2013年3月5日8:00
15社との連携によりNFC普及を後押し
KDDIは、同社のモバイルNFCへの取り組みに賛同した各業界の15社と協力し、 モバイルNFCを活用したクレジット決済サービスのほか、NFCタグにNFC対応スマートフォンをタッチするだけで周辺のビル・店舗の情報取得や割引クーポンの獲得などが可能となる各種サービスを、さまざまな生活シーンで提供していくと発表した。
NFCを「知らない」が88%
モバイルFeliCa利用者は約14%
KDDIでは、2012月にNFCの認知度について調査を実施。その結果、「知らない」が88%、「聞いたことがある」が9%、「詳しく知っている」が3%と、ほとんど知られていないことが明らかになった。今回、15社との連携を発表することで、NFCサービスの認知度の向上を図り、事業者の参加を促す狙いもあったそうだ。
同社では2005年にモバイルFeliCaのサービスをスタート。現在、au端末の70%にFeliCa機能を搭載しており、そのうち約14%の利用者がモバイルFeliCaを利用しているそうだ。
NFCは国際標準の規格であり、海外のクレジットカードや電子マネーが利用可能だ。機能としては、スマートフォンがICカードとして機能する「カードエミュレーションモード」、スマートフォンがNFCタグの情報を読み書きする「リーダライタモード」、スマートフォンとNFC対応機器が情報をやり取りする「Peer to Peerモード」がある。この3つの機能により、ポイントカード、クレジットカード、乗車券、スマートポスター、公的証明書、家電、ゲームなど、さまざまな分野で利用シーンが広がるという。実際、スペインで開催された「Mobile World Congress 2013」では、NFCタグを利用した入場システムが採用されるなど、NFC対応サービスが世界的に広がりを見せているそうだ。
また、世界の標準団体などでモバイルNFCの採用が加速しており、フランス、米国、韓国、日本など9カ国で利用環境整備に向けた取り組みが進んでいる。OSについては、Androidが先行しているが、Blackberry、Windowsなどへの対応も進みつつある。
「携帯電話へのNFC搭載率は、廉価な端末が出るという前提を持っていても2016年に世界各国で8億台、日本でも新たに供給される携帯電話の3分の2以上は出ると予測されています」(KDDI 商品統括本部 サービス企画本部 本部長 小林昌宏氏)
KDDIは、2010年4月に実証実験を開始して以来、積極的にサービスを展開している。2012年10月にはJAL「タッチ&ゴー」のNFC対応を開始。東京・銀座エリアでは、ucodeNFCタグを活用したクーポンサービス「ココシル銀座タッチdeクーポン」を実施しており、2013年2月現在、合計309カ所で利用可能となっている。
最近ではFeliCa対応のNFCスマートフォンが続々登場するなど、NFC対応端末は11機種まで拡大している。
JALはNFCを利用したサービスに力を入れる
SK planetでは「Smart Touch Platform」を提供
続いて、今回の15社を代表してJAL(日本航空) WEB販売部 アシスタントマネージャー 清水俊弥氏が同社のサービスを紹介した。
現状、日本国内で稼働しているスマートフォンの割合は約4割程度と言われているが、モバイルチャネルにおけるスマートフォンからの航空券の購入は2013年1月末で約7割に達しているそうだ。年間で見てもスマートフォンからの購入は62%となり、現在も伸び続けている。また、JALのWebサービス全体をみても13%がモバイルチャネルとなっている。「スマートフォンの普及が私たちエアラインの大きなチャンスと言えると思います」(清水氏)
例えば、JALでは、2005年に従来の携帯電話を活用した「タッチ&ゴー」サービスを開始。2012年10月から「JALタッチ&ゴー」サービスをスタートしている。また、同12月7日から、NFC対応新型KIOSKでの自動チェックイン・発券機を導入した。さらに、スマートフォンをかざすだけで「JAL沖縄」アプリをダウンロード可能な「TOUCH!(タッチ)JAL!」NFCスマートポスターを作成し、同年7月26日~9月30日まで、沖縄(那覇)空港の到着ロビーに設置するなど、NFCを利用したサービスに力を入れている。
海外では、スカンジナビア航空がRFIDをスマートフォンに貼り付けることにより搭乗サービスを実施。また、同様の取り組みはニュージーランド航空でも行われているそうだ。IATA(国際航空運送協会)では、将来展望として2018年にNFCを利用したサービスが広がるとの見解を示しているように、航空業界では世界中でNFCサービスへの期待が高まっているという。
また、韓国の通信事業者であるSK Telecom傘下のSK planet コマース事業部マネージャー キム インスク氏は、韓国における同社の取り組みを紹介した。
SKでは、2007年からSIMカードを利用したモバイルサービスを開始。韓国では、2010年からNFCスマートフォンの普及が始まったが、麗水(ヨス)国際博覧会において、さまざまなNFCサービスを実施するとともに、SK Wyverns野球場でもNFCタグを利用したサービスを行った。また、政府、通信キャリア、クレジットカード会社等からなる「Grand NFC Korea Alliance」では、ソウルの明洞にてNFCサービスのトライアルを2011年11月~2012年2月まで実施している。
