2015年6月9日7:00
世界最大のチップベンダー、NXPセミコンダクターズのNFC、ICカードの取り組みは?
「Secure Connections for a Smarter World」の実現を目指す
世界最大のチップベンダーであるNXPセミコンダクターズは、ローエンドのチップから決済などに利用できる高セキュリティ・高機能な製品まで、ICタグやICカード、NFC製品を数多く取り揃えている。同社のビジネスについて、ビジネス・ユニット Security & Connectivity ビジネス・セグメント・マネージャー アレキサンダー・レンシンク(Alexander Rensink)氏に話を聞いた。なお、同氏は、NFCフォーラムのヴァイス・チェアマンも務めている。
NFCチップのモバイルへの搭載は加速
家電製品などへの「NTAG」の搭載も進む
――まずは、NFCチップのNFC機器への搭載は世界的に広がっていますでしょうか?
アレキサンダー・レンシンク:NFCチップについては、NFCチップとセキュアエレメントの2つに分かれますが、弊社では両製品の開発・改良を常に重ねています。NFCチップについては、2010年からAndorid端末への搭載が始まりましたが、モバイル市場でビジネスは拡大しています。また、スマートフォン以外への搭載も行われており、ビジネスは好調です。ボリュームについては公表できませんが、NFCチップの領域においてリーディングカンパニーであることは確かです。
――NFCでは、スマートポスターとしての利用の広がりが期待されていますが、当初の期待ほど進んでいないという指摘もあります。
アレキサンダー・レンシンク:弊社では、安全に、より便利に、セキュアな状況で人々をつなげることが会社のキャッチフレーズとなっています。我々は、よりスマートな世界を実現するセキュア・コネクションのことを「Secure Connections for a Smarter World」と呼んでいます。NXPがSmarter Worldに名付けているものの1つに、昔はインターネットのインフラストラクチャに機能を埋め込んでいましたが、地球にいる70億人の消費者の手元に届いたものに機能を搭載してつなげることができます。それは非常に革新的なことだと思います。また、消費者のアウェアネス(気づき)は大切ですが、たとえば、商品を購入した際にNFC機能があることにより、メーカー側と直接、コンタクトを取ることが可能です。また、ブランド物のハンドバックやアルコール類の商品が本物かどうかを見分けることも可能となります。家電、コンシューマ・エレクトロニクス、ウェアラブル機器には、「NTAG」が埋め込まれており、出荷個数は伸びています。
MIFAREは2014年で77%のシェアを誇る
「MIFARE DESFIRE」「MIFARE plus」「MIFARE Ultralight」などを展開
――ISO/IEC14443 TypeAのMIFAREについては、現在も世界の70%のシェアを占めていますか?
アレキサンダー・レンシンク:ABIリサーチによると、2014年で77%のシェアとなっています。また、NFCは、MIFAREに加えて、日本等で利用されているソニーのFeliCa等を統合したものとなります。日本市場では、コンタクトレスは技術的にも進歩していますね。
MIFAREのラインアップとしては、「MIFARE DESFIRE」、「MIFARE plus」「MIFARE Ultralight」などがあります。たとえば、「MIFARE DESFIRE」は洗練された製品で、アプリケーションのプラットフォームに利用されています。革新的な技術を使って新しい機能を搭載しています。「MIFARE DESFIRE」は、政府で活用されたり、大学の卒業証書に埋め込まれて利用されています。
「MIFARE plus」は、安全性の高い仕様にアップデートできるように考慮されています。「MIFARE Ultralight」は、スマートポスター、鉄道、バスの乗車などで利用されています。使い捨ての用途など、世界のあらゆる国と地域で利用されているのが特徴です。
――「MIFARE Plus」について、詳しくご説明いただければ幸いです。
アレキサンダー・レンシンク:「MIFARE Plus」は、公共交通やID管理などに利用されています。また、すでに出荷されている「MIFARE Classic」をより安全性が高い仕様にアップグレードするために「MIFARE Plus」が使用されています。さらに、「MIFARE plus SE」という商品にも使用されています。「MIFARE Plus」は、モバイルフォン、SIMカード、ウェアブル、時計、キーフォブなど、あらゆるものにも利用可能です。
3月にフリースケール買収を発表し100億米ドルの規模に
1枚のカードで便利に、簡単に生活できる世界を構築へ
――今後の目標についてお聞かせください。
アレキサンダー・レンシンク:目標については2つあり、企業としては、Freescale Semiconductor(フリースケール)を2015年3月に買収することで合意しました。フリースケールの買収により、売り上げ規模は100億米ドルとなりますので、その資本を基に、交通機関へのサービス提供など、世界全体を便利にしていきたいです。
MIFAREでは、新しいアプリケーションを提供していきたいと考えています。交通、図書館、旅行など、さまざまなサービス事業者が1枚のカードで、より便利に、簡単に、セキュアな状態で、さまざまなアプリケーションを組み込んだものを作っていきたいですね。たとえば、交通機関のカードが図書館でも便利に使える、会社の経営者がカードを渡してそのカードで昼食を購入できるなど、1枚のカードでさまざまな機能が便利に利用できる世界を作りたいと考えています。