2013年8月6日8:41
エキナカ自販機のロイヤルカスタマー戦略「acureメンバーズ」とは?
Suica等の交通系電子マネーをコミュニケーションツールとして活用
JR東日本ウォータービジネスは、5,000台以上のエキナカ自販機“acure(アキュア)”で「Suica」等の交通系電子マネーをかざすと「acureポイント」が貯まる専用の会員制度「acureメンバーズ」を発足した。同社では、acureメンバーズにより、繰り返しacureを利用するヘビーユーザーを育成し、継続的な利用につなげる方針だ。
7%の利用者で売り上げの50%を占める
利用頻度の低い会員のリピート購買を促進へ
「acureの自販機POSデータを分析する中で、エキナカというと一見客の衝動買いのお客様が多いという予想がありましたが、全体の上位7%が月に2回以上ご購入される『ヘビーユーザー』であることがわかりました。また、売り上げに占める割合も50%以上となっています。さらに、月1回未満の『ライトユーザー』が85%を占めますが、その方々に常連になっていただければ、より売り上げが高まると考え、顧客ニーズ把握による満足度向上に向けacureメンバーズを開始しました」(JR東日本ウォータービジネス 営業本部 広告宣伝部 部長 古木篤史氏)
JR東日本ウォータービジネスでは、POSデータを取得可能な交通系電子マネー決済端末「VT-10」とネットワークを開発し、2009年からデータの取得・蓄積を開始した。現状、VT-10は、JR東日本の駅構内に5,000台以上設置されている。
エキナカ自販機におけるSuicaをはじめとした交通系電子マネー利用率は50%を昨年12月に初めて突破。同社では、エキナカで数多く使われている親和性の高さから、交通系電子マネーを顧客とのコミュニケーションツールとして活用したいと考えた。さらにVT-10では、Suica等の利用データから、購入商品、購入時間帯、Suicaポイントクラブ会員による利用者の性別、年代などが把握可能であり、会員制度の導入により、質の高いマーケティングを展開可能だ。
すでにPOSデータを活用した商品開発にも着手。例えば、「商品カテゴリー」と「時間帯売上」のクロス分析から、夕方から夜の購買ニーズに注目し、2011年秋冬から、30~40代男性の購入割合が多い甘味の高い「おやつ飲料」の品揃えを強化している。また、300ml以下の商品は、主に午後、女性(特に中高年)が購入するという傾向から、2012年春夏以降、ミニボトル商品を持ち歩き飲料として提案している。
会員はWebサイトから交通系電子マネーのID番号を登録
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」とのコラボ企画を展開
acureメンバーズへの入会希望者は、Webサイトから会員登録が必要となる。登録の際に、「交通系電子マネーのID番号」および「電子メールアドレス」を会員情報として、同意の上提供してもらう。会員サービスとしては、従来から展開してきた「自販機キャンペーン」を会員サービスの一環と位置づけて展開。交通系電子マネー利用による購入を条件とすることで、キャンペーンへの参加障壁を低減している。また、期間中に交通系電子マネーを利用して対象商品を購入した人へ「acureポイント」を付与。利用者は、蓄積したポイントを利用して賞品抽選に参加可能だ。
同社では、メーカーや企業のプロモーションと連携した取り組みにも力を入れる。第一弾として、7月1日から9月30日まで、パラマウント ピクチャーズ ジャパンの映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」とコラボレーションした企画を展開。同キャンペーンでは、会員専用サイトから会員登録を行い、10 ポイント貯まった人を対象に「スター・トレック イントゥ・ダークネス」プレミアムグッズを抽選でプレゼントするとともに、登録者全員を対象にプレミアデジタルグッズをプレゼントするという。また、動画再生が可能な次世代自販機を利用して、キャンペーンを告知している。
次世代自販機を活用したonline to offlineサービスにも着手
会員目標は2013年度で10万人
「弊社の自販機の強みはリアルとバーチャルの融合です。すでに500台の通信機能を備えた次世代自販機を設置していますが、例えばSuicaをタッチすると会員限定の特別メニューを提供するなどを考えています」(古木氏)
例えば、会員が次世代自販機にタッチした場合、過去のデータからおすすめの商品を案内したり、その会員が設定した好きな画面に切り替わるなどを想定している。また、会員対象のアンケートやグループインタビューの実施により、会員の声を反映したオリジナル商品なども展開する予定だ。
まずは、acureメンバーズ会員に向けたサービス展開となるが、2015年度をめどに他の業種・業態にポイント制度を広げていく方針だ。また、将来的には他の会員制度との連携も視野に入れる。
会員目標は2013年度で10万人。開始から1カ月経過した段階で登録者数は1万5,000人を突破。会員数は順調に推移しているそうだ。同社では、多くの人にacureメンバーズに登録してもらうことにより、リアルなコミュニケーションにより独自価値を提供し、瞬間ではなく継続した顧客サービスにつなげていきたいとしている。