中立な立場で電子マネーの加盟店開拓を展開(TFペイメントサービス)

2012年1月20日8:00

中立な立場で電子マネーの加盟店開拓を展開
一台の端末で共通して利用できるプラットフォームの確立を目指す

トッパンフォームズでは、2011年12月1日付けでNFC技術を活用した、決済プラットフォーム事業を運営する新会社「TFペイメントサービス」を設立した。新会社設立の背景と今後の展開について、代表取締役の黒羽二朗氏とゼネラルマネージャーの南 宣吉氏に話を聞いた。

TFペイメントサービス

「nanaco」との提携が決定

端末の共通化によりインフラの拡大に期待

トッパンフォームズでは、NFCに準拠した製品の開発・販売に2005年から取り組み、実績を重ねてきた。また、日本ヒューレッド・パッカード(日本HP)と協業し、NFC技術を活用した電子マネーのプラットフォームを構築中だ。同社では、1980年代の中頃から日本のクレジットカード会社の利用明細書や帳票、印刷物の製造などを担ってきた実績があり、加盟店開拓(アクワイアリング)を行うクレジットカード会社内の所轄部門との関係も深い。

TFペイメントサービス 代表取締役 黒羽二朗氏

「現在、VisaやMasterCard、JCBなどの国際ブランドがついたカードは国内の加盟店であれば発行会社に関係なくどこでも利用できますが、電子マネーについてはその制約があり、必ずしも広がっていません。弊社がより中立的な立場でサービスを展開することで、電子マネー事業者やアクワイアラと協力して電子マネーの市場をつくっていきたいと考え、新会社を立ち上げました」(TFペイメントサービス 代表取締役 黒羽二朗氏)

同社では今後、国内電子マネー各社やクレジットカード会社各社および海外決済サービス各社などと幅広く提携を行う。すでにセブン・カードサービスの「nanaco」との提携が決まっており、他の電子マネーについても話を進めている。

「対面に関しては、各社アクワイアラと協力し、一部の業務を受託する形のビジネスを考えていますが、非対面は弊社が直接、加盟店開拓を行う予定です。現状、電子マネー事業者の多くが囲い込みのツールとして電子マネーのインフラ整備を行っていますが、弊社では一台の端末、すべての決済ブランドで共通に利用できるプラットフォームを提供します。これにより、各電子マネー事業者にとっては、共通仕様で数多くの加盟店でインフラが広がることを目標としています」(TFペイメントサービス ゼネラルマネージャー 南 宣吉氏)

アウトソーサーの立場で電子マネーのアクワイアリングを支援

FeliCa系の電子マネーから着手し、TypeA/B決済は将来を見据えて対応

決済単価が低い電子マネーは、加盟店からの手数料も薄利になりがちだ。また、端末の整備などに時間がかかり、事業者ごとに方式が異なるため、加盟店によっては複数の端末を置かなければならない状態となっている。

NFC技術を活用したオンライン型決済サービスの全容

新会社では、読み取り用のNFCリーダを用意し、業務用端末と決済用のアプリケーションを用意する。黒羽氏は、「弊社の目的は決済手数料を収入源とするわけではなく、あくまでもアウトソーサーとして端末と決済サーバの提供し、その対価をいただくことが基本になります」と説明する。暗号処理をサーバ側で行うシンクライアント方式で提供するため、端末のコストも従来に比べ、安価に提供することが可能である。各電子マネー事業者のレギュレーションはあるにせよ、導入のための障壁はシンクライアント型により下がると同社では考えている。

リーダライタは、固定POSに接続して利用するものを用意。残高表示はPOSの画面で表示。利用者への支払いの確認については、リーダライタからも光と音で知らせるようにするという。

また、電子マネーは2007年頃から普及しており、約5年で端末の償還期限が来るため、リプレイスの時期などに合わせて固定式の端末やハンディターミナルを複数投入する予定だ。さらに、デジタルサイネージ端末も用意し、インターネット検索事業者の広告と連動することで端末の投資コストを下げるモデルなども予定している。これにより、生活者に対し、スマートフォンに特典を受けられるクーポンを配信することができ、店舗の集客支援にも役立てることが可能だ。

TFペイメントサービス ゼネラルマネージャー 南 宣吉氏

「弊社は端末を制約しませんので、今後も加盟店や電子マネー事業者、各種端末メーカーなどの要望に合わせて、対応を行う予定です」(南氏)

すでにnanaco以外の電子マネー事業者とも話し合いを進めており、「夏までには形にしていきたい」と南氏は目標を語る。TypeA/Bのインフラを利用したVisaのpayWave、MasterCardのPayPassについては、「HPのプラットフォームである『Regional Cards and Payments Utility(RCU)』では、すでに対応可能ですが、国内はFeliCaを利用したプラットフォームが普及しています。ここに新たな国際ブランドをいきなり追加して提案すると、再度利権争いが起こる可能性がある。このことは利用者と加盟店にメリットをもたらさないため、国際ブランドの展開は、十分様子を見て展開していきたいと考えています」と南氏は慎重な姿勢を見せている。

非対面の決済は自らアクワイアリングを展開

漫画など電子書籍の市場などを開拓へ

一方、同社がアクワイアリングを展開する非対面の決済については、「まだまだ電子マネーの市場は十分にある」(南氏)と考えている。現状、非対面に用いられる決済手段については、「手数料の面など、必ずしも加盟店は納得していない」と南氏は話す。特に漫画などの電子書籍の市場については、大きな市場が見込めると期待しており、注力して営業を行う予定だ。なお、非対面の展開については、決済代行事業者と連携して進めていくケースもあるという。

nanacoのネット決済のイメージ

当面の売り上げ目標としては、「業務委託処理料やリーダライタなどの機器の売り上げを合わせて2012年度に約3億円を見込んでいます。2014年度に30億円の売り上げを達成できれば単年度黒字が見込めますので、軌道に乗れば他社からの出資を募ることも考えています」と黒羽氏は意気込みを述べる。

同社では、シンクライアント端末を利用した端末の共通化の概念は必ず形になると考えており、対面の決済で2015年に50億円の売り上げを目指す。

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