客様が、国内外のサービス規格の違いを意識することなく、モバイル非接触ICサービスを国内外で利用できる環境の整備運用、2)国内通信事業者のモバイル非接触ICサービスの共通仕様策定、および運用の統一化を行い、サービス提供者等が低コスト、かつ迅速にサービス提供できる環境の構築に取り組んでまいります。まずはキャリア側のNFCプラットフォームに関連する共通仕様の策定や、サービスオペレーションなど大方の枠組みを決め、カード会社様やサービス事業者様などに加わっていただきたいと考えています。NFCサービスにかかわる関係者とディスカッションをしながら本番の運用に結び付けていく方針です。また、今後は、協議会としてのWebサイトも立ち上げる予定です。
携帯電話のFeliCa規格ならびにTypeA/B規格への対応、利用環境の整備などについて協議し、キャリア側の歩調を合わせることで、リーダライタなどの利用環境の整備を後押ししていく方針です。
また、既に、米国・欧州はじめ世界中で、モバイルNFCに関するジョイントベンチャーやコンソーシアムが立ち上がっています。 今後、例えば、海外旅行の際にその国のサービスを日本のお客様のNFC携帯端末でも利用できるようにするなど、NFCサービスにおける国境を跨いだ相互利用の検討において、本協議会が海外のこれら団体や携帯電話会社との共同検討や情報連携の役割を担っていくことも期待できると思います。
2012年中にはNFCケータイを発売へ
決済、クーポンなどが連動したシームレスなサービスに期待
――ソフトバンクモバイルのNFCケータイの発売時期に関してはいかがでしょうか?
小峰:ソフトバンクモバイルとしても2012年中にはと思っていますが、発売するスピードについてはこだわっていません。むしろ端末を含めたNFCプラットフォームの展開についてはサービス事業者、携帯電話事業者等の業界の垣根を越えて協調していくべきではないかと考えています。今後は、海外の端末メーカーなどから、TypeA/Bの機能のみを搭載したシンプルなNFC端末も出てくると思いますが、少なくとも国内に関してはFeliCa、TypeA/Bの両規格に対応していないと、お客様の利便性を損ないかねません。基本的に弊社としては、当面はFeliCaもサポートしつつ、TypeA/Bを展開していきたいと考えています。
――NFCサービスに期待する点につきましてお聞かせください。
小峰: expresspay、PayPassやpayWave等、グローバルで利用可能なサービスがNFC携帯端末で実現されることで、今まで日本国内で閉じていたモバイル非接触サービスの利用者と利用場所である面が一気に拡大します。
また、決済だけではなく、スマートフォンの登場により端末の各機能がシームレスに使えるようになると思います。例えば、これまでのモバイルを利用したサービスでは、決済機能とクーポンの連動が上手くいかないケースが多く見受けられましたが、今後は決済、クーポン、ポイント、地図情報などがシームレスに連動できるようになり、お客様の利便性が高まると期待しています。
TSMは他キャリアとの共同展開も視野に
NFCケータイの浸透は2014年?
――NFCアプリケーションを管理・統括するTSM(Trusted Service Management)についての検討は進んでいますか?
小峰:どのようにTSMを運営していくか検討していますが、低コスト化が求められると思います。その場合、携帯キャリアが個別にTSMを運用するのではなく、他のキャリアと共同で運営することも考えられます。
TSMはアプリケーションの配信やセキュアエレメントの管理などの運営を行いますが、あくまで、これはプラットフォームであるため、サービス事業者様にとって、 FeliCaからType A/Bへの移行、NFCへの新規参入の障壁となってしまうような収益追求型のビジネスモデルは考えていません。
――今後、NFCサービスはどのように普及すると考えていますか?
小峰:3キャリア共同で協議会も設立し、現在は商用に向けて仕様を統一する段階に入りました。2012年から端末が市場に登場し、2013年以降はサービス事業者からのソリューションも増えてくると思います。利用できる場所のインフラが整備され、Type A/Bサービスが本格的に生活者に浸透し始めるのは2014年頃になるのではないでしょうか。弊社としては、数多くの端末にNFCチップが搭載され、多くの生活者に利用していただける環境の整備を目指していきたいです。