さらに、サービスプロバイダが携帯/SIMカードを利用したNFCサービスにおいて、アプリなどを開発できるようにAPIを整備したプラットフォーム「Smart Touch Platform」を提供している。同社では、Smart Touch Platformを用いた決済、乗車券、会員証などのサービスを提供しており、例えば電子マネーの「T-Money」や「Cashbee」などで利用されている。また、IDカード、ヘルスケアなどの領域でも事業展開を予定しているそうだ。
国際間連携のO2Oサービスとしては、KDDIなど5社と協力し、東京・新大久保でNFCタグを活用したサービスのトライアルを実施予定となっている。同サービスを皮切りとして、マーケティング、ペイメントなどのエリアで協力し、互換性規格をつくるなど、いろいろな協力を行っていきたいとしている。
郵便ポストによる情報配信を国内で初めて実施
SK planetはKDDI等と新大久保でトライアルを実施予定
なお、KDDIが各企業と連携する最新のモバイルNFCサービスとしては、マスターカード・ワールドワイドが「PayPass」、ビザ・ワールドワイド(Visa)が「payWave」と、両社が世界各国で展開する非接触決済サービスを提供する。いずれも2013年に開始予定となる。
日本郵便、ユーシーテクノロジ、東京都建設局では、3月21日から、ユーシーテクノロジが提供するucodeNFCタグを郵便ポストに設置して、NFC対応スマートフォンを郵便ポストにタッチするだけで周辺情報を取得できるサービスに関する実験を、JPタワーのオープンに合わせ、東京丸の内エリアで実施するという。なお、郵便ポストによる情報配信は日本で初めての試みになるそうだ。
サイバーエージェントでは、NFC対応スマートフォンを店舗や交通広告などに設置されたNFCタグにタッチするだけで、クーポンの取得やWebサイトへダイレクトにアクセスできるサービスを4月から提供開始する予定だ。なお、同社では、街中に設置されたNFCタグに、NFCスマートフォンをかざすことで新たな体験を得ることができるO2O実証実験「Shibuya Clickable Project」を実施するという。
ナクシスは、NFCタグを内蔵した衣料タグやスマートポスターに、NFC対応スマートフォンをかざすだけで、コーディネート提案の映像配信や、商品が購入できるECサイトへのアクセス、割引クーポンなどを取得できるサービスを実施するという。同社では渋谷にNFCタグの体験型ショールームもオープンした。
ブリリアントサービスは、水族館の水槽に魚の情報を載せたNFCタグを設置し、NFC対応スマートフォンでタッチすることでIkesuアプリに水槽の魚を取り込み、取得した魚をアプリ内の水槽で泳がせることや、魚に関する詳しい情報を得ることができるサービスを2月7日から提供している。同社ではすでに池袋のサンシャイン水族館でサービスを行っている。
ベネフィット・ワンは、福利厚生代行サービス「ベネフィット・ステーション」にて、提携店舗でNFCタグを内蔵したPOPを設置し、NFC対応スマートフォンをタッチすると即時に対象店舗のサービス利用画面を表示させるサービスを行う。まずは、4月からトライアルを実施予定だ。
ワイエスシーインターナショナルでは、日韓合同プロジェクトとして、新大久保コリアンタウン一帯にNFCタグを設置し、NFC対応スマートフォン利用者向けに新大久保のタウン情報や韓流ニュースの配信、割引クーポンの提供による実店舗への誘導等をはかる、日本と韓国の両国の顧客向けのサービスを7月までに開始予定だ。新大久保の店舗約100店舗が参加する予定となっている。
KDDIでは、1月から、「au Exclusive Live」利用者を招待するライブイベントにおいて、会場に設置したNFC対応ポスターにNFC対応スマートフォンをタッチするだけでアーティストの特典映像等を配信するサービスを提供している。
ソニーでは、3月上旬から、同社が提供するNFC対応オーディオ機器等に、NFC対応スマートフォンをタッチするだけで、Bluetooth接続の接続先を簡単に切り替えることができるワンタッチリスニング機能や、タッチするだけで、スマートフォンに保存された写真やビデオをバックアップできるワンタッチバックアップ機能を提供する予定だ。
パナソニックでは、2012年6月から、「スマート家電」とNFC対応スマートフォンを連携して、スチームオーブンレンジに情報を送信するだけで調理設定ができたり、体組成バランス計にタッチするだけで簡単に測定データの管理が可能なサービスを提供している。
NFCタグとしては、SMARTRAC TECHNOLOGY PTE.LTDがNFC対応スマートフォンをかざすだけで、ホームページのURL等の情報を読み書きすることができるNFCタグの提供を4月から行うという。
認証分野では、東北インフォメーション・システムズがNFC対応スマートフォンのUIMカード内に電子証明書を発行、NFC対応スマートフォンをタッチするだけで、簡単に個人認証が行える「NFC対応 電子証明書配信プラットフォーム」(仮称) を2013年度中に提供予定となっている。同サービスは、「PKIをサポートしているのが弊社の仕様だけになる」(KDDI 商品企画本部 マルチアクセス&サービス企画部 NFCサービス開発グループリーダー 阪東謙一氏)ため、KDDIのみのサービスとしてリリースされる予定だ。ただ、モバイル非接触ICサービス普及協議会が定める「NFCサービスプラットフォーム」の仕様に準拠しているため、将来的には他キャリアでの展開も可能であるという。
交通系では、前述のとおり、JAL国内線搭乗時に空港でauのNFC対応スマートフォンをタッチするだけで搭乗できるサービス「JALタッチ&ゴー」を2012年10月から提供している。
海外連携としては、提供開始時期は未定だが、日本と韓国の顧客が店舗で利用できるクーポンサービスの企業向けプラットフォームサービスを構築し、日韓両国で利用可能なクーポンサービスを検討している。