2012年4月4日8:00
クレジット、銀聯、Suica電子マネー決済をクラウドで提供
拡張性・機能・低コストを武器に国内の新しい決済インフラ確立を目指す
三菱UFJニコスは、JR東日本メカトロニクスと共同で、クレジットカード、銀聯カード、Suica電子マネーに対応可能な新決済システム「クラウド型マルチペイメントプロセッシングシステム」を開発し、2012年度7月以降の稼働を目指している。
三菱UFJニコス
端末の価格は従来の3分の1を実現
新しい決済を後から容易に追加可能
現在、ペイメントサービス分野におけるカード決済では、サーバー側ですべてのアプリケーションを管理するシンクライアント型のシステムが注目を集めているが、三菱UFJニコスでは6年前から同システムに関する研究を進めてきた。クレジットカードのシステムは1983年にオーソリがオンラインとなったが、「現行のシステムでは、電子マネーや銀聯など、新たなシステムを追加する際に莫大な投資が避けられませんでした」と三菱UFJニコス 執行役員営業本部 アクワイアリング副ビジネスユニット長 アクワイアリング開発部長 鳴川竜介氏は話す。そのため、「現在のIT技術に即したレベルまで加盟店のインフラを整備し、システムに拡張性を持たせたうえで安価にシステムを提供したいと考え、クラウド型マルチペイメントプロセッシングシステムを開発しました」と同氏は説明する。
同システムは、三菱UFJニコスが構築した専用のサーバーに集約したクレジットカード、銀聯カード、JR東日本メカトロニクスが構築したSuica電子マネーの各決済機能を、加盟店に設置した決済端末やPOSからインターネット経由で利用できる仕組みである。端末の価格は、従来の約3分の1を実現。加盟店は、安価なシステム利用料のみで端末を利用可能だ。
従来、銀聯などの新しい決済手段が登場すると、加盟店は端末の入れ替えが求められる場合もあったが、同端末を利用すれば後から容易にシステムを追加できるため、「加盟店の負荷を軽減したうえで、新しいシステムを容易に追加できる」(鳴川氏)メリットがある。
サービスの開始時点では電子マネーへの対応はSuicaなどの交通系電子マネーのみだが、今後は、他の電子マネーやポストペイ決済を積極的に追加する予定だ。
「交通系電子マネーは、サイバネ規格で運用されていますが、IC乗車券や定期券として利用されるだけでなく、電子マネー単体としても利用可能であり、今後も全国で発展していくと思います。まずは、Suica電子マネーからスタートしますが、JR東日本メカトロニクス様と協力し、他の電子マネーも追加していきたいと考えています」(鳴川氏)
2秒以内でクレジットカード決済の処理が完了
加盟店独自のポイントやクーポンサービスも提供可能
サーバーとの接続にはインターネット回線を利用しており、クレジットカード決済の処理速度も、一般的なアナログ回線の場合は10~20秒が目安だが、「2秒以内での処理が可能です」と鳴川氏は説明する。また、業界標準として広く普及しているWindows POS(OLE準拠POS)に関しては接続モジュールを提供することで容易な接続も実現するという。
セキュリティ面では、端末側にセンシティブ情報を保持しない設計を実現。サーバーは国際基準である「PCI DSS」準拠しており、PIN PADは、PIN入力の国際セキュリティ基準である「PCI PTS」に対応、EMVの認定も取得する方針だ。
「システムの構築に6年間かかったのは、インフラの遅れている点を1つ1つ乗り越えてきたからです。PCI DSSやPTS、EMVへの対応など、セキュリティ面でも加盟店の皆様に安心してご利用いただけるシステムとなっています」(鳴川氏)
端末はインターネットのブラウジング機能があるのみで、売り上げの情報はサーバーに蓄積されるため、加盟店の精算時の負荷を軽減することが可能だ。また、同社ではEC決済システムも提供しているため、「将来は加盟店の皆様がリアル、ネット決済に関わらず、一元化したデータを閲覧できることを目指します」と鳴川氏は強みを語る。
同社では、サーバー管理型の利点を生かし、加盟店独自のポイントプログラムやクーポンなどのサービス機能も提供する予定だ。
「例えば、クレジットカード番号に10%OFFのクーポンの情報を登録すれば、店舗で1万円の商品を購入する際、自動的に割引が適用され、9,000円の決済が行われるシステムを提供できます」(鳴川氏)
将来的には国際ブランド提供のNFC決済にも対応可能
今後はiPhone決済もクラウドで提供へ
三菱UFJニコスではアクワイアリング事業を展開しているため、同端末を武器に営業を強化すると思われがちだが、鳴川氏によると決してそれだけではないという。
「現状、クラウド環境でクレジット、デビット、電子マネーのすべてを利用できる端末はほかにリリースされていません。弊社ではこの端末はあくまでも新しい決済インフラであると捉えており、他のクレジットカード会社にもアクワイリングの武器としてご利用いただきたいと考えています。また、将来的には国際ブランドが提供するNFC決済にも対応したいと思っています」(鳴川氏)
今後は、同社がすでに提供しているiPhoneを利用した決済サービスについても同センターに接続する予定だ。
すでにクラウド型マルチペイメントプロセッシングシステムには、加盟店から数多くの引き合いが寄せられているというが、「当初は個店からの引き合いが多くなると感じていましたが、ふたを開けてみると大手のお客様からの問い合わせが多く、機能や拡張性をご評価いただいています」と鳴川氏は笑顔を見せる。「電子決済が多い加盟店にとっては、実のあるシステムであることは間違いありません。従来にない新しいインフラとして、国内の決済端末のスタンダードとなるようなシステムを目指していきたい」と自信を持って語った。