2013年2月18日8:00
ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は、2013年2月15日、前払いの法人向けカード「ビジネスデビット」についての説明会を開催した。国内では現状、ジャパンネット銀行のみの発行にとどまるが、同社のリサーチによるとビジネスデビットカードの潜在ニーズは極めて高く、現在の個人向けクレジットカードの34兆円に匹敵する市場ニーズが期待できるという。
SMEのカード決済割合は1.1%
ビジネスカードの保有率は17.8%
ビザ・ワールドワイド・ジャパンでは、法人向けのコマーシャルカードとしてビジネスカード(デビット/クレジット)、コーポレートカード(プリペイド/クレジット)、パーチェシングカード(クレジット)を発行している。中でも即時払いの「ビジネスデビット」は、大きな市場があると捉えているようだ。
Visaビジネスデビットカードは、銀行口座に直結するデビットカードをSME(中小企業)に提供するものである。現状、日本の個人消費支出は年間約240兆円。そのうちカード決済金額は34兆円で、カード決済割合は14.3%となっている。また、SME法人消費支出は年間155兆円で、そのうちカード決済金額は1.7兆円と、1.1%の割合にとどまっている。一方、米国個人消費支出は年間約US$7,662(690兆円)で、そのうちカード決済金額は36.9%にあたる255兆円となっている。SME法人消費支出はUS$4,791(約431兆円)で、カード決済金額は36兆円と、8.4%の決済割合を占める。
日本には365万の中小企業存在するが、ビジネスカードの保有率は、中小企業で36.9%、小規模企業で26.9%、個人事業主で10.2%と推計されている。平均しても17.8%余りと、浸透していない。一方、「4年目以上のSMEについては、米国は約8割がビジネスカードを保持している」と、ビザ・ワールドワイド・ジャパン コマーシャル・ソリューション 部長 加藤靖士氏は説明する。
認知率、保有率は低いが、拡大の余地は大きい
ビジネスカードの与信枠ではSMEのニーズは満たせない?
現状、ビジネスカードは、個人向けカードに比べ認知率、保有率ともに低いが、高い利便性を持つカードとして今後の拡大余地は大きいとVisaでは期待している。
国内のSMEの費目別カード利用状況を見ると、宿泊、交通、出張費用などのT&Eに加え、ここ4~5年は事務用品・書籍、店舗用品、オフィス機材・設備、消耗品・製造部品、仕入れなどの直接費・販管費の利用が増えているそうだ。実際、Visaの調査では18~20%カードを直接・間接資材の購入に利用しているという。
「仕入れや原材料としての利用も伸びており、現状のビジネスカードの与信枠では溢れるケースも見受けられます。法人カードの1枚当たりの利用額は個人のカードの利用額の3~4倍になっています」(加藤氏)
SMEで個人カードを利用している人が、コマーシャルカードを利用しない理由についての調査では、「個人用カードへのポイントの集約」「カードは1つに集約したい」といった理由が挙げられる。それに加え、「審査が通らない」「利用限度額が足りない」といった理由もあるそうだ。
Visaでは、SMEマーケットの市場拡大に向け、大きく2つの戦略を立てている。1つは、SMEカードの発行枚数拡大に向けた施策となる。これは、SMEマーケット市場拡大に向け、地域金融機関など、ビジネスクレジットカードの新規発行会社への重点的な支援に加え、新規プロダクトの推進としてビジネスデビットカードの発行支援を行うという。
例えば、個人向けに発行するゴールドカードの年会費はダンピングが進んでいるが、ビジネスカードは会社の経費として計上できるため、年会費を取りやすいメリットがある。また、SMEの信用リスクは常に課題であり、クレジットカードなどのコーポレートカードの場合、限度額は個人向けカードとほとんど変わらないことが多いため、現状のビジネスカードの与信枠ではSMEの求める利用額には対応できない可能性がある。その点、口座残高の範囲内で利用できるデビットプロダクトは、SMEのニーズを満たすことが可能であるとVisaでは期待している。
また、カード1枚あたりの売上増加のための戦略として、B2B加盟店網拡大策の構築、アクワイアラ各社との連携強化を挙げている。
Visaビジネスデビットカードの潜在市場規模は48.6%
導入後の事業用決済構成比は22.3%に
日本のSMEの事業用決済額は154.8兆円の市場があると言われるが、そのうち70%以上が現金(32.3%)、振込(23.5%)、口座振替(16.6%)で決済している。Visaの調査によると、Visaビジネスデビットカードの商品説明を受け、同カードの利用に一部でも切り替えたいとの意向を持つビジネスオーナーの数は48.6%に達し、潜在市場規模として切り替え対象の費目の合計金額は34.4兆円に及ぶことが確認できたそうだ。また、アクセプタンスを考慮すると、11.7兆円の市場規模があることも明らかになったという。
さらに、Visaビジネスデビット導入後の事業用決済構成比をみると、現金の22.6%に次いでVisaビジネスデビットが22.3%の利用を占めるという。
日本では、ジャパンネット銀行がSME向けデビットカードとして、「JNBカードレスVisaデビット」を提供しているが、2013年4月からは、現在の買い物ごとにカード番号を使い切る方法に加え、5年間の有効期限まで繰り返し利用することも可能になる。また、現在の利用限度額は1カード番号あたり原則10万円だが、変更後は各カード番号合計で1日あたり100万円まで使用可能となるため、SMEにとって使いやすい環境が整備されつつあるとVisaでは期待している。
日本ではカード先進国の欧米に比べVisaビジネスデビットカードの発行が始まって間もないが、SMEマーケットは市場開拓余地が大きく、また市場ニーズも高いと期待を寄せている。すでに国内の数社のイシュアがローンチに向け準備を進めているそうだ。同社では、高い収益性を持つ同カードをSMEマーケット拡大の有力な商品として、今後注力して推進していく方針だ。またそれと同時に、国内のブランドデビットカードやプリペイドカードに存在するオフライン取引についても改善に努めていくという。