2012年3月30日8:00
汎用型電子マネーの良さを保ちつつ、楽天グループの強みをアドオン
地域での面展開、スマートフォンやNFCなどの新技術への対応にも力を入れる
ビットワレット株式会社(2012年6月から楽天Edy株式会社)が運営する電子マネー「Edy」は、29万4,000加盟店(2月末時点)と国内の電子マネー発行企業として、最も多くの加盟店網を有している。同社では2012年6月1日から楽天Edyに名称を変更し、従来からの汎用型電子マネーとしての良さを保ちつつ、楽天グループとしての強みをアドオンする方針だ。
Edyでポイントの「楽天スーパーポイント」の利用者が前年比51%の伸び
スマートフォンからのオートチャージが好評
ビットワレットが運営する電子マネー「Edy」のカードの発行枚数は6,940万枚、そのうちモバイル会員は1,450枚、月間の取引件数は3,100万件となっている(2012年2月末時点)。
カードの発行枚数は毎月約50万枚ペースで伸びており、前年比で約9%の成長となっている。特に伸びが著しいのはスーパーで、天満屋、関西スーパーマーケット、大丸ピーコックなどは、自社の会員カードにEdyの機能を搭載して、独自のポイントと組み合わせて利用している。
加盟店開拓については、地域での面展開を強化。従来から重点的に展開している沖縄に加え、札幌、仙台などの営業所単位で加盟店開拓を行っている。例えば、仙台については楽天野球団(楽天ゴールデン・イーグルス)と連携しながら、スタジアムやその周辺の加盟店開拓を積極的に行っており、前年に比べ20%以上の利用の伸びがみられるそうだ。
また、インターネット決済でのEdy利用にも力を入れており、「グリー(GREE)」などのデジタルコンテンツでの伸びが著しいという。
ビットワレットでは、ANAの「ANAマイレージクラブ」、カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」、ロイヤリティ・マーケティングの「Ponta」といったポイントプログラムと連携し、Edy加盟店でそれぞれのポイントが貯まる「Edyでポイント」を展開している。なかでも7,300万人の会員を有する「楽天スーパーポイント」との紐付を推進しており、前年比でプラス51%の伸びを見せている。
モバイルユーザーについても、前年比で約16%の伸びを見せる。その成長はスマートフォンユーザーが支えているという。
同社では、スマートフォンを利用したサービスにおいて3つの点を重視しているが、その1つが「簡単にチャージできる機能の提供」となっている。
Edyでは、2011年1月からスマートフォン対応を行った。また、オートチャージが可能であり、「オートチャージユーザーはそれ以外のEdyユーザーと比較して、月間の利用金額はかなり高い」(ビットワレット 執行役員 最高戦略責任者 渉外・企画室 室長兼事業部門 国際事業推進部 部長 宮沢和正氏)という。
「これまでEdyでは、チャージのハードルが非常に高い課題がありましたが、オートチャージがスタートしたことや、通話料からチャージできるauかんたん決済の導入により、利便性が向上しました。チャージに関してはデイリーで目標数値を設定していますが、かなりの成果が上がっています」(宮沢氏)
KDDI、大日本印刷とともに、
TypeAプロトコルを用いたシステムを開発
2番目は「楽天とのシナジーを高める」点であるが、現状、約7,300万人の楽天スーパーポイント会員については、まだまだ取り込めていないという。同社では2012年6月から社名を「楽天Edy」に変更するが、その狙いは、楽天グループとしての強みを打ち出し、ネットとリアルを融合し、日常の生活の中で楽天スーパーポイントがさらに便利に貯まるサービスを展開するためである。電子マネー「Edy」とクレジットカードを発行する「楽天カード」、飲食店検索ポータル「楽天ダイニング」の3事業の加盟店の開拓が中心となる楽天セールスソリューションは、2011年11月に設立された。ほかにも、楽天グループの展開を生かした取り組みは強化していく方針だ。
3点目は、近距離無線通信技術「NFC」やシンクライアント型決済など、新技術への対応だ。すでにシンクライアント型決済システムを提供するトランザクション・メディア・ネットワークスからは、Edy決済の2012年内の稼動に向け、開発に着手したと発表されている。また、KDDI、大日本印刷とともに、NFCのTypeAプロトコルを用いたサーバ管理型電子マネーシステムのプロトタイプを開発した。同社ではシンクライアント型決済システムにより、顧客情報を活用したリアルタイムなクーポンサービスなどが展開できると期待する。
宮沢氏は、「シンクライアント型のシステムによりコストを抑えられるメリットはありますが、決済スピードが速いリッチクライアント型もコストは下がっており、加盟店のニーズに合わせて最適なシステムを提案していきたい」と話す。
「Edyもらえるモール」やメールマガジンからの送客を強化
収益はブレークイーブンに
また、Edyは数多くの加盟店を抱えているが、その強みを生かし送客分野の展開にも力を入れる。「Edyもらえるモール」(旧Edyパラダイス)では、楽天市場、ニッセン、ベルメゾン、上新電機などがクライアントになっており、同モールからの送客が実現できているそうだ。同社では、Edyもらえるモールやメールマガジンなどを活用した広告ビジネスは、収益の柱になると期待している。
ビットワレットでは、電子マネー黎明期の2001年11月からビジネスを展開している。インフラの投資に加え、低単価決済が主流で手数料収益がベースとなるため、収益確保に向け数多くの苦難を乗り越えてきたが、「収益に関してはブレークイーブンになっている」(宮沢氏)そうだ。
ビットワレットでは、2012年6月から「楽天Edy」に社名を変更するが、「従来からのEdyの良さである汎用型電子マネーを保ちつつ、楽天グループとしての強みを上乗せしていきたい」と宮沢氏は自信を持って語った。