2012年11月15日0:10
「MasterCard PayPass」や「Cashbee」の決済をドコモユーザーに提供へ
TypeA/B、FeliCaと全方式に対応し国内と海外を横断したサービスを展開
2004年からおサイフケータイを推進するNTTドコモでは、NFC技術を活用したサービスの提供にも力を入れている。同社では、マスターカード・ワールドワイド(MasterCard)と提携し、2012年10月に「MasterCard PayPass」など、モバイルを活用した新たな決済サービスの実現に着手している。また、韓国の通信事業者KT Corporation(KT)およびNFC電子マネー事業者eB Card Corporation(イービーカード)とともに、イービーカードが提供する電子マネーサービス「Cashbee」を、今後ドコモが発売するスマートフォンを使って利用できるようにするための検討を行うことで合意し、覚書を締結している。
「iD」の利用者は海外で「MasterCard PayPass」が利用可能に
世界41カ国約50万カ所の加盟店で決済できる
「国内ではFeliCa方式を利用した決済サービスが普及していますが、グローバルの観点から行くとTypeA/Bが出てきています。そのため、現状のままですとガラパゴス化してしまう可能性があり、両方式に対応することが必要だと考えました。全方式に対応して、海外のプラットフォームでも日本のおサイフケータイが使えるようになることで、サービスの多様化が期待できます」(NTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進 利用促進担当課長 今井和氏)
MasterCardとは、NTTドコモのケータイクレジット「iD」の世界各国における利用環境拡大に向けた協業に取り組み、2013年度上半期のサービス開始に向けて準備を進めていく予定だ。
同業務提携において、MasterCardは、世界各国で展開する非接触ICチップを利用した決済手段の「MasterCard PayPass」技術をドコモに提供する。これにより、ドコモのNFC(FeliCa+TypeA/B)対応おサイフケータでiDを利用するユーザーは、日本国内約56万台のiD読み取り端末(リーダーライタ)を設置している加盟店等に加え、世界41カ国約50万カ所のMasterCard PayPass加盟店でもiDを利用することが可能となる。
なお、海外でPayPass等の国際ブランドが提供する決済サービスを利用した場合は、iDを発行するイシュア(カード発行会社)の請求書に合算する形となる。また、Visaの「Visa payWave」の提供については検討中となっている。
CashBeeの利用エリアは日本の旅行者にとって親和性が高い
KTとは海外でダウンロードしたクーポンを国内で利用する実験も展開
一方、KTとは、2005年に設立した事業・技術協力委員会(Business&Technology Cooperation Committe)のなかで、日韓で相互に利用できるサービスについて検討が進められてきた。
TypeA/Bの規格を使用したCashBeeはロッテグループのカードであり、韓国国内のロッテグループのデパートやコンビニ、地下鉄、バス、タクシー、ホテルなどで利用でき、「渡韓ブームもありますので、日本人旅行者にとっての親和性が高いです」と今井氏は説明する。すでにKTとは韓国でダウンロードしたクーポンを日本で利用できるサービスを展開しており、現在も検証が続いている。
具体的なユーザーの利用に向けては、「ドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルの3キャリアが設立したモバイル非接触ICサービス普及協議会(http://nfcjapan.jp/)の中でクレジットカード会社も参加していただき、キャリアだけでは解決できない問題についての議論もスタートしています」とNTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進 NFC推進担当課長 海和政宏氏は話す。
これにより、実際にサービスを展開する際、スムーズに会員が申し込んで利用できるサービス環境を整えていく。また、国内でのサービスについては「将来的には考えられると思いますが、現時点での推進は未定」(今井氏)となっている。
なお、韓国で展開する他のサービスの展開については、「今後も検討を進めて行きたい」(今井氏)としている。
国内ではTypeA/Bのサービスは急速に増えない?
TypeA/Bはグローバル展開によりリーダライタ等のコスト低下に期待
ただ、同社では「海外はTypeA/B、国内はFeliCaという塗り分けはしていない」(今井氏)という。コンテンツプロバイダーがTypeA/Bを利用したサービスを展開する場合は積極的にサポートしていく方針だ。NTTドコモは、フェリカネットワークスに出資している立場でもあり、FeliCaの互換性の良さやセキュリティの高さ、アプリケーション開発が容易な点などのメリットは十分に理解しているため、継続して推進していきたいとしている。
国内ではすでにFeliCaが普及しており、TypeA/Bになったからといってそれほど急速にサービスは増えないと考えている。ただ、NFCタグリーダーや情報連携など、決済以外の分野で新たなサービスが徐々に増えると想定している。
「交通乗車券などを除き、コンテンツプロバイダーが提供するサービスについてはTypeA/BでもFeliCaでもそれほど区分けはしていません。日本ではFeliCaを多くの方が利用していますので、継続して3,600万人のドコモユーザーをサポートしていきたいと考えています。ただ、TypeA/Bについてはグローバル市場に展開されている点からも、コストの低下が期待できると考えています」(今井氏)
同社では、今後、KTとのアライアンスしたような展開を世界各国の携帯キャリアとも行っていきたいとしている。
ノンセキュアなサービスの推進にも力を入れる
かざしてリンクで「かざすだけで情報アクセスが簡単に」
MNO-TSMの展開については、MasterCard PayPassやCashbeeの決済に加え、ノンセキュアの部分でのサービスベンダーへの啓もうを強化していく方針だ。同社では、家電やスマートポスターなどにケータイをかざすだけで、情報取得/交換/設定がワンタッチで可能な「かざしてリンク」サービスをスタートさせた。
スマートフォンになり、リーダライタアプリがバックグランドで起動することで、常時ポーリングができるようになった。また、NTTドコモでもリーダライタアプリは夏モデルからプリインストールしたため、ビジネスに活用するベンダーが増えてきたという。今後は、魅力的なコンテンツが提供されることにより、スマートフォンをNFCタグ等にかざすシーンが街中などで見受けられるようになると同社では考えている。
「NFCに関しては海外でも徐々に普及しており、周りの事業者も動き出してきましたので、追い風になっています」(NTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進 利用促進担当主査 伊藤佳毅氏)
NTTドコモの調査によると、2012年3月末時点で3割以上がおサイフケータイの利用経験があったという。また、スマートフォンユーザーでおサイフケータイを利用した経験はさらに高い結果となっている。スマートフォンのおサイフケータイ対応、TypeA/B対応機種は増えており、今後も顧客サービスを充実させることで、よりおサイフケータイの利用を伸ばしていきたいとしている。
同社が2012年10月に行った冬モデルの記者発表会では、「日本のおサイフケータイが世界のおサイフケータイ」と「かざすだけで情報アクセスが簡単に」という2つのコンセプトが掲げられた。同社では携帯電話やスマートフォンをかざす文化を国内で醸成するために、既存のカテゴリをブランド分けして、「おサイフケータイ」および「かざしてリンク」を提供していきたいとしている。