2013年7月17日8:10
グランベリーモールへ顧客を送客し、施設内でエリアに合った情報を配信
プル型とプッシュ型を組み合わせたO2Oサービスをグランベリーモールで展開
KDDI、大日本印刷(DNP)、三井物産、東急モールズデベロップメント(東急MD)、イッツ・コミュニケーションズの5社は、東急MDが運営するオープンモール型ショッピングセンター「グランベリーモール」(東京・南町田)において、2013年5月13日からO2O(Online to Offline)サービスの実証実験を行っている。
2つのアプリで利用の導線を築く
「くーぴん」では4つのエリアから情報を配信
グランベリーモールは、 87,000mという広大な敷地を生かしたオープン型のショッピングモールで、ファミリー層をターゲットとしている。
今回は、KDDI、DNP、三井物産の3社でシステムを構築。DNPでは、Wi-Fiを活用し、エリアに入ると新たなクーポンが手にできるアプリ「くーぴん」を提供。KDDIは、グランベリーモール内のショップスタッフ一押し商品の画像をリアルタイムにスマートフォンに届ける商品情報アプリ「すなっぴん」を提供している。
「2つのアプリを提供することにより、商品等の情報からクーポンの取得、エリアに入るとWi-Fi経由でクーポンを獲得できる導線を用意しています。実証実験で重視したのは、クーポンやメール配信により、外部から利用者を送客するだけではなく、『くーぴん』により、施設に訪れたお客様がどのような購買を行い、内部でどのように動いているのかを把握することです。また、『すなっぴん』でもどのような情報を閲覧しているのかを計測できるため、施設の内部と外部の取り組みを一気通貫で行えるところが特徴です」(KDDI サービス企画本部 ライフデザインサービス企画部 ライフイノベーショングループ マネージャー 清水徹氏)
グランベリーモールは、「FRESHBERRY MARKET」「HOMEFILE MARKET」「OASIS SQUARE」「OUTLET SHOPS」の4つのエリアに分かれている。そのため、「くーぴん」では、各エリアに合った情報を配信。利用者は、今いるエリアですぐに使えるクーポンを受け取ることが可能だ。また、店舗の協力を得て、特定の時間にあった情報の配信もテストしている。
Wi-Fiにより施設内の情報を可視化
「すなっぴん」で店舗が自ら伝えたい情報を配信
今回、三井物産の関連会社である三井情報がWi-Fi設備を提供。これにより、ユーザーが施設内でどのような動きをしているかを可視化している。
「想定よりもはるかにデータとしての傾向値を把握できています。今回は、施設内のWi-Fiの信号を拾う形で検知していますが、予想以上に機能をオンにされている方が多く、また、ユーザーの移動並びに滞留についても十分な傾向が見えてきています。グランベリーモール様にも次のマーケティング施策の原案として提案する予定です」(三井物産 次世代・機能推進本部 ITイノベーション第二部 事業開発第三室 ビジネスデベロップメントマネージャー 合田祐三氏)
例えば、商業施設の多くは、ユーザーの導線を想定して設計されているが、実際には予想外の傾向が表れるケースも多い。合田氏は、「売上だけでは見えない人の動きを可視化することで、モール側の意図と現実とのギャップを埋めることが可能になります」と説明する。三井物産としては、生活産業に関わるビジネスに活用することも念頭に置いている。
一方、「すなっぴん」の特長としては、店舗が顧客に配信したい商品を自らの工夫で投稿できることだ。旬の商品や、スタッフが着こなしたファッションの紹介、複数店舗が共同でプロモーションを行うなど、工夫を凝らしながら情報を配信している店舗が多い。特にファッションの場合、商品が入荷するごとに、積極的に情報を配信している店舗もあるという。
「ファッションや飲食といった施設の情報を配信することで、楽しみながら施設を回遊していただくことにつながっています。グランベリーモールは家族連れの方も多く、長時間の滞在に結び付けることが可能です」(清水氏)
「くーぴん」と「すなっぴん」の情報は、スマートフォンの端末情報をベースに把握できる。これにより、両アプリの情報の収集、蓄積、分析が可能となっている。
6月10日の段階で、アプリのダウンロードは計6,500~7,000程度。両アプリの登録の際は、年齢、年代、郵便番号を任意で登録してもらっているが、利用者の傾向として、施設近隣の居住者が多いという。また、「リピーターの利用が多いのが特徴」(KDDI 清水氏)となっている。性別としては、女性が45%、男性が35~40%、未回答15%。また、年代は、30代、40代が中心だ。
NFC対応のスマートポスターでアプリへ誘導
将来的には決済やPOSとの連携も視野に
アプリへの誘導はメール配信やSNSに加え、モール内のポスターや店舗のPOPに設置したNFC対応スマートポスターを利用して実施。利用者はポスターに添付したNFCタグ「FeliCa Lite」やQRコードにスマートフォンをかざすと、アプリのダウンロードサイトまでスムーズに誘導される。
「NFC対応スマートポスターは、スマートフォンが普及した際の有効技術として検証しました。30代以上の方は、QRコードを利用してアプリをダウンロードされる方が多かったです」(大日本印刷 C&I事業部 CB事業開発本部 CB事業開発室 山川晋太郎氏)
また、6月10日の段階では1,500回以上のクーポン利用があるそうだ。小額決済が中心の店舗だけではなく、ある程度高額な取引が行われる店舗でも利用されているという。
利用者は、クーポンを店舗で利用する際、スマートフォン画面上で利用のチェックを行うため、店舗スタッフのクーポンの消込作業は不要だ。今回は、店舗での決済やPOSとの連携は実施しなかったが、「今後は、クーポンを取得して購入まで結びつられる仕組みを構築していきたいです」とDNP 山川氏は構想を口にする。DNPでは、チラシなど買い物情報の配信、ポイントカードやプリペイドカード等の展開、決済支援システムの提供などと組み合わせたサービスを検討している。
実験は6月27日で終了する予定だったが、継続を予定しているそうだ。KDDI 清水氏は、「グランベリーモールからも今回の取り組みには一定の評価を得ていますので、実験の結果をベースに今後の取り組みを検討していきたいです」と語ってくれた。