2012年3月23日8:00
10周年を迎えた交通系電子マネー「Suica」の次なる展開は?
加盟店数、決済件数は順調に拡大
JR東日本のSuicaは、2011年11月18日に10周年を迎えた。2004年には「Suica電子マネーサービス」、2006年には「モバイルSuica」のサービスを開始した。また、PASMOなど他の交通系ICカードサービスとの相互利用により、Suicaの利用の場は全国へ広がっている。
JR東日本
加盟店数は16万6,310店舗、1日あたりの最高決済件数は288万件
安価なシンクライアント型決済端末の普及に期待
Suicaは、2001年11月に鉄道乗車のサービスからスタート。当時は利用できるエリアも限られていたが、PASMOとの相互利用をはじめ、関西、中京、北海道、九州などの鉄道でも利用できるようになり、面的な広がりが進んできた。
「当初想定したように、券売機の台数が減り、磁気のきっぷからICカードに切り替わることによるメンテナンスなどのコストの抑制や、空いた券売機のスペースを他の事業に活かすなどビジネスの広がりも生まれました。また、大手コンビニエンスストアなどの市中の加盟店で利用できるようになるなど、この10年で大きく成長し、お客さまからも高い評価を得ている」(JR東日本 IT・Suica事業本部 企画部 課長 事業統括グループリーダー 大川潤一郎氏)
発行枚数は2012年1月末時点で約3,822万枚、そのうち電子マネー対応可能なものが約3,590万枚となっている。また、このうち携帯電話やスマートフォンをSuicaとして利用できる「モバイルSuica」会員数は約273万人。電子マネーのサービスは2004年から開始したが、「すでにSuicaがご利用いただける加盟店数は約16万6,310店舗となり、今後もさらに増やしていきます」とJR東日本 IT・Suica事業本部 電子マネー事業部 課長 計画・プロモーショングループリーダー 京田直紀氏は成果を語る。
加盟店数に関しては、ただ単に数を増やすだけではなく、「使われる場所の拡大と利用頻度の増加の両輪が大切である」と考えている。1日あたりの最高決済件数は288万件となっており、「季節ごとの変動はありますが、年々順調に伸びています」と京田氏は自信を見せる。
利用については、駅ナカや大手コンビニエンスストアなどが多くなっているが、2011年度については、ヤマト運輸やすかいらーくグループなどで導入がスタート。「今後は他のフランチャイズチェーンの店舗や街中の個店などへも広げていきたい」と京田氏は意気込みを見せる。
最近では、決済アプリケーションをサーバで管理する“シンクライアント型”のシステムが開発されており、従来のリッチクライアント型の端末に比べ、安価に決済端末の導入が可能になってきている。
Suicaポイントで顧客の囲い込みを図る
モバイルSuicaのスマートフォン会員数は40万人を超える
独自のポイントサービスである「Suicaポイントクラブ」の会員数は141万人。Suicaポイントクラブでは、定期的にSuica加盟店とのキャンペーンを実施しており、例えば、JR東日本の駅のコンビニエンスストア「NEWDAYS」で毎週金曜日に買い物をするとポイントが5倍となるキャンペーンを行っている。ほかにも、2012年2月6日~3月11日までの期間限定で、NEWDAYSにおいて週2回以上Suicaで買い物をした人に、Suicaポイントを10ポイントプレゼントするキャンペーンを実施した。
また、Suicaポイントに交換できる提携ポイントも三井住友カード等のワールドプレゼントのポイント、SBIポイントユニオンのSBIポイントなど、拡大している。
さらに、東日本のエリアを中心に展開するJR東日本グループのJR東日本ホテルズは、「EASTYLE MEMBERS」を発足。「EASTYLE MEMBERS」として、お手持ちのSuica定期券やSuica付きビューカード、モバイルSuicaなどを登録することで、Suicaをホテルの会員証として利用できる。「EASTYLE MEMBERS」では、宿泊料金100円につき5ポイントの「EASTYLEポイント」が付与されるが、貯めたポイントをSuicaポイントに交換することも可能だ。さらに、ホテルでの支払いにSuicaポイントクラブに登録したSuicaを利用すれば、200円につきSuicaポイントが1ポイント貯まる。
今後も会員のSuica利用を伸ばすため、Suicaポイントクラブを有効活用していく方針だ。
モバイルSuicaに関しては、カード型のSuicaに比べて「電子マネーをよく利用されるコアユーザーが多い」(大川氏)という。そのため、モバイルSuica会員へのサービス充実と会員数の拡大は大切な施策となる。モバイルSuicaでは、「オートチャージ」サービスや、JR東日本の新幹線、東海道・山陽新幹線(別途登録が必要)にチケットレスで乗車できるサービスを既に提供しているが、今後も利用者に喜ばれる新たなサービスを考えていきたいとしている。
モバイルSuicaのAndroid搭載スマートフォンへの対応は2011年7月から開始。クイックチャージやウィジェットでの残高確認ができるなど、従来の携帯電話にはないサービスを提供している。スマートフォンの利用者は新規や置き換えなども含め順調に伸びており、すでに会員数は40万を突破している。
Suicaを利用したインターネット決済に関しても、EC決済分野の成長を踏まえ、「ショッピングモールなどよく利用されるコンテンツをはじめとして、決済が行えるようにしていきたい」としている。
学生証や社員証としての採用も進めており、2011年3月からは東急電鉄と提携し、「Suica付学生証(社員証)」と「PASMO付学生証(社員証)」を相互に提供している。また、フェリカポケットマーケティングからは、Suicaに搭載されている「FeliCaポケット」の仕組みを利用し、ポイント、クーポン、スタンプラリー、地域通貨など交通乗車券以外のさまざまなサービスを搭載可能にするための新たな事業を開始すると発表されている。
鉄道でのSuicaの利用を9割まで高める
NFCについては市場の動向を見据えながら検討
PASMOを発行する㈱パスモとは、2012年3月18日でIC乗車券・電子マネーにおける相互利用サービス開始から5周年を迎えることを記念し、「ステーションタッチラリー」や「お買い物キャンペーン」を実施する。
また、2013年春には、全国の10の交通系ICカードの相互利用が始まる。既にSuicaは7のICカードとの相互利用を行っているが、2013年春にはPiTaPa(IC乗車券のみ)およびmanaca(マナカ)を含めた10のICカードによる全国規模の相互利用ネットワークが構築されることにより、利用者の利便性がさらに高まると期待している。
現在、首都圏の鉄道におけるSuicaの利用率は80%台半ばだが、さらなる利便性の向上により、90%まで利用率を高めていきたいとしている。
気になるTypeA/Bも含めたNFCについては、「具体的にお話しできる段階ではない」(大川氏)としながらもキャリアを含め、市場の動向を見据えながら検討していく方針だ。
同社ではかねてから、Suicaなどの交通系の電子マネーが全国に浸透し、人々の生活に欠かせないものになるという目標を抱いている。今後も利用できる加盟店を拡大し、利用者へのサービスの質をさらに高めることにより決済頻度を高めていきたいとしている。