2014年1月31日10:40
セキュリティ性の高いICカード用のチップを世界各国に提供
ドイツ・ミュンヘンに本社を構えるインフィニオンテクノロジーズは、ICカードやNFC向けのセキュリティチップを提供する世界有数の企業だ。同社では、高セキュリティで、可用性を兼ね備えたチップの開発に取り組んでいる。
「SLE78」は1秒以下で処理が可能に
従来品に比べメモリ容量が3倍に
電子パスポート(eパスポート)向けのセキュリティ コントローラ「SLE78」は、2013年11月に行われた「CARTES 2013」において11作品が選ばれた「Sesames 2013」賞(IDENTIFICATION/IDカード/HEALTH)を受賞した。
インフィニオンテクノロジーズ AG ガバメント・アイデンティフィケーション プロダクトマーケティング ディレクター Dr.Heiner Fuhrmann氏は、「もっとも処理スピードが速いeパスポート」と自信を見せるように、非接触スキャナーを使った読み取りが、通常2~3秒必要なところ、平均1秒以下で処理が可能だ。
例えば、「SLE78」はマレーシアのIDカードでも使用されている。また、健康保険証、免許証、政府などでの利用も見込めるそうだ。「SLE78」には、「Security Integrity Guard(セキュリティ・インテグリティ・ガード)」技術を搭載。従来品に比べ3倍のメモリ容量と8倍の高速データ通信速度を実現している。
「インテグリティ・ガードにより、トランスミッションのスピードが速く、コンタクトレスの取引の処理にかかる時間が非常に早いのが特徴となります。例えば、パスポートにはいろいろなデータが入力されますので、瞬間的に素早くデータを転送できます」(Dr.Heiner Fuhrmann氏)
なお、「SLE78」はISO/IEC 14443 TypeA/Bのいずれから選択可能だ。
「CIPURSE」を採用したプロジェクトがブラジルでローンチ
認証、統合化、機密保持、可用性がテーマ
また、同社では、ギーゼッケ アンド デブリエント (G&D)、仏オベルチュール テクノロジーズ(Oberthur Technologies)、仏インサイド・セキュア(INSIDE Secure)とともに「OSPTアライアンス」を立ち上げ、公共交通アプリケーション向けオープン規格「CIPURSE(サイパース)」を策定。現在は、チップベンダー、自動車、携帯電話会社等、さまざまな企業が集まり、活動している。「CIPURSE」は、ICカード、NFCスマートフォン、セキュア・アクセス・モジュール(SAM)など、さまざまな機器に実装可能な共通仕様を規定している。オープン規格ではあるが、非常にセキュリティが高く拡張性もある。暗号方式については、「AES128」を使った認証方式を採用。また、TypeAの「MIFARE」と「CIPURSE」のコードを合わせることができるという。
同社では、2011年11月に「CIPURSE」に対応した世界初のセキュリティ・チップ・ソリューションを開発。「CIPURSE」を利用したシステムは、すでに「CIPURSE」に対応したICカードは、ブラジルのタクシーチケットを購入する際の支払いで利用されているという。また、複数の輸送で採用が進んでいるそうだ。「CIPURSE」は高いセキュリティに加え、システムの柔軟性があり、複数のアプリケーションをまとめることができるため、輸送分野を中心に導入を進めていく方針だ。
なお、NFCについては、SIMカードやEmbedded Secure Element(エンベデット・セキュア・エレメント)、安価なNFCタグなど、幅広く展開している。主に携帯電話の製造会社にアプローチを実施。すでにセキュア・エレメントではブラックベリー等で採用されているそうだ。
今後の取り組みとして、インフィニオンテクノロジーズ AG セキュア・モバイル&トランザクション ヴァイス・プレジデント&ゼネラルマネジャーのThomas Rosteck氏は、「認証、統合化、機密保持、可用性をテーマにビジネスを行っていきたい」と力強く語った。
※取材は「CARTES 2013」会場にて